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最終章

怒り

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フッと目が覚める。

上半身を布団の上に起こすと、さっきまでの異様なダルさが軽減されて身体が大分楽になっていた。

「お粥と薬のお陰かな……」

ソファーに目をやると、パソコンを抱えたまま楓が寝ていた。

「久々に食べたお粥、美味しかったな……」

卵が入ったお粥が好きな事を、楓は覚えていてくれた。

『料理なんて久し振りにやったから、味の保証はしないよ』

と言いながら作ってくれたお粥は、少し味が薄かったけど凄く美味しかった。

『愛情が籠っていれば、何でも美味しいモノよ』

と照れていた楓を思い出して、フフッと笑った。

「……ぅ……」

私の声に反応したのか、楓が寝返りを打つ。

その拍子に、掛けていたタオルケットが床にパサッと落ちた。

「あ……」

立ち上がり、そのタオルケットを拾って起こさない様にそーっと楓に掛け直してやる。

「ありがとうね……」


――ピリッピリッピリッ!


スヤスヤと眠っている楓の寝顔を見ていたら、突然私の携帯が鳴った。

予想していなかったから、ビクッ!と盛大に身体が震える。

「わわっ!楓が起きちゃう!」

パッ!と携帯を手に取ると、『新着メール1件』と表示されていた。

「メールか……誰?」

差出人を確認した瞬間、今度は身体が硬直する。

「三毛さん……」

三毛さんからのメールだった。

件名の所に、『申し訳ありません』の文字。どう考えたって、昨日の事に対しての謝罪だろう。

数分間、その文字をじーっと見つめる。

本文に何が書いてあるのか気になるけど、開く勇気がない。しかし、このままではらちかない。

意を決し、えいっ!と本文を開いて文章を読んだ。

「……なに、それ……」

そこには、

―『昨夜の事は、忘れて下さい』―

と言う一文だけ書かれていた。

ギュッと携帯を握り締める。

「そんなの、無理に決まってるじゃない……!」

怒りなのか悲しみなのか分からないけど、携帯を持つ手が震えた。

「……ふざけんじゃないわよ!」

いや。怒りが大分勝っている様に思えた。

時計を見ると、15時25分。milk teaは丁度休憩の時間だ。

私は立ち上がり、昨日楓が乾かしてくれた服に着替える。

『大分調子が良くなったので、少し出て来ます。―実森―』

そう書き置きを残して、私はmilk teaへと向かった。
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