7 / 77
第一章
あれから半年①
しおりを挟む
「こんにちは~!!」
ログハウスにとてもマッチしているステンドグラスがはめ込まれたドアを、元気よく挨拶をしながら開ける。
カラン――と言う鈴の音と、
「実森さん、いらっしゃい」
と言う三毛さんの渋くて低い声が出迎えてくれた。
「こんにちは、三毛さん。今日もステキなお声ですね」
そう言うと、三毛さんは照れながら「いやいや…」と手を振った。
私は、照れた顔もかわいいとニヤニヤしながら、初めてここを訪れた時に座ったカウンター席に腰を下ろす。
「アールも、こんにちは」
カウンターの、一番端の陽当たりが良い窓際。
そこにある猫用ふかふかクッションの上で丸くなって寝ている黒い子猫に声をかけた。
私の声にアールは片目を開け、私の姿を確認すると面倒臭そうに尻尾をパタン…パタン…と動かした。
「つれないなぁ……」
あの時最初に助けたのは私なのに。
溜め息を吐くと、三毛さんがクスッと笑いながらおしぼりを手渡してくれる。
「今日は何になさいますか?」
「……いつもので」
私は少しブーたれながらおしぼりを受け取った。
「かしこまりました」
三毛さんは私が何を注文するのか最初から分かっていたのか、なんの躊躇いもなく茶葉やお気に入りのカップを用意してくれる。
初めて三毛さんに出逢ったあの雨の日から半年、私は暇さえあればお店に通い詰めていた。
私も紅茶が好きで、中でもミルクティーが一番好きだからなんだか運命的な物も感じてしまい(三毛さんに出逢えた事も含め)、半年通い詰める、と言う暴挙に打って出た。その甲斐あってか、三毛さんは私の好みを把握してくれている。常連になった様で嬉しい。
(まあ私の場合、最初のインパクトが強烈だったのかもしれないけど)
変わりのない、無駄のない動きをしながら紅茶を淹れてくれている三毛さんをボーっと眺めた。
『三毛伸一郎さん、40歳』
ここ、『喫茶 milk tea』の、オーナー兼マスター兼シェフを務めている。
初めて三毛さんの名前を聞いた時、ちょっと驚いた。
猫みたいですね、と笑ったら、『この名前、気に入っているんです。猫好きなもので』と言いながら愛おしそうにアールを撫でてたっけ。
ちなみにアールの『アール』は、アールグレイの『アール』。
三毛さんの一番好きな紅茶のフレーバーがアールグレイなんだって。
ここは紅茶専門のカフェだし、似合ってるねって言ったらアールも嬉しそうに鳴いたのを覚えてる。
ログハウスにとてもマッチしているステンドグラスがはめ込まれたドアを、元気よく挨拶をしながら開ける。
カラン――と言う鈴の音と、
「実森さん、いらっしゃい」
と言う三毛さんの渋くて低い声が出迎えてくれた。
「こんにちは、三毛さん。今日もステキなお声ですね」
そう言うと、三毛さんは照れながら「いやいや…」と手を振った。
私は、照れた顔もかわいいとニヤニヤしながら、初めてここを訪れた時に座ったカウンター席に腰を下ろす。
「アールも、こんにちは」
カウンターの、一番端の陽当たりが良い窓際。
そこにある猫用ふかふかクッションの上で丸くなって寝ている黒い子猫に声をかけた。
私の声にアールは片目を開け、私の姿を確認すると面倒臭そうに尻尾をパタン…パタン…と動かした。
「つれないなぁ……」
あの時最初に助けたのは私なのに。
溜め息を吐くと、三毛さんがクスッと笑いながらおしぼりを手渡してくれる。
「今日は何になさいますか?」
「……いつもので」
私は少しブーたれながらおしぼりを受け取った。
「かしこまりました」
三毛さんは私が何を注文するのか最初から分かっていたのか、なんの躊躇いもなく茶葉やお気に入りのカップを用意してくれる。
初めて三毛さんに出逢ったあの雨の日から半年、私は暇さえあればお店に通い詰めていた。
私も紅茶が好きで、中でもミルクティーが一番好きだからなんだか運命的な物も感じてしまい(三毛さんに出逢えた事も含め)、半年通い詰める、と言う暴挙に打って出た。その甲斐あってか、三毛さんは私の好みを把握してくれている。常連になった様で嬉しい。
(まあ私の場合、最初のインパクトが強烈だったのかもしれないけど)
変わりのない、無駄のない動きをしながら紅茶を淹れてくれている三毛さんをボーっと眺めた。
『三毛伸一郎さん、40歳』
ここ、『喫茶 milk tea』の、オーナー兼マスター兼シェフを務めている。
初めて三毛さんの名前を聞いた時、ちょっと驚いた。
猫みたいですね、と笑ったら、『この名前、気に入っているんです。猫好きなもので』と言いながら愛おしそうにアールを撫でてたっけ。
ちなみにアールの『アール』は、アールグレイの『アール』。
三毛さんの一番好きな紅茶のフレーバーがアールグレイなんだって。
ここは紅茶専門のカフェだし、似合ってるねって言ったらアールも嬉しそうに鳴いたのを覚えてる。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
景華
恋愛
顔いっぱいの眼鏡をかけ、地味で自身のない水無瀬海月(みなせみつき)は、部署内でも浮いた存在だった。
そんな中初めてできた彼氏──村上優悟(むらかみゆうご)に、海月は束の間の幸せを感じるも、それは罰ゲームで告白したという残酷なもの。
真実を知り絶望する海月を叱咤激励し支えたのは、部署の鬼主任、和泉雪兎(いずみゆきと)だった。
彼に支えられながら、海月は自分の人生を大切に、自分を変えていこうと決意する。
自己肯定感が低いけれど芯の強い海月と、わかりづらい溺愛で彼女をずっと支えてきた雪兎。
じれながらも二人の恋が動き出す──。
今更だけど、もう離さない〜再会した元カレは大会社のCEO〜
瀬崎由美
恋愛
1才半の息子のいる瑞希は携帯電話のキャリアショップに勤めるシングルマザー。
いつものように保育園に迎えに行くと、2年前に音信不通となっていた元彼が。
帰国したばかりの彼は亡き祖父の後継者となって、大会社のCEOに就任していた。
ずっと連絡出来なかったことを謝罪され、これからは守らせて下さいと求婚され戸惑う瑞希。
★第17回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました。
【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~
蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。
なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?!
アイドル顔負けのルックス
庶務課 蜂谷あすか(24)
×
社内人気NO.1のイケメンエリート
企画部エース 天野翔(31)
「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」
女子社員から妬まれるのは面倒。
イケメンには関わりたくないのに。
「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」
イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって
人を思いやれる優しい人。
そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。
「私、…役に立ちました?」
それなら…もっと……。
「褒めて下さい」
もっともっと、彼に認められたい。
「もっと、褒めて下さ…っん!」
首の後ろを掬いあげられるように掴まれて
重ねた唇は煙草の匂いがした。
「なぁ。褒めて欲しい?」
それは甘いキスの誘惑…。
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
同居離婚はじめました
仲村來夢
恋愛
大好きだった夫の優斗と離婚した。それなのに、世間体を保つためにあたし達はまだ一緒にいる。このことは、親にさえ内緒。
なりゆきで一夜を過ごした職場の後輩の佐伯悠登に「離婚して俺と再婚してくれ」と猛アタックされて…!?
二人の「ゆうと」に悩まされ、更に職場のイケメン上司にも迫られてしまった未央の恋の行方は…
性描写はありますが、R指定を付けるほど多くはありません。性描写があるところは※を付けています。
隠れ御曹司の愛に絡めとられて
海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた――
彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。
古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。
仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!?
チャラい男はお断り!
けれども彼の作る料理はどれも絶品で……
超大手商社 秘書課勤務
野村 亜矢(のむら あや)
29歳
特技:迷子
×
飲食店勤務(ホスト?)
名も知らぬ男
24歳
特技:家事?
「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて
もう逃げられない――
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる