88 / 99
その後のお話―お誕生日会―①
しおりを挟む
「雪ちゃん、退院&お誕生日、おめでとー!カンパーイ!!」
「カンパーイ!」
「……………」
私とハナちゃんは、ワインの入ったグラスを、チンチンッ♪とぶつけた。
今日は、色々あって出来なかった雪ちゃんの誕生日と、退院のお祝いを兼ねたパーティー。
あの騒動のあと私はその日に帰れたんだけど、雪ちゃんは結構傷が深くて2週間もの入院生活を送る事となった。
あの時、平気な顔して私が目覚めた時に隣に居たのは、先生に無理言ってお願いしたらしい。
『江奈が目覚めた時にアタシがそばにいないとあの子死んじゃうわ!』
って。
まあ、雪ちゃんが言ってる事はあながち間違いでもなかったりするんだけど。
――で、その間に雪ちゃんの誕生日は過ぎちゃったワケで……。
でもせっかく計画した事だからって、晴れて退院の今日、お祝いをする事になった。
「……ん~!美味しーっ♡ね、雪ちゃん、ハナちゃんが持って来てくれたこのワイン、すっごく美味しいよ!」
そう言って、まだ口を付けていない雪ちゃんに飲んでみる様、促す。
「そうでしょ~?このワイン、雪ちゃんのおめでたい日だからって、ワザワザ取り寄せたんだから~♡」
ハナちゃんが、うふふ♡と微笑む。
「さっすがハナちゃん!気が利くね!」
「……………」
ハナちゃんと二人で盛り上げっていると、雪ちゃんが無言でタンッ!とグラスをテーブルに置いた。
で、スタスタスタ……と、ソファーの方へ歩いて行く。
そのままソファーに腰を下ろし、テレビを見始めてしまった。
ブスっとした顔で、こちらに目もくれない。
……なんだろう、この空気。
せっかくのお祝いの日なのに、なんだか重たい空気がさっきから流れている。
その原因が今日の主役にあるって事は、私もハナちゃんも気付いていた。
何にも言わないで仏頂面でテレビを見続けている雪ちゃん。
何がそんなに気に食わないんだろう?
「雪ちゃ……」
言い掛けると、後ろから肩にポンッと手を置かれ振り向くと、ハナちゃんは首を横に振って『やれやれ』みたいな顔をしていた。
「ハナちゃん?」
「江奈っち、アタシ帰るわ」
「え!?」
「雪ちゃん、お邪魔しました」
そう言ってハナちゃんはバッグを持って、さっさとリビングを出て行ってしまった。
「え?え?ちょ、ハナちゃん!?」
私は雪ちゃんと閉まり掛けるリビングのドアとを交互に見る。
雪ちゃんは、ツーンとした態度でハナちゃんを見送りもしない。
「……もうっ!」
私はハナちゃんを追い掛けた。
「カンパーイ!」
「……………」
私とハナちゃんは、ワインの入ったグラスを、チンチンッ♪とぶつけた。
今日は、色々あって出来なかった雪ちゃんの誕生日と、退院のお祝いを兼ねたパーティー。
あの騒動のあと私はその日に帰れたんだけど、雪ちゃんは結構傷が深くて2週間もの入院生活を送る事となった。
あの時、平気な顔して私が目覚めた時に隣に居たのは、先生に無理言ってお願いしたらしい。
『江奈が目覚めた時にアタシがそばにいないとあの子死んじゃうわ!』
って。
まあ、雪ちゃんが言ってる事はあながち間違いでもなかったりするんだけど。
――で、その間に雪ちゃんの誕生日は過ぎちゃったワケで……。
でもせっかく計画した事だからって、晴れて退院の今日、お祝いをする事になった。
「……ん~!美味しーっ♡ね、雪ちゃん、ハナちゃんが持って来てくれたこのワイン、すっごく美味しいよ!」
そう言って、まだ口を付けていない雪ちゃんに飲んでみる様、促す。
「そうでしょ~?このワイン、雪ちゃんのおめでたい日だからって、ワザワザ取り寄せたんだから~♡」
ハナちゃんが、うふふ♡と微笑む。
「さっすがハナちゃん!気が利くね!」
「……………」
ハナちゃんと二人で盛り上げっていると、雪ちゃんが無言でタンッ!とグラスをテーブルに置いた。
で、スタスタスタ……と、ソファーの方へ歩いて行く。
そのままソファーに腰を下ろし、テレビを見始めてしまった。
ブスっとした顔で、こちらに目もくれない。
……なんだろう、この空気。
せっかくのお祝いの日なのに、なんだか重たい空気がさっきから流れている。
その原因が今日の主役にあるって事は、私もハナちゃんも気付いていた。
何にも言わないで仏頂面でテレビを見続けている雪ちゃん。
何がそんなに気に食わないんだろう?
「雪ちゃ……」
言い掛けると、後ろから肩にポンッと手を置かれ振り向くと、ハナちゃんは首を横に振って『やれやれ』みたいな顔をしていた。
「ハナちゃん?」
「江奈っち、アタシ帰るわ」
「え!?」
「雪ちゃん、お邪魔しました」
そう言ってハナちゃんはバッグを持って、さっさとリビングを出て行ってしまった。
「え?え?ちょ、ハナちゃん!?」
私は雪ちゃんと閉まり掛けるリビングのドアとを交互に見る。
雪ちゃんは、ツーンとした態度でハナちゃんを見送りもしない。
「……もうっ!」
私はハナちゃんを追い掛けた。
10
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
純真~こじらせ初恋の攻略法~
伊吹美香
恋愛
あの頃の私は、この恋が永遠に続くと信じていた。
未成熟な私の初恋は、愛に変わる前に終わりを告げてしまった。
この心に沁みついているあなたの姿は、時がたてば消えていくものだと思っていたのに。
いつまでも消えてくれないあなたの残像を、私は必死でかき消そうとしている。
それなのに。
どうして今さら再会してしまったのだろう。
どうしてまた、あなたはこんなに私の心に入り込んでくるのだろう。
幼いころに止まったままの純愛が、今また動き出す……。
私の好きなひとは、私の親友と付き合うそうです。失恋ついでにネイルサロンに行ってみたら、生まれ変わったみたいに幸せになりました。
石河 翠
恋愛
長年好きだった片思い相手を、あっさり親友にとられた主人公。
失恋して落ち込んでいた彼女は、偶然の出会いにより、ネイルサロンに足を踏み入れる。
ネイルの力により、前向きになる主人公。さらにイケメン店長とやりとりを重ねるうち、少しずつ自分の気持ちを周囲に伝えていけるようになる。やがて、親友との決別を経て、店長への気持ちを自覚する。
店長との約束を守るためにも、自分の気持ちに正直でありたい。フラれる覚悟で店長に告白をすると、思いがけず甘いキスが返ってきて……。
自分に自信が持てない不器用で真面目なヒロインと、ヒロインに一目惚れしていた、実は執着心の高いヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、エブリスタ及び小説家になろうにも投稿しております。
扉絵はphoto ACさまよりお借りしております。
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
冷たい外科医の心を溶かしたのは
みずほ
恋愛
冷たい外科医と天然万年脳内お花畑ちゃんの、年齢差ラブコメです。
《あらすじ》
都心の二次救急病院で外科医師として働く永崎彰人。夜間当直中、急アルとして診た患者が突然自分の妹だと名乗り、まさかの波乱しかない同居生活がスタート。悠々自適な30代独身ライフに割り込んできた、自称妹に振り回される日々。
アホ女相手に恋愛なんて絶対したくない冷たい外科医vsネジが2、3本吹っ飛んだ自己肯定感の塊、タフなポジティブガール。
ラブよりもコメディ寄りかもしれません。ずっとドタバタしてます。
元々ベリカに掲載していました。
昔書いた作品でツッコミどころ満載のお話ですが、サクッと読めるので何かの片手間にお読み頂ければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる