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変な光の正体④
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「え……」
「あら?違った?」
「……いえ…違わないです……」
どうやら、私の心を見透かしている様だった。
「こんな事になって、一人でいるのは不安だものね」
「……はい」
コクン、と頷く。
いつ部屋に押し入られてもおかしくない様な状況に、正直、恐怖を覚えた。
あのアパートはオートロックじゃないし、今この状況であの部屋に帰るのはどうしたって躊躇してしまう。
「あ、じゃあ合鍵渡しておくわ。なるべく一緒にいるけど、アタシが残業の時とか不便だものね」
テレビが置いてあるダッシュボードの中から鍵を取り出し、「はい」と私に手渡して来た。
「何かキーホルダーでも付けておいて」
「ありがとうございます……」
私はその鍵をジーっと見つめる。
「どうしたの?」
私のその行動を見て、雪ちゃんが首を傾げた。
「あの……」
「ん?」
「お家賃、半分出させて下さい」
雪ちゃんにしたら思いがけない言葉だったのか、キョトンとしている。
「一緒に住まわせて頂く以上、私にもその義務はありますから」
そう言うと、雪ちゃんが丸く見開いていた目を細め、
「……江奈は良い子ね。でも、本当に良いのよ」
と、笑った。
「それじゃダメですよ」
「本当に良いんだってば」
「でもっ……!」
ただ置いて貰う訳にはどうしても行かない。
言葉には出さないけど、そこは引けない、と言うオーラを出している私に、雪ちゃんは少し考えてこう提案してくれた。
「んー……じゃあ、分担にしましょうよ」
「分担?」
今度は私が首を傾げる。
「そ。江奈がこの家に居る間は、家事全般江奈の担当。で、アタシが家賃。これでどう?」
「……それ、私の方が楽じゃありません?」
眉をひそめ、本当にそれで良いのかと、尋ねる。
だって、そんなの毎日やっていた事だし、家事は全く苦にならない。
「あら。楽じゃないと思うわよ?自慢じゃないけどアタシ、掃除にはきびしいんだから」
腰に手を当て、フフンと得意気にしている。
まあ確かに、この広い部屋をこれだけピカピカにしているんだから、そうだと思う。
「今日江奈の部屋に行って、任せられると思ったから言ってるのよ」
「雪ちゃん……」
なんとなくだけど、多分これ以上言っても雪ちゃんは首を縦には振ってくれないだろうな、と思った。それなら、雪ちゃんの提案を素直に受け入れる事にした。
「あの、それじゃあ、それでよろしくお願いします」
ペコっとお辞儀をした私に満足そうにうなずいた雪ちゃんは、
「よしっ!そうと決まれば善は急げ!明日、買い物に行きましょう!冷蔵庫に何もないし、食器も足りないし、調理器具だって!」
と、ポンッと胸の所で手を合わせ、目をキラキラと輝かせ始めた。
「え?あの……」
おまけに鼻息も荒く、なんだか興奮している。
「歯ブラシやバスタオルなんかも足りないわね。ネグリジェも、もう2、3着買って来て……」
「雪ちゃーん」
一人で話を進めて、私の声なんかまったく届いていない。
「あの…もしもーし」
雪ちゃんの目の前で、手をヒラヒラと振る。
「え?ああ、そうよね。早いとこ寝て、明日に備えましょうか」
「は?いや、そーじゃなくて……」
「じゃあ、アタシはもう寝るから、アンタも早く寝なさいね」
私の話は完全スルーで、そう言い残してさっさとリビングから出て行ってしまった。
私は何がどうなったのかよく分からなくて、ポツン…とその場に一人取り残される。
すると、リビングのドアが薄く開き、雪ちゃんが顔を覗かせ、
「朝の10時にはここを出発するから。時間厳守よ。じゃ、オヤスミ」
それだけ告げて、今度は本当に自室へと帰って行った。
雪ちゃんと一緒にいて分かった事。
「超マイペースだよね……」
良い意味か悪い意味かはとりあえず、また今度考える事にする。
「あら?違った?」
「……いえ…違わないです……」
どうやら、私の心を見透かしている様だった。
「こんな事になって、一人でいるのは不安だものね」
「……はい」
コクン、と頷く。
いつ部屋に押し入られてもおかしくない様な状況に、正直、恐怖を覚えた。
あのアパートはオートロックじゃないし、今この状況であの部屋に帰るのはどうしたって躊躇してしまう。
「あ、じゃあ合鍵渡しておくわ。なるべく一緒にいるけど、アタシが残業の時とか不便だものね」
テレビが置いてあるダッシュボードの中から鍵を取り出し、「はい」と私に手渡して来た。
「何かキーホルダーでも付けておいて」
「ありがとうございます……」
私はその鍵をジーっと見つめる。
「どうしたの?」
私のその行動を見て、雪ちゃんが首を傾げた。
「あの……」
「ん?」
「お家賃、半分出させて下さい」
雪ちゃんにしたら思いがけない言葉だったのか、キョトンとしている。
「一緒に住まわせて頂く以上、私にもその義務はありますから」
そう言うと、雪ちゃんが丸く見開いていた目を細め、
「……江奈は良い子ね。でも、本当に良いのよ」
と、笑った。
「それじゃダメですよ」
「本当に良いんだってば」
「でもっ……!」
ただ置いて貰う訳にはどうしても行かない。
言葉には出さないけど、そこは引けない、と言うオーラを出している私に、雪ちゃんは少し考えてこう提案してくれた。
「んー……じゃあ、分担にしましょうよ」
「分担?」
今度は私が首を傾げる。
「そ。江奈がこの家に居る間は、家事全般江奈の担当。で、アタシが家賃。これでどう?」
「……それ、私の方が楽じゃありません?」
眉をひそめ、本当にそれで良いのかと、尋ねる。
だって、そんなの毎日やっていた事だし、家事は全く苦にならない。
「あら。楽じゃないと思うわよ?自慢じゃないけどアタシ、掃除にはきびしいんだから」
腰に手を当て、フフンと得意気にしている。
まあ確かに、この広い部屋をこれだけピカピカにしているんだから、そうだと思う。
「今日江奈の部屋に行って、任せられると思ったから言ってるのよ」
「雪ちゃん……」
なんとなくだけど、多分これ以上言っても雪ちゃんは首を縦には振ってくれないだろうな、と思った。それなら、雪ちゃんの提案を素直に受け入れる事にした。
「あの、それじゃあ、それでよろしくお願いします」
ペコっとお辞儀をした私に満足そうにうなずいた雪ちゃんは、
「よしっ!そうと決まれば善は急げ!明日、買い物に行きましょう!冷蔵庫に何もないし、食器も足りないし、調理器具だって!」
と、ポンッと胸の所で手を合わせ、目をキラキラと輝かせ始めた。
「え?あの……」
おまけに鼻息も荒く、なんだか興奮している。
「歯ブラシやバスタオルなんかも足りないわね。ネグリジェも、もう2、3着買って来て……」
「雪ちゃーん」
一人で話を進めて、私の声なんかまったく届いていない。
「あの…もしもーし」
雪ちゃんの目の前で、手をヒラヒラと振る。
「え?ああ、そうよね。早いとこ寝て、明日に備えましょうか」
「は?いや、そーじゃなくて……」
「じゃあ、アタシはもう寝るから、アンタも早く寝なさいね」
私の話は完全スルーで、そう言い残してさっさとリビングから出て行ってしまった。
私は何がどうなったのかよく分からなくて、ポツン…とその場に一人取り残される。
すると、リビングのドアが薄く開き、雪ちゃんが顔を覗かせ、
「朝の10時にはここを出発するから。時間厳守よ。じゃ、オヤスミ」
それだけ告げて、今度は本当に自室へと帰って行った。
雪ちゃんと一緒にいて分かった事。
「超マイペースだよね……」
良い意味か悪い意味かはとりあえず、また今度考える事にする。
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