上 下
32 / 99

変な光に付きまとわれてます③

しおりを挟む
ボーッと立っているのもヒマなので、ちょっと色々観察してみた。

(あ、あんな所に小窓がある)

なんて、どーでもいい事を発見。

(あの子達、今から合コンか何かか?)

六人の女子社員が、団体でいそいそと会社を出て行った。

(気合い入った格好……)

メイクもバッチリしてあった。

「楽しそう……」

なんとなく、その六人を目で追う。


――すると、


キラッ!と、通りを挟んだ向こう側からまた何かが光って見えた。

私は勢いよく光の方を見る。

キラッとしたのはやっぱり一瞬で、今はもう光っていない。

ダッシュで外に出る。

私は何も考えずにほとんど脊髄反射的に光った方へ走ろうと、グッ!と足に力を入れた。瞬間、

「江奈っ!!」

名前を呼ばれて、ピタッ!と止まる。

振り返ると、黒のセダンから険しい顔を覗かせた雪ちゃんがいた。

「あ……」

オールバックにメガネ(ついでに美形)の人がすごむと、ちょっとビビる。

「乗りなさい」

「……はい」

言われた通り、素直に従う。

「失礼します」

そう言って、車に乗り込んだ。

私がシートベルトを締めた事を確認して、車が動き出す。

「アンタね、何の為にサキコちゃんがお願いに来て、何の為にアタシが送って行くのか分かってる?」

「……はい」

「今、どこに行こうとしてたの?」

「それは……」

はぁっ……と、雪ちゃんが大きな溜め息を吐いた。

「自ら危険に飛び込むなんて、バカじゃないの?」

「うっ……」

それはそうなんだけど、なんか段々腹が立って来て……。

「ホンット、目が離せないわね。良い?アンタから近寄ったら絶対にダメだからね?何かあったら、すぐにアタシに知らせなさい。約束よ、分かった?」

「うっ……はい……」

「よし!」

駄々っ子を宥める様に頭を撫でられ、じんわりと温かさが心に沁みる。

雪ちゃんが、やれやれ……とため息を吐いた。

「この後予定無いなら、どこかで夕飯食べて行かない?」

「え、いいんですか?」

「アタシが聞いてるのよ」

夕飯、と聞いていきなり元気になった私に、雪ちゃんがフフッと笑う。

「はいっ!大丈夫です!」

ゲンキンな物で、さっきまでのイライラがどこかへ飛んで行ってしまった。

「どこに行こっか。なに食べたい?」

「なんでもいいです!」

「じゃあ……アタシの気分で良いかしら?」

「もちろんですっ!」

雪ちゃんが紹介してくれたお店はどこも美味しいから、安心して任せられる。

「ガッツリと、肉行きましょうか」

「お肉大好きです!」

「決まりね」

「はいっ!」

わーい。楽しみだなぁ。

わくわくしながら、外を眺める。

(あれ?)

そー言えば、と、ふと疑問に思った。

「あの赤い車じゃないんですね?」

そうだ。デートの時は真っ赤なスポーツカーだったハズ。

「ああ、アレね。あの車じゃ目立つからね。普段はこっちの車よ」

「……なるほど。確かに、目を引きますね」

うん。この街中をあの車で走ったら、かなり目立ってしまう。

て言うか、あの車で出勤なんてしたら、会社内がザワ付いてしまうだろう。

「普段は近くに住んでる兄貴の所に預かってもらってるの」

「あ、お兄さんに……」

雪ちゃんには、お兄さんがいたのか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

純真~こじらせ初恋の攻略法~

伊吹美香
恋愛
あの頃の私は、この恋が永遠に続くと信じていた。 未成熟な私の初恋は、愛に変わる前に終わりを告げてしまった。 この心に沁みついているあなたの姿は、時がたてば消えていくものだと思っていたのに。 いつまでも消えてくれないあなたの残像を、私は必死でかき消そうとしている。 それなのに。 どうして今さら再会してしまったのだろう。 どうしてまた、あなたはこんなに私の心に入り込んでくるのだろう。 幼いころに止まったままの純愛が、今また動き出す……。

私の好きなひとは、私の親友と付き合うそうです。失恋ついでにネイルサロンに行ってみたら、生まれ変わったみたいに幸せになりました。

石河 翠
恋愛
長年好きだった片思い相手を、あっさり親友にとられた主人公。 失恋して落ち込んでいた彼女は、偶然の出会いにより、ネイルサロンに足を踏み入れる。 ネイルの力により、前向きになる主人公。さらにイケメン店長とやりとりを重ねるうち、少しずつ自分の気持ちを周囲に伝えていけるようになる。やがて、親友との決別を経て、店長への気持ちを自覚する。 店長との約束を守るためにも、自分の気持ちに正直でありたい。フラれる覚悟で店長に告白をすると、思いがけず甘いキスが返ってきて……。 自分に自信が持てない不器用で真面目なヒロインと、ヒロインに一目惚れしていた、実は執着心の高いヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、エブリスタ及び小説家になろうにも投稿しております。 扉絵はphoto ACさまよりお借りしております。

【完結】全力告白女子は、今日も変わらず愛を叫ぶ

たまこ
恋愛
素直で元気が取り柄のジュディスは、無口で武骨な陶芸家ダンフォースへ、毎日飽きもせず愛を叫ぶが、ダンフォースはいつだってつれない態度。それでも一緒にいてくれることを喜んでいたけれど、ある日ダンフォースが、見たことのない笑顔を見せる綺麗な女性が現れて・・・。

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

冷たい外科医の心を溶かしたのは

みずほ
恋愛
冷たい外科医と天然万年脳内お花畑ちゃんの、年齢差ラブコメです。 《あらすじ》 都心の二次救急病院で外科医師として働く永崎彰人。夜間当直中、急アルとして診た患者が突然自分の妹だと名乗り、まさかの波乱しかない同居生活がスタート。悠々自適な30代独身ライフに割り込んできた、自称妹に振り回される日々。 アホ女相手に恋愛なんて絶対したくない冷たい外科医vsネジが2、3本吹っ飛んだ自己肯定感の塊、タフなポジティブガール。 ラブよりもコメディ寄りかもしれません。ずっとドタバタしてます。 元々ベリカに掲載していました。 昔書いた作品でツッコミどころ満載のお話ですが、サクッと読めるので何かの片手間にお読み頂ければ幸いです。

御曹司とお試し結婚 〜3ヶ月後に離婚します!!〜

鳴宮鶉子
恋愛
御曹司とお試し結婚 〜3ヶ月後に離婚します!!〜

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

処理中です...