5 / 99
偶然知ったヒミツ⑤
しおりを挟む
仕事が出来て、女子社員にも大人気のあの津田部長が、女装……。
チラッと横目で見てみる。
(やっぱり綺麗……)
津田部長は、「イケメン」と言うよりも、「ハンサム」と言った顔立ちをしている。
目元はキリッと鼻筋もスッと通っていて、黒髪のロングストレートヘアーがとてもよく似合っていた。いつもはメガネをかけているけど、今はコンタクトだろうか?背も高く余計な贅肉なんて付いていないから、スラッと伸びた手足は女の私が嫉妬してしまう位綺麗だった。
「美園さん」
「は、はい!!」
津田部長が急に私の方を向いたので、ジロジロ見ていた事がバレたと思い、声が上ずる。
でも、津田部長が言いたい事は、どうやら違った。
「この事は……」
津田部長が目を伏せ、ギュッと手を握りしめている。
(あぁ、そうか)
私の口からこの秘密が漏れてしまうのではないかと、恐れているのだろう。
「誰にも言いません」
私の言葉に、伏せていた目を開ける。
「絶対に、誰にも言いません」
私は真っ直ぐに、津田部長の目を見ながら言った。
ウソは言っていない。誰だって一個や二個くらい、知られたくないヒミツは抱えている。私だっていい大人だ。言って良い事と悪い事の区別ぐらい付く。
「……そう。ありがとう」
その言葉を聞いて津田部長は、安堵の笑みを浮かべる。笑った顔も、やはり綺麗だった。
立っている事に疲れたのか、津田部長は近くにあったブランコに腰を下ろし、キィ…キィ…と漕ぎ始めた。
それを、なんとなく目で追う。
「あの……」
「なぁに?」
「ひとつ、伺っても宜しいでしょうか?」
「ええ」
「津田部長は……その……」
なんて言ったらいいのか言い淀んでいると、津田部長が察した様に言った。
「ゲイよ」
ど直球な言い方に、私は少しドキッとする。
「そう、なんですか……」
別に津田部長に恋愛感情を抱いていた訳ではなかったのだが、少しガッカリした様な、なんとも言えない感情が沸き上がる。
「普通の人には、理解し難いでしょうね。……まあ別に?理解して欲しいなんて、思ってないんだけど」
切なく笑う横顔が、なんだか淋し気で胸が痛くなった。
「あのっ……」
言いかけた時、不意に私の携帯が鳴り、一瞬ビクッと肩が震えた。
(またか……)
こんな時にかかって来るなんて、なんてタイミングが悪いんだろう。もう仕事も終わっているんだから、電源を切っておけば良かった。
「……出ないの?」
携帯を見る素振りも見せない私に、津田部長が首を傾げる。
「はい」
「急ぎの連絡かもしれないわよ?」
「いえ、大丈夫です。急ぎでもなんでもないですから」
見なくても、相手は誰だか分かってる。
今日のイライラの原因は、この着信相手のせいだった。
チラッと横目で見てみる。
(やっぱり綺麗……)
津田部長は、「イケメン」と言うよりも、「ハンサム」と言った顔立ちをしている。
目元はキリッと鼻筋もスッと通っていて、黒髪のロングストレートヘアーがとてもよく似合っていた。いつもはメガネをかけているけど、今はコンタクトだろうか?背も高く余計な贅肉なんて付いていないから、スラッと伸びた手足は女の私が嫉妬してしまう位綺麗だった。
「美園さん」
「は、はい!!」
津田部長が急に私の方を向いたので、ジロジロ見ていた事がバレたと思い、声が上ずる。
でも、津田部長が言いたい事は、どうやら違った。
「この事は……」
津田部長が目を伏せ、ギュッと手を握りしめている。
(あぁ、そうか)
私の口からこの秘密が漏れてしまうのではないかと、恐れているのだろう。
「誰にも言いません」
私の言葉に、伏せていた目を開ける。
「絶対に、誰にも言いません」
私は真っ直ぐに、津田部長の目を見ながら言った。
ウソは言っていない。誰だって一個や二個くらい、知られたくないヒミツは抱えている。私だっていい大人だ。言って良い事と悪い事の区別ぐらい付く。
「……そう。ありがとう」
その言葉を聞いて津田部長は、安堵の笑みを浮かべる。笑った顔も、やはり綺麗だった。
立っている事に疲れたのか、津田部長は近くにあったブランコに腰を下ろし、キィ…キィ…と漕ぎ始めた。
それを、なんとなく目で追う。
「あの……」
「なぁに?」
「ひとつ、伺っても宜しいでしょうか?」
「ええ」
「津田部長は……その……」
なんて言ったらいいのか言い淀んでいると、津田部長が察した様に言った。
「ゲイよ」
ど直球な言い方に、私は少しドキッとする。
「そう、なんですか……」
別に津田部長に恋愛感情を抱いていた訳ではなかったのだが、少しガッカリした様な、なんとも言えない感情が沸き上がる。
「普通の人には、理解し難いでしょうね。……まあ別に?理解して欲しいなんて、思ってないんだけど」
切なく笑う横顔が、なんだか淋し気で胸が痛くなった。
「あのっ……」
言いかけた時、不意に私の携帯が鳴り、一瞬ビクッと肩が震えた。
(またか……)
こんな時にかかって来るなんて、なんてタイミングが悪いんだろう。もう仕事も終わっているんだから、電源を切っておけば良かった。
「……出ないの?」
携帯を見る素振りも見せない私に、津田部長が首を傾げる。
「はい」
「急ぎの連絡かもしれないわよ?」
「いえ、大丈夫です。急ぎでもなんでもないですから」
見なくても、相手は誰だか分かってる。
今日のイライラの原因は、この着信相手のせいだった。
10
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
純真~こじらせ初恋の攻略法~
伊吹美香
恋愛
あの頃の私は、この恋が永遠に続くと信じていた。
未成熟な私の初恋は、愛に変わる前に終わりを告げてしまった。
この心に沁みついているあなたの姿は、時がたてば消えていくものだと思っていたのに。
いつまでも消えてくれないあなたの残像を、私は必死でかき消そうとしている。
それなのに。
どうして今さら再会してしまったのだろう。
どうしてまた、あなたはこんなに私の心に入り込んでくるのだろう。
幼いころに止まったままの純愛が、今また動き出す……。
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
私の好きなひとは、私の親友と付き合うそうです。失恋ついでにネイルサロンに行ってみたら、生まれ変わったみたいに幸せになりました。
石河 翠
恋愛
長年好きだった片思い相手を、あっさり親友にとられた主人公。
失恋して落ち込んでいた彼女は、偶然の出会いにより、ネイルサロンに足を踏み入れる。
ネイルの力により、前向きになる主人公。さらにイケメン店長とやりとりを重ねるうち、少しずつ自分の気持ちを周囲に伝えていけるようになる。やがて、親友との決別を経て、店長への気持ちを自覚する。
店長との約束を守るためにも、自分の気持ちに正直でありたい。フラれる覚悟で店長に告白をすると、思いがけず甘いキスが返ってきて……。
自分に自信が持てない不器用で真面目なヒロインと、ヒロインに一目惚れしていた、実は執着心の高いヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、エブリスタ及び小説家になろうにも投稿しております。
扉絵はphoto ACさまよりお借りしております。
あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。
ただ…
トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。
誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。
いや…もう女子と言える年齢ではない。
キラキラドキドキした恋愛はしたい…
結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。
最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。
彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して…
そんな人が、
『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』
だなんて、私を指名してくれて…
そして…
スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、
『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』
って、誘われた…
いったい私に何が起こっているの?
パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子…
たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。
誰かを思いっきり好きになって…
甘えてみても…いいですか?
※after story別作品で公開中(同じタイトル)
冷たい外科医の心を溶かしたのは
みずほ
恋愛
冷たい外科医と天然万年脳内お花畑ちゃんの、年齢差ラブコメです。
《あらすじ》
都心の二次救急病院で外科医師として働く永崎彰人。夜間当直中、急アルとして診た患者が突然自分の妹だと名乗り、まさかの波乱しかない同居生活がスタート。悠々自適な30代独身ライフに割り込んできた、自称妹に振り回される日々。
アホ女相手に恋愛なんて絶対したくない冷たい外科医vsネジが2、3本吹っ飛んだ自己肯定感の塊、タフなポジティブガール。
ラブよりもコメディ寄りかもしれません。ずっとドタバタしてます。
元々ベリカに掲載していました。
昔書いた作品でツッコミどころ満載のお話ですが、サクッと読めるので何かの片手間にお読み頂ければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる