召喚世界のアリス

天野ハザマ

文字の大きさ
上 下
49 / 58
異界の国のアリス

リーゼロッテのお店

しおりを挟む
「とにかく、ついてきなさい。そこで教えて差し上げますわ」
「……」
「なんで一歩下がるんですの?」
「甘い事言ってついてくるよう言う人には近寄らないよう教育されてるから……」
「いい加減にしないと、ほんと往復ビンタじゃすみませんわよ?」

 そうは言うけどさー。

「だって、話がポンポン進み過ぎてちょっとどうかなって気がするし。初対面の私にあんまし公に出来ない事情を明かすのも怪しいっていうか」
「そんな今さら過ぎる事を言われた事実にビックリですわ……!」

 呆れたような表情をするリーゼロッテ。おかしい、私はマトモな事言ってるはずなのに。
 なんか念話で溜息が聞こえてくるのが更に妙だ。何故だ。

「まあ、いいですわ。貴方のお馬鹿さんな頭にも理解できるように言うなら、私は自分の見る目ってやつを信じてますの。それが全てですわ」
「なんか想像以上にふわっとした答えが返ってきて愕然としてるんだけど」
「うっさいですわね! 天眼の説明しても貴方には理解できないでしょう⁉ 説明して差し上げましょうか、半日くらい!」
「ごめんなさい」
「よろしい!」

 まあ、たぶん魔女の天眼とかいうのには不思議な力があるんだろなー、くらいは想像ついた。
 まさか私のステータス見れるとは言わないだろうけど。いや、そういう可能性もあるかな?
 どうだろう。うーん。

「じゃあ、ついてきなさい。私の店に案内しますわ」
「お店とか持ってるんだ」
「私、薬師だと自己紹介しましたわよね……⁉」

 お薬屋さんって言ったら俗っぽいって言ったくせにー。お店持ってるならお薬屋さんでいいじゃんか……というのは、言ったら怒るだろうから言わないでおこう。私えらい。

「なんか人里離れた森の小屋とかで暮らしてるのかと思った」
「なんでそんな面倒な事しなきゃいけないんですの……」
「俗っぽいの嫌みたいな事言ってなかったっけ」
「俗っぽいのは貴方の表現でしてよ」
「そうかなあ」

 言いながら、リーゼロッテは街の中心の方へと歩いていく。
 むう、俗っぽいとかいう割には儲けてるのかな?
 それとも天眼とかってやつの力が関係してる?

『アルヴァ、天眼ってどういう能力あるの?』
『貴様、躊躇なく頼りにくるな……』
『いいじゃん。アルヴァなら私に分かるように言えるでしょ?』
『……様々な魔法能力を秘めた眼だ。半永久的なマジックスクロールと言って理解できるか?』
『あ、オッケー。よく理解できた』
『魔女によって天眼の能力は異なる。この魔女には、対人関係に役立つ能力があるのだろうな』

 ふむふむ、なるほどなるほど?
 でもなんか、すっごい狙われそうだなあ……うーん。

「さ、着きましたわよ!」
「おおー……」

 リーゼロッテ魔法薬店、と描かれた何やら派手な看板がつけられた建物がある。
 うん、なんていうか。

「すごく俗っぽい……」
「なっ! このセンスが分からないんですの⁉」
「なんかエッチな薬とか売ってそう」
「とんでもない風評被害はやめてくださるかしら⁉」
「だって無駄にキラキラしてるし……」

 魔法なんだろうか、こんな昼間から看板がキラキラ電飾みたいに光ってる。
 これは酷い。俗っぽさの極みだ。夜に通ったら大人向けのお店かと思うぞ私。

「女の子っぽくて可愛いと評判ですのに……センスが古いのではなくて?」
「ええー……マジかあ……」

 まあ、この辺にこんな看板のお店、他にないもんね。最先端でハイセンスなのかもしれない。
 キラキラして宝石がいっぱいついてるみたい、と言えないこともない。

「とにかく、中にお入りなさい」
「中もキラキラしてたらやだなあ……」

 言いながら中に入ると、キラキラはしてなかったけどフリルだった。
 ふむ……ふむう。

「内装はなんか理解できる」
「理解できなかったら、貴方はなんでそんな格好してるんだって話になりますわよ……?」

 そういえば私も女の子の極みみたいな恰好だったね!
 なんか慣れてるせいか、つい忘れがちになる。

「この瓶に入ってるの、何?」
「虫よけですわ。振りかければ大体の虫を寄せ付けませんわよ」
「ふーん。こっちは?」
「咳止めですわね」
「なんで虫よけの隣にあるの……?」

 思ったより真面目にお薬屋さんだ。あ、違う。薬師だったわね。

 ドアのカギを閉めたリーゼロッテはホウキを壁にたてかけて、お店のカウンターのところの椅子に座る。

「さて、早速ですが本題に入りましょうか」
「おっけー」
「貴方、躊躇なくカウンターに座りますわね」
「だって私の椅子ないし」

 立って長くなりそうな話を聞くとかとんでもない。

「まあ、いいですわ。えーと、貴方、例の事件を追ってきたんですわよね?」
「違法奴隷商人の事件でしょ? 私もちょっと目をつけられたみたい」
「でしょうね。連中にとって見目麗しい人間は高値の商品に見えるでしょうから」

 ま、美少女だからね。でもまあ、さっきから気になってた事が1つある。

「ていうかさ。リーゼロッテはなんでグレイたちに依頼してるの?」
「そんなに不思議なことかしら」
「うん、不思議。だって……魔女族って、魔族であって人間族じゃないでしょ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

悪役令嬢の味方をしたら追放されました

神崎 ルナ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインに転生してしまったあたし。ざまあは嫌なので頑張っていたんだけど、え? 追放ってマジですか(白目)。……追放されました。うせやろ。……魔の森、って人住めたんですかね? 何故かそこに隠者のように住むイケメンさんと旅することになってますが――。 エブリスタ様でも公開しています。

僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。 ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。 『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』 『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』 そんな感じ。 『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。 隔週日曜日に更新予定。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

異世界坊主の成り上がり

峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
山歩き中の似非坊主が気が付いたら異世界に居た、放っておいても生き残る程度の生存能力の山男、どうやら坊主扱いで布教せよということらしい、そんなこと言うと坊主は皆死んだら異世界か?名前だけで和尚(おしょう)にされた山男の明日はどっちだ? 矢鱈と生物学的に細かいゴブリンの生態がウリです? 本編の方は無事完結したので、後はひたすら番外で肉付けしています。 タイトル変えてみました、 旧題異世界坊主のハーレム話 旧旧題ようこそ異世界 迷い混んだのは坊主でした 「坊主が死んだら異世界でした 仏の威光は異世界でも通用しますか? それはそうとして、ゴブリンの生態が色々エグいのですが…」 迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」 ヒロイン其の2のエリスのイメージが有る程度固まったので画像にしてみました、灯に関しては未だしっくり来ていないので・・未公開 因みに、新作も一応準備済みです、良かったら見てやって下さい。 少女は石と旅に出る https://kakuyomu.jp/works/1177354054893967766 SF風味なファンタジー、一応この異世界坊主とパラレル的にリンクします 少女は其れでも生き足掻く https://kakuyomu.jp/works/1177354054893670055 中世ヨーロッパファンタジー、独立してます

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...