上 下
38 / 66
第二章 迷宮へ挑む

第38話

しおりを挟む

 アリサ達との話し合いが終わった後、一人となった俺は少し前から気になっていた〖覇者〗というスキルの能力を理解しておこうと思いステータスを開き、〖覇者〗のスキル項目を確認した。

名前:覇者
説明:覇道を極めし者、神々の試練を乗り越えた者に与えられるスキル。その力は絶大であり様々な能力を手にする。

「……能力一覧とかは載ってないのか? リフェル何か知ってるか?」

(うむ、我も主の全てを知っている分けではないから分からない事もあるが、覚えている限りでは〝鑑定、空間作成、配下契約〟の3つは持っている筈じゃ)

「成程、ミルスさんに聞いてみるか……」

 俺は頭の中でリフェルとの会話を止めて、ミルスさんへ話しかけるように切り替えた。すると、ミルスさんは直ぐに俺の念話に気が付き目の前に現れた。

「どうしたんですか、ロイド君?」

「はい、実は〖覇者〗のスキルについて確認しようと思ってみたんですけど、能力が書かれていない様で確認出来ないんですよね」

「えっ? そんな事は……」

 ミルスさんは驚いたように反応し、俺の方をジッと見ると複雑そうな顔になった。

「どうやら、ロイド君の呪いは完璧に解かれていなかったようですね。長年掛かっていた事で魂の奥深くまで呪いが掛かっている様です。そのせいで一部の能力に制限に掛かっているみたいです」

「それは解呪できそうですか?」

「……無理そうですね。これは、メリア本人では無いと解けない呪いです。すみませんロイド君、私共では力になれそうにないです」

 ミルスさんは申し訳なさそうに頭を下げてそう言った。俺は、そんなミルスさんに「ミルスさんが謝る事では無いですよ」と止めて、疑問に思った事を尋ねた。

「全能神でも無理な呪いを母さんは扱えるんですか?」

「えぇ、彼女はこの世界でも僅かにしかいない呪術師の中でもトップクラスなんです。彼女は、呪いを使う際に自身の固有能力でもある〖血魔法〗を同時に使って従来の呪いとは違った呪いを相手に掛ける事を得意としてるんです」

「呪術の天才と言う事ですか……」

「そうなります。以前、彼女が本気で呪いを掛けた相手を聖神が解呪しようとしたのですが、解呪に成功しなかったんです」

 ミルスさんのその言葉を聞いた俺は、神をも超える能力を扱える人が存在するのかと驚いた。それから、ミルスさんは「また、何かありましたらお呼びください」と言って消えた。

「結局、分かんなかったか……まあ、良いか。取りあえず、一旦リフェル達の様子を見に行くとするか」

 俺はそう呟き〖覇者〗の能力の一部である空間作成で作ったというリフェル達の住処へと入る入口を出現させて空間の中へと入った。そして、空間の道を通って出た先の光景に俺は驚きを隠せなかった。

「なんだ、これ!?」

 青い空、白い雲、そして地平線まで続く海や天まで届かんとする大きな山々がそこにはあった。

「主殿! ようこそ、主殿の世界へ!」

 その光景に驚いていると、竜の姿をしたルドラが俺の元へとやって来て瞬時に人間の姿となると片膝をついてそう言った。

「なあ、ルドラ。これって、俺が作った世界なのか?」

「はい! 主殿が我等の住処となる場所を用意すると言って、お作りになられた世界です」

 ルドラは自信満々にそう言って「主殿、皆の者も主殿が来るのを楽しみに待っていますので、取りあえず移動しましょう」と言って竜化した。俺は、ルドラの言葉に「ああ」と言って背中に乗り、ルドラはゆっくりと空へと飛んだ。
 数分後、この世界に入ってきた以上に俺は驚く事となった。

「何だ。あの都市は!?」

「驚きましたか? あちらは、この世界の唯一の都市です。我等、竜種から外の世界では一番弱いとされる魔物のスライム族まで多種族が住む都市です」

 ルドラは嬉しそうにそう俺に言うと都市が近づくにつれて降下して行き、下に居る者達が見える位置の所を飛び始めた。すると、下の方から歓声が聞こえたので向くと、そこには〝ロイド様万歳!〟〝ご主人様おかえりなさい!〟と言った看板を掲げた魔物や亜人、普通の人族等が居た。

「彼等は全て、主殿に忠誠を誓った者達です。主殿が力を忘れた数年間、彼等はいつか主殿が戻って来ると信じて、互いに協力しあいこの都市を築き上げたんです」

 その後、ルドラ達が用意したと言う壇上の上に俺が下りるとその周りには多くの人々が集まっており、俺の姿を見るや大きな歓声を上げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

恋人を寝取られ死刑を言い渡された騎士、魔女の温情により命を救われ復讐よりも成り上がって見返してやろう

灰色の鼠
ファンタジー
騎士として清くあろうとし国民の安寧を守り続けようとした主人公カリヤは、王都に侵入した魔獣に襲われそうになった少女を救うべく単独で撃破する。 あれ以来、少女エドナとは恋仲となるのだが「聖騎士」の称号を得るための試験を間近にカリヤの所属する騎士団内で潰し合いが発生。 カリヤは同期である上流貴族の子息アベルから平民出身だという理由で様々な嫌がらせを受けていたが、自身も聖騎士になるべく日々の努力を怠らないようにしていた。 そんなある日、アベルに呼び出された先でカリヤは絶望する。 恋人であるエドナがアベルに寝取られており、エドナが公爵家令嬢であることも明かされる。 それだけに留まらずカリヤは令嬢エドナに強姦をしたという濡れ衣を着せられ国王から処刑を言い渡されてしまう———

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

英雄に幼馴染を寝取られたが、物語の完璧美少女メインヒロインに溺愛されてしまった自称脇役の青年の恋愛事情

灰色の鼠
ファンタジー
・他サイト総合日間ランキング1位! ・総合週間ランキング1位! ・ラブコメ日間ランキング1位! ・ラブコメ週間ランキング1位! ・ラブコメ月間ランキング1位獲得!  魔王を討ちとったハーレム主人公のような英雄リュートに結婚を誓い合った幼馴染を奪い取られてしまった脇役ヘリオス。  幼いころから何かの主人公になりたいと願っていたが、どんなに努力をしても自分は舞台上で活躍するような英雄にはなれないことを認め、絶望する。  そんな彼のことを、主人公リュートと結ばれなければならない物語のメインヒロインが異様なまでに執着するようになり、いつしか溺愛されてしまう。  これは脇役モブと、美少女メインヒロインを中心に起きる様々なトラブルを描いたラブコメである———

戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。

隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。 婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。 しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

勇者がパーティーを追放されたので、冒険者の街で「助っ人冒険者」を始めたら……勇者だった頃よりも大忙しなのですが!?

シトラス=ライス
ファンタジー
 漆黒の勇者ノワールは、突然やってきた国の皇子ブランシュに力の証である聖剣を奪われ、追放を宣言される。 かなり不真面目なメンバーたちも、真面目なノワールが気に入らず、彼の追放に加担していたらしい。 結果ノワールは勇者にも関わらずパーティーを追い出されてしまう。 途方に暮れてたノワールは、放浪の最中にたまたまヨトンヘイム冒険者ギルドの受付嬢の「リゼ」を救出する。 すると彼女から……「とっても強いそこのあなた! 助っ人冒険者になりませんか!?」  特にやることも見つからなかったノワールは、名前を「ノルン」と変え、その誘いを受け、公僕の戦士である「助っ人冒険者」となった。  さすがは元勇者というべきか。 助っ人にも関わらず主役級の大活躍をしたり、久々に食事やお酒を楽しんだり、新人の冒険者の面倒を見たりなどなど…………あれ? 勇者だったころよりも、充実してないか?  一方その頃、勇者になりかわったブランシュは能力の代償と、その強大な力に振り回されているのだった…… *本作は以前連載をしておりました「勇者がパーティーをクビになったので、山に囲まれた田舎でスローライフを始めたら(かつて助けた村娘と共に)、最初は地元民となんやかんやとあったけど……今は、勇者だった頃よりもはるかに幸せなのですが?」のリブート作品になります。

処理中です...