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第二章 迷宮へ挑む
第31話
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力が体の奥底から溢れてくる感覚の中、未だ腹部に刺さっている聖剣に目をやり手を背中に回して一気に引き抜き、同時に魔法で治療を即座に行った。
「な、何で起き上がれるんだよ! それに、何だよ。その見た目はッ!」
「見た目? 何言ってるんだ?」
俺が起き上がるとは思わなかったクソ勇者は、意味不明な事を叫びながら聖剣をブンブンと振っていた。そんなクソ勇者に、もう容赦をする意味も無いと頭の中で理解した俺は、聖剣を持っていた剣で吹き飛ばし、剣を失った勇者は這いずって逃げようとしたが勇者の首を掴み、持ち上げた。
「グッ」
「さっきまでだったら、俺に関わらないと誓えば苦手してやったけど、もう容赦はしないから」
クソ勇者は俺の言葉にバタバタと体を動かしたが、そのまま力を入れていくと段々と静かになり数秒後、勇者は動かなくなった。クソ勇者が動かなくなったのを見届けた俺は、クソ勇者を持っていた手を放して首が変な方向に向いているクソ勇者の体を一瞥してアリサ達の方へと歩いて行った。
「ごめんね。心配かけた」
俺がそう言うと、泣いていたアリサ達は一斉に俺に抱き着いて来て、そのまま盛大に泣き始めた。それと、同時に騒ぎを聞きつけた街の住民や兵士達がやって来て泣いているアリサ達と地面に転がっている勇者の姿を見て困惑していた。そんな状況を確認し、どうしようか思考を巡らせているとプツンッと俺の意識は途切れてしまった。
***
「主! 起きろ、主!」
「んっ……どこだ、ここ?」
次に意識を取り戻すと、何者かが俺に声を掛けていた。そして、目を開けると見たことも無い白い空間に寝ころんでいたので体を起こし、周りを確認すると近くに一匹の狼が佇んでいた。
「やっと起きたのう。今まで、我を無視していたのは許してやるが既に我を認識しているのに無視をするのは、許さんぞ」
「え~っと……君は誰?」
その狼は俺の事を知っている感じだったが、俺の記憶にはその狼の姿は無かったのでそう尋ねると、その狼は「我を忘れたのかッ!」と吠えた。
「す、すまん」
「……まあ、呪いのせいで記憶が混乱しておるのだろう。我は、種は神獣フェンリル。名をリフェルと申す。この名は、主であるロイドに付けられた大事な名じゃ、思い出したか?」
「……えっ、リフェル?」
その狼がリフェルと名乗り、俺は記憶の片隅にあった小さな狼を従魔にした時の記憶を思い出した。その時の狼は、俺の膝位しかなかったはずだが目の前に居る狼は俺よりも大きな体をしていた。
「あの、リフェルなのか?」
「そうじゃ、そのリフェルじゃ。主の体感では数年じゃろうが、我は主の異空間で何百年も修業を行っていたんじゃ、体が大きくなって分からなかったか?」
「当り前だ! あんな小さかった狼がこんなに大きくなるとは、思わないだろ! それに、さっき神獣フェンリルとか言ってたけど、お前普通の狼じゃなかったのか!?」
「元は普通の狼じゃったよ。ただ、主に加護を付けておった神の連中にロイドの従魔なら箔が必要じゃろうと言われてな、フォレストウルフの子供じゃった我を神獣にされたんじゃ、そのおかげでここまで体も大きくなったんじゃ」
そう言われた俺は、神が勝手にそんな事を? と思ったが、記憶の中にある神達は事ある毎に俺に試練だのなんだのと言って、色んな事をさせられていたのを思い出し、納得してしまった。しかし、そこで俺は違和感を感じた。それは、今まで封印されていたかの様に消えていた記憶が戻り、今までの記憶と大分違う光景などがあった。
「何だこの記憶は……」
「んっ? ああ、その事なら多分呪いのせいじゃろう」
「呪いって、俺呪いに掛かっていたのか?」
「うむ、我もついさっき気が付いたがのう。聖剣が主を貫き、呪いの一部が欠けて異空間に居った我が察知し、ようやく気が付いた物じゃったからのう。上手く隠されていたようじゃ、じゃがその呪いから見て主の母であるメリアが掛けた物で間違いなかった」
リフェルの言葉に「母さんが俺に呪いを?」と反応した。すると、リフェルは頷き「主よ。既に記憶が戻っているなら、知っていると思うが主の母は呪術師として最高位の者じゃぞ」と言われた。
「……確かに、記憶にある母さんの戦い方は呪術師のそれだ。って、あれ母さんってこんな姿してたっけ? それに父さんの姿も記憶と大分違うんだが」
以前までの記憶上の両親は、普通の人間の姿をしていたが現在の両親の記憶は、母さんは魔人族の証である真っ赤な瞳に深紅の髪をしており、父さんは2mはある体躯に竜人族の証でもある角を額にはやしていた。
「って、ちょっと待て!」
俺はそこで、先程勇者が俺に対して「何だ。その見た目は!」と言っていた事を思い出して異空間から鏡を取り出して自身の今の姿を確認した。すると、そこに映し出されていたのは、茶髪だった髪は深紅に染まっており、目の色も赤く変わっていた。極めつけには、額には竜人の証でもある角が生えていた。
「まあ、その見た目から分かる通り、主は竜人族と魔人族のハーフじゃろうな……我の記憶では、出会った頃には隠されて居ったから長い間、隠されていたんじゃろう」
「はぁ!?」
俺はリフェルからの言葉にそう叫ぶと同時に、白い空間が壊れ、次に目が覚めるとフカフカのベッドに横になっており、その脇にはアリサ達が付いていた。そして、俺が起きた事にアリサ達が気が付きましても泣きながら俺に抱き着いて来た。
「な、何で起き上がれるんだよ! それに、何だよ。その見た目はッ!」
「見た目? 何言ってるんだ?」
俺が起き上がるとは思わなかったクソ勇者は、意味不明な事を叫びながら聖剣をブンブンと振っていた。そんなクソ勇者に、もう容赦をする意味も無いと頭の中で理解した俺は、聖剣を持っていた剣で吹き飛ばし、剣を失った勇者は這いずって逃げようとしたが勇者の首を掴み、持ち上げた。
「グッ」
「さっきまでだったら、俺に関わらないと誓えば苦手してやったけど、もう容赦はしないから」
クソ勇者は俺の言葉にバタバタと体を動かしたが、そのまま力を入れていくと段々と静かになり数秒後、勇者は動かなくなった。クソ勇者が動かなくなったのを見届けた俺は、クソ勇者を持っていた手を放して首が変な方向に向いているクソ勇者の体を一瞥してアリサ達の方へと歩いて行った。
「ごめんね。心配かけた」
俺がそう言うと、泣いていたアリサ達は一斉に俺に抱き着いて来て、そのまま盛大に泣き始めた。それと、同時に騒ぎを聞きつけた街の住民や兵士達がやって来て泣いているアリサ達と地面に転がっている勇者の姿を見て困惑していた。そんな状況を確認し、どうしようか思考を巡らせているとプツンッと俺の意識は途切れてしまった。
***
「主! 起きろ、主!」
「んっ……どこだ、ここ?」
次に意識を取り戻すと、何者かが俺に声を掛けていた。そして、目を開けると見たことも無い白い空間に寝ころんでいたので体を起こし、周りを確認すると近くに一匹の狼が佇んでいた。
「やっと起きたのう。今まで、我を無視していたのは許してやるが既に我を認識しているのに無視をするのは、許さんぞ」
「え~っと……君は誰?」
その狼は俺の事を知っている感じだったが、俺の記憶にはその狼の姿は無かったのでそう尋ねると、その狼は「我を忘れたのかッ!」と吠えた。
「す、すまん」
「……まあ、呪いのせいで記憶が混乱しておるのだろう。我は、種は神獣フェンリル。名をリフェルと申す。この名は、主であるロイドに付けられた大事な名じゃ、思い出したか?」
「……えっ、リフェル?」
その狼がリフェルと名乗り、俺は記憶の片隅にあった小さな狼を従魔にした時の記憶を思い出した。その時の狼は、俺の膝位しかなかったはずだが目の前に居る狼は俺よりも大きな体をしていた。
「あの、リフェルなのか?」
「そうじゃ、そのリフェルじゃ。主の体感では数年じゃろうが、我は主の異空間で何百年も修業を行っていたんじゃ、体が大きくなって分からなかったか?」
「当り前だ! あんな小さかった狼がこんなに大きくなるとは、思わないだろ! それに、さっき神獣フェンリルとか言ってたけど、お前普通の狼じゃなかったのか!?」
「元は普通の狼じゃったよ。ただ、主に加護を付けておった神の連中にロイドの従魔なら箔が必要じゃろうと言われてな、フォレストウルフの子供じゃった我を神獣にされたんじゃ、そのおかげでここまで体も大きくなったんじゃ」
そう言われた俺は、神が勝手にそんな事を? と思ったが、記憶の中にある神達は事ある毎に俺に試練だのなんだのと言って、色んな事をさせられていたのを思い出し、納得してしまった。しかし、そこで俺は違和感を感じた。それは、今まで封印されていたかの様に消えていた記憶が戻り、今までの記憶と大分違う光景などがあった。
「何だこの記憶は……」
「んっ? ああ、その事なら多分呪いのせいじゃろう」
「呪いって、俺呪いに掛かっていたのか?」
「うむ、我もついさっき気が付いたがのう。聖剣が主を貫き、呪いの一部が欠けて異空間に居った我が察知し、ようやく気が付いた物じゃったからのう。上手く隠されていたようじゃ、じゃがその呪いから見て主の母であるメリアが掛けた物で間違いなかった」
リフェルの言葉に「母さんが俺に呪いを?」と反応した。すると、リフェルは頷き「主よ。既に記憶が戻っているなら、知っていると思うが主の母は呪術師として最高位の者じゃぞ」と言われた。
「……確かに、記憶にある母さんの戦い方は呪術師のそれだ。って、あれ母さんってこんな姿してたっけ? それに父さんの姿も記憶と大分違うんだが」
以前までの記憶上の両親は、普通の人間の姿をしていたが現在の両親の記憶は、母さんは魔人族の証である真っ赤な瞳に深紅の髪をしており、父さんは2mはある体躯に竜人族の証でもある角を額にはやしていた。
「って、ちょっと待て!」
俺はそこで、先程勇者が俺に対して「何だ。その見た目は!」と言っていた事を思い出して異空間から鏡を取り出して自身の今の姿を確認した。すると、そこに映し出されていたのは、茶髪だった髪は深紅に染まっており、目の色も赤く変わっていた。極めつけには、額には竜人の証でもある角が生えていた。
「まあ、その見た目から分かる通り、主は竜人族と魔人族のハーフじゃろうな……我の記憶では、出会った頃には隠されて居ったから長い間、隠されていたんじゃろう」
「はぁ!?」
俺はリフェルからの言葉にそう叫ぶと同時に、白い空間が壊れ、次に目が覚めるとフカフカのベッドに横になっており、その脇にはアリサ達が付いていた。そして、俺が起きた事にアリサ達が気が付きましても泣きながら俺に抱き着いて来た。
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