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第二章
第117話 【新学期に向けて・3】
しおりを挟むレイン達に剣術を見せた翌日、朝から俺はエルドさんから呼び出しを受けた。
「突然、呼び出してすまんな」
「いえ、それは大丈夫ですけど、今日はどういった件で呼ばれたんですか?」
「最近、アルフとは話せてなかったから少し話をしたいと思ったのと、昨日アレンからアルフが目標を持ってないと聞いてな」
エルドさんは師匠から俺が目標を持ってない事を聞いて、それが心配になって話しをしようと思ったとそう言った。
「儂としては商会の役に立ちたいと思ってくれてる事は嬉しい。ただアルフはまだ若いから、色んな事に挑戦して欲しいと思ってるんだ。何かしたい事とか叶えたい夢とか無いのか?」
「特に無いんですよね……やっぱり、何か目標を持った方が良いんですかね?」
「無理に持つものではないが……アルフは商会に縛られて、自分の叶えたい事を見失ってるんじゃないかと心配に思ったんだ」
「そんな事は無いですよ? 商会に縛られてるなんて思った事は一度も無いです」
心配そうな顔をしてるエルドさんに俺はそう伝えると、エルドさんは「本当か?」と聞き返してきた。
「嘘じゃないですよ。商会には感謝しかしてません。それに目標を持てないのは、多分俺の性格なんだと思います」
「う~む……まあ、そこまで言うのであれば今のアルフの本音はそうだと信じる。だがもし、何か目標が出来たら儂にも教えてくれるか?」
「勿論です」
そうしてエルドさんとの話し合いは終え、寮の方に戻るとアリス達が集まっていたので、遅れた事を謝罪して勉強会を始めた。
「クラリス。クラリスは何か目標とかってあるのか?」
「兄さん、どうしたの急に?」
その日の夜、師匠達やエルドさんから目標について聞かれた俺は、クラリスとの勉強会の時にそう聞いた。
「いやさ、昨日今日と師匠達やエルドさんから目標は無いのか? って聞かれて、今の目標って商会の役に立ちたいってだけでそれ以外は無いんだよ。それで師匠達は、もっと他に目標は無いのかって聞いてくるんだけど特に無くて……」
「今の私の目標は、兄さんと同じで商会の役に立ちたいって事もあるけど、立派な魔法使いになる事も目標だね。兄さんに訓練つけてもらって、家に居る時よりも更に魔法の腕が上がったから、このまま頑張って国に認められる魔法使いになるのが目標だよ」
「国に認められる魔法使いって、クラリスはいつか国に仕えたいのか?」
「ううん。そうじゃないよ。ただ一応は魔法使いの一族として生まれた訳だから、それ位の名声は得ないと私達を苦しめたあの人達よりも劣ってる存在だと思われるでしょ?」
魔法使いとしての認められるという目標の裏には、俺達を苦しめた家族を超えたと言う証明をしたいと言う思いが隠れていたのか……。
本当に俺の妹は、兄である俺より凄いな~。
「クラリスは色々と考えてるんだね。俺はただ今の生活に満足して、商会の役に立ちたいとだけ思ってたよ……」
「私もこの目標が出来たのは、兄さんと訓練を始めてからだし、兄さんもゆっくり決めたらいいと思うよ? そんなに焦ってても、目標は決まらないと思うし」
「……そうだよね。師匠達から言われて、目標を持った方が良いのかな? って焦ったけど、焦っても良い事ではないもんね。あれがとうクラリス」
クラリスに俺はお礼を言って、明日また師匠達にまた目標は決めないという事を伝えようと考えた。
「目標が決まったら私にも教えてね?」
「勿論、決まったらクラリスにも教えるよ。まあ、いつ決まるか分からないけどね。暫くは、今のまま取り合えず商会の役に立つ為に色々と頑張ってみるよ」
その後、勉強を終えて就寝した俺は昨日は考え事をして、寝つきが悪かった。
しかし、クラリスと話した事で頭の中がスッキリし、今日は直ぐに寝る事が出来た。
そして翌日、朝食を食べに食堂に行くと丁度フローラさんが居た。
「おはようございます。フローラさん」
「おはよう。アルフ君、今日も早起きね」
「この時間に起きるのは習慣付いてますから、そういうフローラさんも早起きですよね」
「普通は結構寝る方なんだけど、やっぱり訓練だけじゃ疲れないから、あまり長時間は寝れないのよね。それより、昨日よりアルフ君の顔色がスッキリしてるみたいだけど、もしかして何か悩みでも解消されたのかしら?」
フローラさんからそう言われた俺は、昨日の夜にクラリスと目標について話をして、ゆっくりと決めて行こうと決めたからだと伝えた。
「そうなのね。それじゃ、目標が決まったら私にも教えてね。力になれる事があったら、力を貸すわ」
「ありがとうございます。その時は、よろしくお願いします」
その後、食事を終えてレイン達が来るまで少し待ち、皆が揃ったら今日もテストに向けて勉強会を行った。
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