107 / 140
第二章
第107話 【二人目の白金級冒険者・1】
しおりを挟む冒険者活動を始めて一月が経過した。
最初の目的通り、この期間は沢山の魔物と戦って経験を積んだ。
「なんだか立った一カ月間でしたけど、王都に居たのが随分と懐かしく感じます」
「アルフはこんなに長く、王都から離れた事が無いからそう感じるんだと思うぞ」
「多分、そうだと思います。ルクリア商会に来てからもこんなに長く王都を離れた事が無いですし、貴族の頃も無かったです」
俺はそう言うと、隣に座っているウィルが「僕も久しぶりに行くよ」と言った。
「そう言えば、ウィルっていつまでこっちに居れるの?」
「う~ん……まあ、暫くは滞在できるかな? 僕も一応、自国の学園に通ってるから休みが終わる前には帰らないと」
「……えっ、ウィルって学園に通ってるの?」
俺は衝撃の事実を知り、驚きながらそう聞いた。
「うん。言って無かったっけ?」
「聞いてなかった。えっ、でも俺を探す為にこっちの国で調査してたんだよね? その間は学園どうしてたの?」
「在籍扱いだよ。これでも優秀だからね。僕の通ってる学園は、成績優秀者かつ普段の授業態度が良ければ申請すれば長期休みを貰えるんだ。まあ、それに見合う成績をしてないと取れないんだけどね」
「ウィルって頭が良かったの? 知らなかったな」
昔、会っていた頃はそんな話はしなかったし、再会してもそういう話題にはならなかった。
「アルフに自慢できる程では無いけどね。聞いた話だと、かなり成績良いんでしょ?」
「まあ、それなりにはって感じだよ」
「ほ~、アルフは頭も良いのか? それは凄いな! 俺は、勉学が苦手て学園も初等部だけ通って、高等部には進学しなかったんだよな」
ダラムスさんは俺達の話を聞いていて、そう自分の過去の事を話した。
「進学しなかったって、成績が足りずに行けなかったの間違いじゃないか? 俺が知ってる情報と違うぞ?」
「い、良いだろ行かなかったのは事実なんだから!」
「少しでもよく見せようとするなよ……」
ダラムスさんの言葉に対し、師匠は呆れた様子でそう言った。
そうして王都へと戻って来ると、ダラムスさんとウィルは王城に用事があるらしく、そのまま王城の方へと去って行った。
「王城に用事って、ウィルが呼ばれた感じはしませんけど、ダラムスさんってこの国の王族とも知り合いなんですか?」
「あんなんでも、白金冒険者ではあるからな。それにダラムスの性格は、王族貴族に対してもあれだから、陛下とは仲が良いらしい」
「あ~、確かにダラムスさんの性格だと陛下も喜びそうですね……」
その後、俺と師匠は商会へと一月振りに戻って来て、まずはエルドさんの所に報告に向かった。
「経った一月でアルフの顔つきが変わったように見えるな……どんな魔物と戦って来たのか?」
そうエルドさんから聞かれた俺は、この一カ月間で戦った魔物達をエルドさんに伝えた。
その中でも一番強かったのは、俺の従魔のクロと種族は同じのレッドワイバーンとの戦いだ。
ワイバーンとは戦う予定は無かったのだが、別の魔物を探しに行った際に偶然出会ってしまい、戦闘をする事になってしまった。
その時は既にウィルとの連携も完成していた俺は、協力してレッドワイバーンの討伐に成功した。
「凄いな、その歳でワイバーンの討伐を成功させるとは……アレンも成し遂げてないぞ?」
「はい。俺もこの話を聞いた時は驚きました。疑いはしませんでしたが、証拠のレッドワイバーンの死体を見せて貰って、本当にアルフ達は凄いなと感じましたね」
エルドさんは俺がレッドワイバーンを討伐した事に驚いており、師匠は頷きながらそう言った。
それから報告を終えた俺は、師匠とは商会の建物で別れて寮の自分の部屋に一旦戻って来た。
「一ヵ月振りの自分の部屋だ~」
師匠の家でもほぼ俺の部屋と化している客間があるが、やはり既に住み慣れてる寮の部屋に戻ってきた俺は、何となく安心感を感じた。
そして少しだけ椅子に座って休憩をした俺は、今日は移動だけしかしてないので体を動かそうと思い広場へとやって来た。
「あれ、見かけない人が訓練してる」
広場にやってくると、今まで商会で暮らしていて見た事のない女性が剣を持って訓練をしていた。
貴族の様な綺麗な金色の長髪の髪に、蒼い瞳をしたその女性は真っ直ぐと剣先を見ていた。
俺はそんな女性の剣術を見ていると、後ろからエリスさんに声を掛けられた。
「ふふっ、アルフ君。彼女の剣技に見惚れてたでしょ?」
「えっ? あっ、はい。綺麗な剣術だなって、でもどことなくエリスさんから教わった剣術に似てるなとも思いました」
「それは多分、彼女の剣の師匠が私だからよ。フローラちゃん、訓練してる所悪いけど、ちょっと良いかしら?」
エリスさんがそう女性の名を呼ぶと、訓練に集中していた女性はエリスさんの声に反応して、剣を鞘に収めるとこっちに近づいて来た。
538
お気に入りに追加
2,194
あなたにおすすめの小説
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから
ハーーナ殿下
ファンタジー
冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。
だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。
これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長
ハーーナ殿下
ファンタジー
貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。
しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。
これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる