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第二章

第72話 【動き出す者達・2】

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 翌日、俺はエルドさんと二人で王城へと向かっていた。

「師匠は来ないんですね」

「アレンには別の事を頼んでいるから、今日は儂と二人だな。こうしてアルフと二人で行動するのは、最初に会った時以来だな」

 そんな雑談をしながら、数十分馬車で移動して王城へと到着した。
 俺が最後にここに来たのは、一年以上も前の事で久しぶりで緊張してきた。

「元貴族とはいえ、王城は緊張するようだな」

「滅多に来る場所では無かったですからね……」

 そう俺は言いながら馬車を降り、エルドさんと一緒に城内へと入った。
 中に入ると俺とエルドさんを待っていた兵士に案内される形で、とある部屋に通され中に入った。
 その部屋の中には、国のトップである国王ザディス・フォン・ベリアナ様が待っていた。

「エルド、遅いぞ?」

「これでも早く来た方だ。文句言うなら、帰るぞ」

 陛下は入って来た俺とエルドさんを見ると、エルドさんに対して文句を言った。
 そんな陛下の文句に対して、エルドさんは陛下を睨みつけながらそう言い返した。

「それと、アルフレッド君も久しぶりだね」

「は、はい。お久しぶりです!」

「やっぱり、暫く会ってなかったから緊張してるね。前に公の場以外は、友達の親として接して欲しいって約束したのに……」

 陛下はエルドさんと話していた時とは違い、優しい声音でそう言った。
 確かにまだ俺が貴族の頃で、友人である王子と交流が会った時にそんな事は言われた。

「ですけど、今は俺は貴族でも無いただのアルフレッドです。こうして陛下と普通に喋る事すら本来はしてはいけない立場の身です……」

「貴族じゃないから私と喋っては駄目だという事は無いと私は思っているよ。現に私とエルドは、言葉で殴り合うかのように会話をしているからね」

「アルフ。諦めも肝心だぞ? 儂も何度も敬うように会話をしようとしていたが、その度にこの馬鹿から詰め寄られて、結局今の感じに落ち着いたんだ」

「昔からの友人から〝陛下〟って、急に呼ばれだしたらむず痒いだろ? その相手がエルドって、なると気味が悪くて、元に戻す為に本当に頑張ったよ」

 苦労したよとそう言う陛下に対して、エルドさんは溜息を吐き「諦めるなら早い方が良いぞ……」と言った。

「まあ、アルフとザディスの距離感については今は良い。話し合いの時間が無くなってるぞ?」

「おっと、そうだった。今日はふざけてる時間が無かったんだったな」

 陛下は悪い悪いとエルドさんに言うと、テーブルの上に資料の束を置いた。
 その資料の表紙には、〝ノルゼニア家調査報告書〟と書かれていた。
 中身を見させてもらったが、事前に教えられた内容の他にもノルゼニア家は色々とやらかしていた。

「あの、陛下……この暗殺未遂って書かれてますけど……」

「アルフとエルド、後はアルフの師匠の妻であるリアナ・バルザールの暗殺未遂を起こしてる。全部、事前にエルドが何かあった時の為にと動いていたから未遂で終わって暗殺を企てた者達は捕らえ尋問した。その結果、ノルゼニア家が依頼した事が分かった」

「……」

 暗殺未遂の内容を聞いた俺は、自分のせいで沢山の人を危険な目に合わせてしまったと気づき、隣に座ってるエルドさんに対して頭を下げた。

「エルドさん、すみません。俺のせいで皆さんを危険な目に合わせてしまいました……」

「気にするな。捨てられた貴族の子と分かっていて、儂はアルフをルクリア商会に誘ったんだ。こうなる事位は経験上分かっていたから、その対処も最初からしておいた。儂等は誰も傷ついておらんから、そんな顔をするでない」

「エルドの言った通り、エルドはアルフを引き取って直ぐに行動を移して、ルクリア商会の防衛を強化していたよ。ルクリア商会は所属してる冒険者だけでも、かなりの強者揃いなのに知り合いの冒険者にも声を掛けていたね」

「儂等が傷つけばアルフが気にすると思っていたからな、そうならない為にも儂も全力で身を守る事にした。そのおかげで、早々に暗殺者を捕まえて情報を引き出す事も出来たんだ」

 俺の知らない所で危険な事が起き、それをエルドさんは対処してくれていた事を知った。
 俺は早く強くなってエルドさん達の為に働こうとしていたけど、俺が居る事で沢山迷惑を掛けてしまった。
 何も知らないにも程があるだろ……。

「今回の件は、儂が徹底的にアルフの耳に入らないようにしていたんだ。アルフが知れば、訓練に集中出来なかっただろ? それを危惧して、儂は情報を聞かせないように徹底していたんだ」

「そうだよ。アルフは気になる事は何も無いよ。悪いのは、こんな迷惑な事をしたノルゼニア家なんだから」

 自分の無知さに対して落ち込むと、エルドさんと陛下からそう慰めてくれた。
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