外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

文字の大きさ
上 下
63 / 140
第一章

第63話 【注目の的・3】

しおりを挟む

 そうして訓練を終え、夕食と風呂を済ませた俺は自室のベッドに横になり、明日の事を考えていた。

「明日から迷宮か~、楽しみだな!」

 俺はようやく迷宮に行けるとなり、楽しさから全く眠気が来ない。

「早く寝た方が良いって事は分かってるんだけど、全く眠くならないんだよな……」

 目を瞑って何とか寝ようとしているが、自分でも分かる程に迷宮が楽しみで少し興奮状態となっている。
 だけど、寝ないと師匠に迷惑を掛けてしまうのも分かってるから、俺は眠気が来ないままベッドに横になり目を瞑り続けた。

「何とか眠れた……」

 あの後、一時間程眠気が来ないまま目を瞑っていた俺は、なんとか寝る事が出来て朝を迎えた。
 寝て起きた事に対して、こんなに安心したのは初めてだ。

「アルフ君。嬉しそうだけど、何かあったのかしら?」

 食堂に行くと俺の顔を見て、おばちゃんからそんな事を言われた。

「実は、今日から二日間師匠と迷宮に行ってくるんです」

「あら、そうなのね。迷宮は冒険者にとって夢のような所だものね。怪我しないように頑張ってね」

「はい!」

 そうおばちゃんから言われた後、体力を付けて行った方が良いと思った俺は、いつもは一回しかしてないが二回おかわりをした。
 食後、自室に戻ってきた俺は久しぶりに装備を着けて商会の方へと向かった。

「準備万端みたいだな」

 商会の一階で待機していると、師匠がやって来てそう俺に言った。
 それから俺と師匠は、行く前にエルドさんの所に寄らないといけない為、一緒にエルドさんの仕事部屋に向かった。

「ふむ、久しぶりにアルフのその姿を見るが以前よりも筋肉が付いて来て、様になってるな」

「はい。特にこの師匠が居ない期間は、身体を鍛えようと色々とやってましたので」

「聞いておる。エリスから短期間であれだけ身体の作りが変わるのは、アルフだけだと言っていたな」

 エルドさんはそう言うと、二日間の日程について師匠に聞いた。

「それでアレン。迷宮は何処に行くか既に決めておるのか?」

「はい。王都近くだと、変な輩に会う可能性もあるので王都から約五時間程移動した所にある【初心の迷宮】に行こうと思います」

 【初心の迷宮】の情報は、主に低級の魔物が出現する迷宮で初心者が挑戦するには丁度いい迷宮となっている。
 既に攻略済みの迷宮で全部で10階層、5層を超えた所に安全地帯があり、そこで寝泊りする事も出来る。
 昨日、迷宮の名前を聞き調べた際に出て来たのはこれくらいだ。

「あの迷宮は攻略済みではありますが、殆ど人が寄り付かないのでアルフのレベル上げには最適だと思います」

「確かに迷宮自体に価値ほぼないが、今回の目的はアルフのレベル上げだからな」

 師匠の言葉に対し、エルドさんは納得した様子でそう言った。
 その後、俺と師匠はエルドさんの仕事部屋を出て、師匠が用意していた馬車に乗り込んだ。

「ここから迷宮までそのまま行くから、忘れ物とかは無いか?」

「はい。大丈夫です」

「よし、それじゃ行くか」

 そう師匠は言うと、馬を動かして商会を出発した。
 王都から迷宮まで約五時間程ある為、俺はその時間を有効に使おうといつも見たいに馬車の荷台の中で魔法の訓練をする事にした。
 最近、俺がやってる訓練方法は右手で【水属性魔法】の訓練をして、左手で【風属性魔法】の訓練を行っている。
 これをする事で、二つの属性魔法は勿論の事【並列思考】のスキルレベルも同時に上げられる。

「そんな芸当出来るのは、アルフくらいだろうな……両手で違う魔法を使うなんて、かなり難しい技なんだぞ」

 この訓練方法を見た師匠は、呆れた様子でそう言っていた。
 しかし、既にこのやり方に慣れてきている俺は、特に違和感も感じず三つのスキルレベルを同時に上げている。

「アルフ、一つだけ言っておくとあまり訓練に夢中になるなよ? 迷宮に到着したら、休憩は少し取るつもりだが迷宮にそのまま入るんだからな」

「はい。分かってます。ちゃんと無理のない範囲で頑張ります」

「本当は何もするなって言いたい所だけど、アルフには難しいだろうからな……」

 訓練を頑張ると言った俺に対して、師匠は呆れた様子でそう言った。
 それから一時間程、移動していると急に上空に強い魔力を感じ取った。
 それは師匠も同じで、馬車を停めて臨戦態勢を取った。

「いや、この魔力は敵じゃないな」

 しかし、臨戦態勢をとっていた師匠はそう言い空を見上げた。
 俺も師匠と同じように空を見上げると、そこには見覚えのある黒いワイバーンが飛んでいた。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

処理中です...