上 下
55 / 140
第一章

第55話 【アリスと魔法訓練・3】

しおりを挟む
 翌日、学園では周りの視線を感じつつも、特に何か起こる訳でも無く普通に一日過ごし。
 学園が終わった後、アリスと一緒に馬車で商会に帰って来た俺達はそのまま広場へと直行して、昨日と同じように訓練を始めた。

「今日も二人で訓練しているのね」

 訓練を始めて一時間程経った頃、広場にエリスさんがやって来た。

「エリスさん、お疲れ様です。今日はお休みの日ですか?」

「ええ、久しぶりに買い物をして楽しんできたわ」

 エリスさんは満足気にそう言うと、暫く俺達の訓練を見たいと言って広場に残る事になった。

「アルフ君が訓練好きなのは知ってたけど、アリスちゃんもこんなに訓練を続けられるなんて初めて知ったわ」

「アルフ君のおかげです。会話とかそんなにしてないけど、一緒に訓練をしてるだけで楽しいんです」

「ふふっ、本当にアルフ君と友達になれて良かったわね」

 エリスさんはアリスにそう言うと、結局一時間程一緒にアリスの訓練を見守り続けていた。
 その後、訓練を終えた俺とアリスは一緒に食堂へと行き、夕食を一緒に食べる事にした。

「アリス。二日目だけど、訓練をしてみて何か変わった感じとかしてる?」

「う~ん……何となくだけど、こういうのかな? って言葉には出来ないけど、ちょっと掴んだ感じはするよ」

 アリスからそう言われた俺は、二日目にして感覚を掴み始めてるってのは凄いなと思った。
 そうして食事を終えた後、昨日同様にエリックさんが迎えに来たので、俺はアリスを商会の外まで見送った。
 それから寮に戻ろうと振り返った俺は、タイミングよく階段から降りて来たエルドさんに声を掛けられた。

「アルフ、ちょっと今から時間はあるか?」

「はい。大丈夫ですけど、何かあったんですか?」

「いや、ちょっとアリスの事で少し話を聞きたいと思ってな、儂の部屋に来て貰えるか?」

 そうエルドさんから言われた俺は、エルドさんに着いて行きエルドさんの部屋に移動して来た。

「アルフ。学園でのアリスはどうだ? アリスからは、楽しくなったと聞いているが……」

「そうですね。俺から見た感じ、楽しそうではありますよ。勉強に関しても俺が教えられる所は教えていて、自分が分からずに止まっていたところが解けるようになって勉強の楽しさを感じつつあると思います」

「それは良かった。勉強が嫌いと言っていたから、どうなるか心配していたんだ。アルフが教えるとなっても、克服できるか不安だったが上手く行っているようで安心した」

 エルドさんは俺を学園に通わせる事で、アリスの成績向上をさせるという策が上手く進んでいるようで安心していた。

「後、魔法に関してですが、今の所目立った成果は無いですが。本人曰く、少しだけ魔法の感覚を掴めて来てると言ってました」

「もうなのか? 昨日から訓練を始めたにしては、早すぎではないか?」

「学園で基礎自体は習っていたので、そのおかげで感覚を掴み始めてるんじゃないんですかね? これまでは苦手意識もあり、自分から率先して訓練もしていなかったと言ってたので」

「ふむ……確かに、その可能性はありそうだな。引き続き、アリスの魔法訓練も頼む」

 そう言われた後、アリスの報告会は終わり俺は部屋を出た。
 それから寮に戻り、風呂に入り部屋に戻ってきた俺はベッドに横になった。

「アリスは昨日から魔法の訓練を本格的に始めたと言ってたけど、それで既に感覚を掴み始めてるってやっぱり早い気がするな……」

 ベッドに横になった俺は、エルドさんに言った言葉を思い出しつつ、それにしてもアリスの成長速度は早いような気がする。

「う~ん、人の成長に関しては俺は全く無知だからな……師匠が落ち着いたら、師匠に聞いてみようかな」

 そう俺は考えつつ、今日も一日学園と訓練に体力を使っていたので、そのまま眠りについた。
 翌日、朝食を食べて学園に着くと、アリスは笑顔でとある報告をした。

「アルフ君、【魔力制御】のスキル習得したよ」

 アリスは小声でそう俺に伝え、俺は内容を聞いて驚き叫びそうになった。
 【魔力制御】は、確かにあの訓練方法でも習得は可能だけど、それにしても早過ぎじゃないか?

「アリス。昔から、魔法制御の訓練とかしてた?」

「ううん。全くしてないよ?」

「と、なるとアリスは二日間でスキルを手に入れたって事になるか……」

 俺はその事を聞き、学園が終わったら直ぐにエルドさんに報告するべきだなとそう考えた。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

処理中です...