外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

文字の大きさ
上 下
24 / 140
第一章

第24話 【商会長の怒り・4】

しおりを挟む

「それと別件の話だが、アルフは冒険者にまだなりたいか?」

「冒険者になろうと思ったのは、生活費を稼ぐ為に登録しようとしたんです。ですけど、今はこうして商会に雇ってもらっていますので、特になりたいとは思ってはいません」

「ふむ……儂としては、アルフにもアレンのように冒険者になって、その実力で世界を驚かせてほしいのだが。アルフがしたくないのであれば、仕方ないな……」

「俺としても、アルフが冒険者として有名になる姿を見て見たかったな……」

 エルドさんと師匠は、俺の考えを聞くとそんな風に自分の考えを言った。

「別になりたいと思ってないだけで、冒険者に登録する事は嫌ではありませんよ。冒険者になった方がエルドさんや商会の役に立つなら、登録しますよ」

「儂は別にお主に役に立ってほしくて、冒険者になってもらいたい訳では無いが……」

「まあ、いいんじゃないですか? エルドさんだって、アルフに過剰に与えてる所もあるんですから、お互い様だと思いますよ」

「それを言われると、なんも言えんな……」

 師匠からお互い様と言われたエルドさんは、思う所もあるのか反論は出来なかった。

「取り合えずアルフには、儂の知り合いがおる冒険者ギルドで登録をさせようと思う。アレン、頼めるか?」

「はい、良いですよ」

「よし、アルフの事はアレンに頼んだぞ。冒険者ギルドについては、その間に儂等で進めておく」

 そうエルドさんから言われ俺は、なんだかすごい事が決定してしまったなと部屋を出てからも思っていた。
 その後、明日は冒険者登録をする為、明日行く事になったので早めに寝る事にした。

「師匠。今回もよろしくお願いします」

 翌日、朝食を食べた俺と師匠は修行で使った馬車と馬を用意していたので、そう挨拶をした。
 冒険者登録をするギルドは、王都の隣にある街。
 エルドさん達に見送られながら、俺と師匠は商会を出発した。
 今回、行く予定の隣街は王都から大体馬車で三時間程の所にあり。
 王都程では無いが、そこそこ栄えた街だ。

「着いたぞアルフ」

「はい!」

 前回同様、馬車の中で【土属性魔法】の訓練をしていた俺は師匠の言葉に返事をして、荷台から顔を出した。

「ここが王都から一番近い街、ウィストの街ですか」

「ああ、治安も王都の次に良くて王都とは違って冒険者ギルドも腐ってない場所だ」

 そう師匠から言われた俺は荷台に乗ったままでいると、街に入るために並んでる列とは別の方に師匠は馬車を向かわせた。

「師匠。街に入る列って向こうじゃないんですか?」

「アルフ。俺は冒険者の最高級ランクの冒険者だぞ? それなりの特権を持ってるんだよ」

 師匠はニヤッと笑みを見せながらそう言うと、もう一つの入口の兵士に冒険者カードを見せた。

「アレン様でしたか、どうぞお入りください」

「ああ、待て後ろに俺の弟子も乗ってる」

 師匠の冒険者カードを見た兵士は、直ぐに師匠を通そうとすると師匠は後ろに俺が居る事を伝えた。
 師匠の言葉に俺は荷台から体を出して、身分証を取り出して兵士に渡した。
 兵士は俺の身分証を見ると、慌てて確認をして「大丈夫です」と返してくれた。

「すみませんでした。いつもアレン様はお一人だったので確認を忘れてました。教えていただき、ありがとうございます」

「いいんだ。俺もアルフに前に出てるように言うの忘れてた。じゃあ、またな」

 謝罪をしてきた兵士に師匠は言うと、馬車を動かして街の中に入った。

「さっきの人、師匠と仲が良さそうでしたが知り合いなんですか?」

「ん~、まあ知り合いと言えば知り合いだな。仕事が無い日に一緒に飲むくらいには仲がいいんだ」

「師匠って、本当に仲いい人としかつるまないイメージだったので意外ですね……」

「大体はそうだぞ? 人とつるんでもいい事はあまりないからな」

 師匠はそう言うと、少しだけ悲し気な表情をした。
 多分、昔に人関係で何か問題が起こったのだろう。
 師匠の隠したい過去に無理矢理入るのも失礼だし、これ以上は聞かないでおこう。
 そう俺は思って、話題をこの街について師匠に色々と聞いた。

「この街についてか? アルフも気になったと思うが、どうしてこの街が王都並みに栄えているのか気にならないか?」

「気になります。王都から近いとはいえ、こんなに栄えるって事は何かあるんですか?」

「それはな、この街の冒険者ギルドが真面に機能しているからだよ。馬鹿な冒険者は追い出し、冒険者の教育もちゃんとしている。だから、この街は新人の冒険者にとっても好まれ、冒険者をきちんと育てる冒険者ギルドに信頼している商人も多く、そんな商人達がこの街を発展させて行ってるんだ」

 師匠がそう言うと、確かにこの街には王都以上にお店があるような気がする。

「冒険者ギルドが真面だと、街にそんな変化が現れるんですね」

「国が頑張って街を発展させようとしても、発展に一番力になるのは商人達だからな。そんな商人を蔑ろにした王都の冒険者ギルドは、商人達からの信頼も失い。王都から徐々に人が去っているのが現状だ」

 そんな事を教えて貰うと、丁度この街の冒険者ギルドに到着した。
 馬車を止め俺と師匠は、冒険者ギルドの建物に入る事にした。

「どうした。アルフ。入口で止まって」

「あっ、すみません。ちょっと、追い出された事を思い出してしまって……」

「そうか……ここのギルドは大丈夫だ。安心しろ」

 建物に入ろうとした俺は、入口で足が止まってしまった。
 一度、追い出された過去がある俺は自分でも気づいていなかったが、ギルドが苦手になっていたみたいだ。
 そんな俺に師匠は声を掛けてくれて固まってる俺の手を握り、俺を建物の中まで連れて行ってくれた。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

処理中です...