23 / 140
第一章
第23話 【商会長の怒り・3】
しおりを挟む翌日、俺は朝食を済ませた俺は広場へとやって来た。
今朝、俺の部屋に師匠から手紙が届いており。
その手紙には、今日は一人で訓練してるように書かれていた。
「……これは間違いなく、昨日の話が原因だよな」
訓練前の準備運動をしながら、俺は昨日の事を思い出した。
「食堂でもその話題で持ちきりだったし、かなり大事になりそうな予感がする……」
いや、でもただ俺が追い出されたからといって、冒険者ギルドといざこざが生まれるなんて事は……。
「無いと思いたいな~。エルドさん、なんだか俺の事を特別に扱ってくれるからな……」
命の恩人、と俺は特にそんな事は重要に思ってない。
しかし、エルドさんは自分を助けた俺に対して色々としてくれている。
仕事は用意するからと言われてずっと待っているが、今の所全く指示をされていない。
多分、あれは俺を商会で雇ってくれる建前で言っただけだと今では分かる。
「……取り合えず、色々と考えてたら集中できないから一旦忘れて、訓練に集中しよう」
両手で顔を叩き、自分に活を入れ訓練を続けた。
そうして、集中して訓練をすると【土属性魔法】のスキルレベルが1上がった。
「はぁ~、一日訓練して疲れ切った後に入る風呂が一番気持ちいいな~……」
秘密の訓練場でも欠かさなかった風呂。
謹慎生活中やそれ以前は、特に風呂が好きでも嫌いでも無かったが。
家を追い出され、商会の寮で暮らすようになってからは好きになっている。
「あれ、師匠? どうしたんですか、食堂の前で立ってて誰か待ってたんですか?」
「アルフを待ってたんだよ。まだ飯に来てないって聞いたから、ここで待ってたんだ」
「えっ!? す、すみません。そんな事を知らずにお風呂に入ってました!」
「いいよ。俺が急に来たからな。それより、飯を食べた後時間はあるか? アルフを連れて来るようにと、エルドさんから頼まれたんだ」
師匠はそう言うと、俺は「飯を食べる前でも行けますよ?」と言った。
「いや、用事が直ぐに終わるか分からないから、先に食べて来るようにエルドさんが言ったんだ。それに、俺もまだ食べてないしな」
「……分かりました。エルドさんを無駄に待たせるのもいけませんから、食べに行きましょう」
それから俺は師匠と一緒に食堂に入り、おばちゃん達に料理を頼み夕食を食べた。
その後、食べ終わった俺は師匠と一緒にエルドさんの仕事部屋に向かった。
「すまんな、アルフ。突然、呼び出してしまって」
「アルフ君。こんな時間に呼び出してごめんなさい」
部屋に入ると、仕事部屋にはエルドさんとエリスさんが待っていた。
そして部屋に入った俺は、エルドさん達が座ってるソファーの向かい側のソファーに座った。
「アルフを呼び出した理由だが、今回の一番の被害者であるアルフには話しておこうと思って呼んだのだ」
「ひ、被害者って冒険者ギルドから追い出されただけですよ?」
被害者という言葉に俺は驚き、そう言うとエリスさんは「それが問題なのよ」と言われた。
「アルフ君も突然言われて驚いたと思うけど、本来冒険者ギルドではスキルの数で登録を拒否するなんて事は出来ないのよ。昔、それで一度騒ぎになって冒険者ギルドはスキルの数や強さ等で、優劣を決めるのはしないという取り決めが出来たの」
「えっ、でもスキルが一つで俺は追い出されましたけど……」
「調べたら、それは受付の独断のようだったわ。普通の人は、最低でもスキルが三つあるけど、アルフ君は一つだったでしょ? 普通以下の人が来て馬鹿にしようと考えたんでしょうね」
そうエリスさんが言うと、話を聞いていたエルドさんは眉間に皺を寄せた。
「それで今回の出来事を踏まえて、ルクリア商会は会議を行った。現状、アルフと王都の冒険者ギルドには溝が出来ているのは確かで、儂等としては王都の冒険者ギルドを取るよりも、アルフの今後を考えた方が良いという結論に至った」
「えっ、それってどういうことですか?」
「言葉の通り、儂等は冒険者ギルドとの契約を切る事にした。今までは儂等もアレンや、商会の者達が冒険者として活動をしているから冒険者ギルドと契約をしていた。だが、アルフにそんな対応をした受付を雇っている冒険者ギルドと、儂は契約を続けたくないと思ったんだ」
「ちょ、ちょっと待ってください! 俺が受付で酷い対応をされたからって、何か大事な事が決まってないですか!? 俺、別に馬鹿にされただけなので、冒険者ギルド事態に処罰を下すっておかしいですよ!?」
そう俺は立ち上がり、自分の気持ちを言った。
「アルフは優しいな……しかし、これはアルフのその優しさでどうにかなる問題ではない。商人の間では、王都の冒険者ギルドについて以前から問題視されているんだ」
「冒険者ギルドは冒険者の育成もまともにせず、傷だらけの素材を品質を偽ったりして商人に売りつけたり、依頼料を高く設定して商人を馬鹿にする態度をとって来たのよ」
「えっ、そんな事を冒険者ギルドがしたんですか!?」
「それがしたのよ。ルクリア商会も被害を被った商会の一つだけど、商会の人達が冒険者としても活動をしているから我慢していたのよ。だけど今回のアルフ君の一件で、我慢の限界が来たエルド様は完全に王都の冒険者ギルドとの契約を切る事にしたの」
その話を聞いた俺は、俺の予想よりも遥かに王都の冒険者ギルドは色々とやらかしていたんだなとそう感じた。
1,121
お気に入りに追加
2,181
あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる