転生でゆるく生活したい

ぱゆり

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フラグってたまに目の前にいきなり出てこない?

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洞窟のような空間

「素晴らしい。素晴らしいぞ!」
男は笑っていた。
「もう少しだ。彼女の願いが。もうすぐ、もうすぐ完成する!!」
男は、自分の作り上げたものを見る。
「あと少しでそこから出してやろう。だが今少し待ってくれ。お前が最強でなければ。圧倒的なまでの力がなければ世界を滅ぼすという私の目的が果たせない。だから、出たいだろうが今少し待っていてくれ。」
男は、そんな言葉を告げる。しかし、相手からの反応はない。
「あと少し、何かかが足らぬだけなのだ。それさえ分かればようやく。ようやく彼女の願いを叶えることができる。
 あの時何もしてやれなかった私の償いを。彼女と交わした約束を叶えるために。」
男は信じ続ける。それが彼女のためになるのだと。
そして、男は何かを呟きながら、その場から消えた。
さっきまで男がいた部屋の中央にある機械の中で、男が話しかけていたものは、虚ろな目を彷徨わせていた。


所変わって。



「ここ・・・どこ?」
僕は秘密基地の通路を掘っていたはずだが、突然視界が白くなったからやばいと感じて後ろに飛んだ。
うん、ここまでは覚えてる。
「空洞というには人工的な作りだよなぁ、この壁とか。」
しかしどういうわけか、嫌な予感がする。フラグ建築士なんてものにはなりたくないのだが。
う~ん、どうやってここ出よう。
っ!攻撃!?そう気付いた時、僕の体は横に跳んで回避していた。
「おかしいな。警戒を緩めてはないけど、衰えたーには若いしなぁ。」
そう言いながら気配のする方を見る。するとそこには見たことがない魔物がいた。
「なんだ・・・こいつ?」
見た目は前世のキメラのようなものだろうか?しかし全体的に違うと素人目にも分かるほど別々の生き物を切ってつぎはぎにつなげたような感じで不気味だ。
そいつは視線をこちらに向けて飛びかかって来た。
僕は後ろに走り出し、魔力探知や身体強化も使って偶然見つけた通路に逃げた。
ただ、魔力を索敵や調査の為に放出してしまっているので見失うとは思えない。
それどころか入り組んでいるようにカクカクしてるくせに一本道のようで前からも同じようなキメラが来て後ろに至っては数数えるのが嫌になるくらいの団体様である。
どうやら夢中で部屋の前を通り過ぎていたのか、気づけばやばい数だ。
「前のこいつ倒さないとダメか。」
身体強化の魔力を上げて接近、相手は何も考えてないのか飛びかかってきた。
自分の腕に魔力を集中して貫いていくイメージを持って、腕を前に突き出し魔力を一点に放出した。
魔力は、熱線となってキメラを焼却した。
少し規模が大きかったが後ろから敵が来るので急いで走り続ける。
それから少しして大きな部屋に出た。そしてその部屋の真ん中には大きな竜の像があった。
ゆっくりと動き出す竜の像。
「マジかよ。」
少し竜の顔が後ろに引かれ、やばいと思って思いっきり竜の右側に跳んだ。もちろん身体強化して。
竜は顔を前に出し口から光を出した。
そして、ちょうど命中した通路は熱で溶けて一部消滅していた。
竜は体をこっちに向けて爪を振り下ろしてきた。
それを避けると僕は前に詰めた。
魔力で強化して竜の腹部分を殴った。
甲高く金属同士を打ちつけたような音が響く。
しかし竜は気にした様子もなく攻撃してくる。
このままじゃジリ貧になってやられる。どうすっかなー。
考えて一つだけ案があるがすごく痛いと思うのであまりやりたくない。
しかし、ほかに案が思いつかないし魔法だけで倒せる気もしなかった。
竜の爪が体を擦り、疲労やダメージが蓄積しているのが嫌でも分かる。
僕は、最後の賭けをすることに決めた。
駆け出す。攻撃の回避。前に、竜に反撃するために。前へ。
懐に入る、集中、集中、集中。踏ん張る部分に、殴る部分に、体の無事は生きていればそれでいい。特に右腕に魔力を集中させろ!
踏み潰そうと足が落ちてくる。好都合だ。落ちてくる足を避けて駆け上がり、竜の頭から天井に向かって跳んでいく。体を回し、天井に向けて着地する。天井を蹴り出し、竜に向かって落ちていく。
天井から落ちてくる僕に向かって口を開きブレスを吐こうと魔力が集まる。
竜が光っぽいブレスを吐く前に突き出していた右の拳が竜の頭に当たり、爆発音が響き、僕は吹っ飛ばされた。その後壁に激突し、意識が途切れた。

さっきまで竜とジクルドが戦っていた場所は、竜は頭部をなくして倒れており、焦げ跡を残して静まり返っていた。
しかし、そこに足音がし始めた。
竜が立ち塞がり通れなかった道から一人の男が姿を現した。
入ってきた男は呟く。
「ほう?竜の頭部を一撃で粉砕したか。そして、多大な魔力とそれによるブレスの爆発に巻き込まれて片腕が焼けたな。だがよくあの爆発を受けてこの程度で済んだものだ。しかし死にかけだな、仕方ない。」
男から光が溢れ、ジクルドを包んだ。
すると、顔色がましになり、大まかな傷だけはある程度消えていた。
「応急処置はこれで良いだろう。しかしこれ以上は、私ではどうしようもないな。さて、奥に運ぶか。」
男は、そう言ってジクルドを担ぐと自分が出て来た道の階段を下りていった。

目が覚めた。知らない天井だ。見慣れた木造の屋根はなく、平らな壁が目の前にある。
慌てて体を起こす。
「うえっ!?ここは!?あいつは倒せたのか!?また、・・・死んじゃったのかな?僕は。」
右を見ると炭化した腕があった。肩は、かろうじて無事か。
「あんなことしてこれか。どうすっかなーこれから。てか僕生きてるのか?」
自分で込められるほぼ全魔力注ぎ込んで打ったのだからこうなってあたりまえ、むしろ軽い方かな。
不思議だ。たぶん見えてなかったら、右手までちゃんとあるとおもってたろうな。あんまり、分からないもんだなぁ。
「お前さん、あまり驚かんな。」
「はっ?うわっ!?」
「なんだこっちには驚くんか?変なガキだな。」
いや、いきなり目の前に知らないおっさん出てきたら驚くだろう。
「まずは、迷宮クリアおめでとうと言おうか。」
「迷宮?ここが?」
そんなとこか、と今は思えるけど、迷い込んで無我夢中だったからどうしようもないな。
「ああ、わかりにくくするために転移系にしたがな。」
勝手にいろいろ喋るおっさん。やれ転移陣を設置に苦労しただの、魔物餌付けするのが楽しかっただの話続けること。
何時間?そんぐらい聞きっぱなしだったと思う。固まってたよ、その間ずっと。
「でーそんなこんなでクリア出来たお前さんに渡したいものがあるわけだが。単刀直入に言うぞ?
 お前さん、もうちょい強くなってくれねぇか?渡した後でいいからよ。いや、拒否権全くないけどな?」
最後楽しそうに言ってきてちょっとイラっとした。
強くなれって言われても、正直言って姉さんで手一杯なんだよね。
「じゃあやるぞ。」
「えっ!?ちょっーーー」
そして、僕の何気に長い修業が始まった。
はあ、ゆっくりしたい。
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