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逆行

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「私はタイムトラベルしてきた。私はおじいちゃんの孫。ケイタはおじいちゃん。」

孫!?え、孫って何!?どういうこと?さすがに突飛すぎて混乱してしまう。

「私の本名は八代ユキ。岸本っておじいちゃんのお母さんの旧姓って聞いてたけど、合ってる?」

ユキは岸本ユキと名乗っていた。そして、俺の母の旧姓は岸本。さすがにそんなことをユキが知るはずもなく、信憑性は増す。既に同じ境遇のミナもいるし、2人いたら3人いてもおかしくないか。リープとトラベルではまた違うが。

「2019年から感染症が流行ったんだよね。その当時は外出規制があったりして大変だったって聞いた。私が産まれるずっと前だけど。」

それだけ聞いても当然、分かる人にしかわからない。ミナには何のことかもわからないだろう。確かに、これは間違いなく、俺と同年代以降から飛んできているという証明にはなる。

「ってことは、ユキ、おばあちゃんの名前は、お父さんやお母さんの名前はわかるのか!?」

そうだ、彼女が俺と血の繋がった孫だというのなら、当然知っているはず。俺が忘れた記憶を取り戻すきっかけにもなるだろう。

「お父さんの名前は___、お母さんの名前は___で、おばあちゃんの名前は___。」

「なんて?名前のところが聞こえない。」

「だから、お父さんの名前は___、お母さんお名前は___で、おばあちゃんの名前は___。」

やはり聞こえない。口の動きもなぜかよく見えない。人に教えてもらうことはできないのか。

「ミナは聞こえてるんか?」

「聞こえてるよ。___、___、___だろ?」

人を介してもダメと。謎ルールだが仕方ないな。でも、将来に影響があるからこそ聞こえないと思うと、きっとユキが言っていることは本当なんだろう。

「おじいちゃんは家系的にタイムリープしやすいらしい。私はリープじゃなくて、年齢はそのままで時代を飛んできた。」

ドラ〇もんの世界が現実になったのか。

「タイムリープしやすい家系っていうのがあるから、タイムトラベルもできたらしい。」

ほー。そういうもんなのか。まぁこれはなんとも言えないな。

「なんでもっと早く言わへんかったんや?」

「あまり介入したら歴史が変わる。でも知らない人と付き合うと私が消えちゃうかもしれないから仕方なかった。」

なるほど。筋はそれなりに通ってそうか。

「おばあちゃんはこの高校におるか?」

「___よ。」

「これも聞こえへんのか。」

でもまだユキはここにいる。俺が失った記憶が戻るかどうかはわからないが、ユキがいる未来は消えていない。そして、ユキが邪魔をしたということは、アズサとミナは違う。アズサのときも妨げるような動きをしていた。そもそも、俺が知っている未来でもアズサはタクミと付き合っていたんだから違うだろう。会った時点ではもう少し将来のことも覚えていたし、彼女が相手でないのは確定だ。

「おじいちゃんは好きにしてたら私がいる未来に行くんだと思ってた。けど、昔聞いてたおじいちゃんの印象と随分違ったからちょっと危ないと思った。」

「ありがとう。やっぱり忘れちゃいけない記憶やったんやな。最近は本当に何も思い出せなくなって、それならもういいかって思い始めてた。でも、お前が孫なんやったら、やっぱり元の記憶を追わんとあかんな。」

「せっかくいい物件を見つけたと思ったのにな。もうちょっとだったのに残念。」

ミナは本音か嘘かわからないようにおどけて発言をする。

「ミナ...」

なんと声をかければいいのかわからない。
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