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万能

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20人でバスに乗り込むとバスは貸し切り状態だ。バスはゆっくりと山の中へと入っていく。いつも山道を通るバスはすごいコントロールをしているなと感心する。バスに揺られること20分、目的のキャンプ場近くのバス停に降り立つ。ここからは徒歩5分程度だ。

みんな食材を持っているため、クーラーボックスを抱えていたり、わりと大荷物だ。暑いのは暑いが、それでも山に登る前より涼しいので、歩きやすい。というか、テンションが上がっているので、あまり気にならない。

オートキャンプ場にたどり着き、マサキが受付で手続きを行い、必要な網や炭をここで仕入れる。参加人数22人に対して火を起こす場所は5つ確保していたらしい。一つあたりを4-5人で囲む計算だ。十分だろう。

「マサキ、遠慮せずにリーダーシップとってな。多分そんな経験があるやつもおらんやろから、指示出して。」

「了解。じゃあ、適当に5つのグループに分かれて火をつけていこっか。着火剤は家から持ってきたからこれ使って。炭の下に固形の着火剤を置いて火をつけて、その上に炭を置いて、あとはしっかり炭に火が付くまで空気を送っていくよ。」

各々が、炭と着火剤をもって作業に取り掛かる。

「手の空いてる人は食材の準備をしとこうか。切らなあかん食材を持ってる人はあっちのほうに流しと包丁があるからそこで処理しよう。」

おぉ。マサキの独壇場だな。おかげでみんなぎこちないながらも、それぞれがやるべきことをみつけて動き始めた。

「マサキ、これ、炭に火ぃついてる?」

「マサキくん、こっちも見てー。」

火おこしは俺もやったことはあるが、マサキのほうがよさそうだ。ここは任せて俺は食材の下処理のほうにいこう。流しでは女子が中心になって包丁で野菜を切っている。キャベツ、キノコ類、ジャガイモ、サツマイモ、トウモロコシ、ピーマン、玉ねぎ、長ネギ…各自持ち寄りだとすごい種類になっているな。肉はさすがに塊で持ってきているやつはいないようだ。

俺は手間のかかるジャガイモを取ることにした。ジャガイモは自分が好きだから処理には慣れている。誰かがジャガイモを好きでジャガイモを使った料理を作っていたような…と、考えていたらカオリがこちらを見ていた。

「ケイタくん、料理もできるの?」

「あぁ、まぁそれなりに。」

「そういえば、料理部とか行ってみたいって部室でも言ってたね。しかし、かなりうまくない?」

「そうか?こんなもんちゃうか?」

周りの女子たちがささやき合っている。

「…本当に何でもできるのね。」

「スペックが高いって思ってたけど、そつがないわね…女にとってはここまで来られるとハードルが高いわ。」

野菜の処理が終わり、火元のほうに戻ってみると、炭もいい感じに火が付き始めたようだ。そうこうしている間に、アズサとタクミも合流した。タクミの様子がおかしいな。もしかして…

「タクミ、アズサとなんかあった?」

「い、いや、なんもないぞ!」

怪しすぎるだろう。

「うんうん、で、どうしたん?」

「いやいや、実はな…ってなんでやねん!」

ノリツッコミはこの頃からあるんだな。

「で?」

タクミは観念して話し始める。

「…好きなヤツがいるかどうか聞いた。」

「ほう、それで?」

「いるって。」

「んで?」

「え、それだけやけど。」

それだけかーい!心のなかで激しくツッコむが、タクミのような純粋培養では仕方がないか。何か踏み込もうとしただけいいほうか。というか、アズサ好きなヤツってまだ俺ってことか?自意識過剰というわけではないと思うが、やけにミナと張り合っていたしな。

「まぁ、とりあえずみんなに混ざっていこーぜ!そろそろ火もいい感じについてきたみたいやしな。」

ヨウスケがいるテーブルに混ざる。

「おー、タクミ!ようやく来たか。ちょうど今から焼くとこやからちょうどええな。」

そして、肉を焼いていく。このテーブルにはヨウスケ、タクミ、コウキ、俺。あれ?男しかいねぇ。しかも俺以外は運動部系。つまりは肉だ。肉が足りない。いつから肉があまり食べられなくなっただろうか。しかし、今は違う。たくさん食べられるぞ!

俺たちは存分に肉をむさぼり食う。あれ。主旨が変わってないか?いや、そもそもここでの目的はただ、充実した夏休みを過ごすためにイベントを入れたかっただけだから、楽しければこれでもいい。

ある程度食べたら他のテーブルにも顔を出し、交流をしていく。半分ぐらいは今回の人生で絡んだことのないやつらだしな。こうやって顔をつないでおくことが後々役に立つこともあるかもしれない。ついつい打算が働いてしまうのは、ちょっと悲しい習性だと俺は思った。
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