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花火

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アズサたちと入れ替わりで買い出しに行く。とにかく水分を買っておかないとまずい。人も多くなり始めているし、手早く欲しい物を買って戻らないと人混みに捕まって時間がかかってしまう。

コウキはユキに興味があるようだ。マサキとカオリはいつものセットだし、結果あぶれた俺は先導して歩く。祭りの空気、屋台の匂い、仕事や生活に追われずに穏やかな気持ちで見られなくなったのはいつからだっただろう。そういった意味でもこの時期はやはり貴重だ。

焼きそばと、たこ焼き、あとは飲み物っと。並ぶ必要があったので、それぞれ、用が終わったら花火を観る場所に戻ることにした。みんなは買いたい物が買えただろうか。たこ焼きが結構待たされたため、多分俺が一番遅くなっただろう。

帰ろうとしたその時、PHSが鳴った。鳴らしてきたのはアズサだ。遅くなったから心配させたかな。俺は電話に出る。

「おぅ。もうすぐ戻るで。」

「あ、うん、探しに出てきちゃったんやけど、どこらへん?」

「あー、いいよ。人も多いし戻ってて。」

「えっと、いや、そう、私が迷っちゃって!」

そう言われたら放っておくわけにもいかない。

「何の屋台が見える?」

「焼き鳥と焼きともろこし。」

「わかった。そこ動くなよ。」

電話を切ってその場所へ向かう。すぐ近くだ。幸い人がかなり多くなっている。自意識過剰かもしれないが、今何かややこしいことを言われることはないだろう。ほどなく、アズサと合流する。

「おぅ。じゃあみんなのとこに戻るか。」

「あ、うん。ごめんね。」

俺はアズサの前を歩いてみんなの元へ向かう。並んで歩くことはできないぐらい人が増えている。

「だいぶ人が増えてきたな。」

「そうやね。えっと、浴衣、どうかな?」

聞かれたら答えなくちゃなるまい。チラッと後ろを振り返って答える。

「うん、似合ってるよ。かわいい。」

「ありがと。なんか、慣れてる?」

「ははっ!まぁそうかもな。」

何せ2回り以上経験値が違いますからね。人も多いため会話はその程度で、人の流れに沿いながら、ようやく元の場所に戻った。それでもまだ7時だ。花火が上がり始めるまであと30分。周囲は薄暗くなりはじめているが、まだ真っ暗にはならない。

「いやー、並んでて遅くなったわ。」

みんな思い思いに買ってきたものを食べながらわいわいと話をしていた。やっぱみんなと来られてよかったな。

「おっせーよ!何買ってきたん?お。焼きそばええな。ちょっと頂戴。」

タクミとも随分仲良くなったもんだ。タクミの持っていたフライドポテトと引き換えに焼きそばをちょっと食べさせる。あー、酒も飲めたらよかったんだけどな。

みんなで話していたら、花火が上がり始めた。もうそんなに時間が経ったのか。メイン会場から離れてはいるが、ほぼ真上に花火が上がっているように感じる。こんなに花火が近かったんだな。花火が上から迫ってくる感じだ。

あぁ、最後に一緒に花火を観たのはいつだったか。だったか。あれ?一体誰と花火を観たんだ?

「どうしたの?大丈夫?」

アズサはいつの間にか隣にいて声をかけてきた。

「あぁ、すまん。ちょっと考え事。」

「ふふっ。なんで花火観ながら考え事なん?」

「ははっ。そやな。花火を楽しまんとな。」

先程よぎった考えを外に押しやって、花火に集中する。花火はどんどん激しさを増し、打ち上がった後の煙でけぶって花火が見えないほどだ。花火と一緒だ。俺たちはこの一瞬をしっかり楽しんで生きていかなきゃいけない。すぐに消え去ってしまうんだから。

「すっげーな!花火がめっちゃ近いぞ!」

そう叫んでいるのはリクだ。みんなも同意している。喜んでもらえて何よりだ。そして迎えたクライマックス色とりどりの花火が咲いては消える。花火の音で周りの声はあまり聞こえない。

マサキとカオリは近づいてなにか話し合っている。過去にはそんなことは無かったはず。ここにも俺の影響が出ている。でも、リナとリクは前の通りだ。俺に近いほどに影響が大きくなっているとも考えられる。

そして、アズサも。チラッと隣を見ると、目が合った。俺はすぐに花火に視線を戻す。花火はそろそろ終わる。

「ケイタくんが好き!」

アズサは突然花火に負けない音量で俺に想いを伝えてきた。
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