38 / 91
花火
しおりを挟む
アズサたちと入れ替わりで買い出しに行く。とにかく水分を買っておかないとまずい。人も多くなり始めているし、手早く欲しい物を買って戻らないと人混みに捕まって時間がかかってしまう。
コウキはユキに興味があるようだ。マサキとカオリはいつものセットだし、結果あぶれた俺は先導して歩く。祭りの空気、屋台の匂い、仕事や生活に追われずに穏やかな気持ちで見られなくなったのはいつからだっただろう。そういった意味でもこの時期はやはり貴重だ。
焼きそばと、たこ焼き、あとは飲み物っと。並ぶ必要があったので、それぞれ、用が終わったら花火を観る場所に戻ることにした。みんなは買いたい物が買えただろうか。たこ焼きが結構待たされたため、多分俺が一番遅くなっただろう。
帰ろうとしたその時、PHSが鳴った。鳴らしてきたのはアズサだ。遅くなったから心配させたかな。俺は電話に出る。
「おぅ。もうすぐ戻るで。」
「あ、うん、探しに出てきちゃったんやけど、どこらへん?」
「あー、いいよ。人も多いし戻ってて。」
「えっと、いや、そう、私が迷っちゃって!」
そう言われたら放っておくわけにもいかない。
「何の屋台が見える?」
「焼き鳥と焼きともろこし。」
「わかった。そこ動くなよ。」
電話を切ってその場所へ向かう。すぐ近くだ。幸い人がかなり多くなっている。自意識過剰かもしれないが、今何かややこしいことを言われることはないだろう。ほどなく、アズサと合流する。
「おぅ。じゃあみんなのとこに戻るか。」
「あ、うん。ごめんね。」
俺はアズサの前を歩いてみんなの元へ向かう。並んで歩くことはできないぐらい人が増えている。
「だいぶ人が増えてきたな。」
「そうやね。えっと、浴衣、どうかな?」
聞かれたら答えなくちゃなるまい。チラッと後ろを振り返って答える。
「うん、似合ってるよ。かわいい。」
「ありがと。なんか、慣れてる?」
「ははっ!まぁそうかもな。」
何せ2回り以上経験値が違いますからね。人も多いため会話はその程度で、人の流れに沿いながら、ようやく元の場所に戻った。それでもまだ7時だ。花火が上がり始めるまであと30分。周囲は薄暗くなりはじめているが、まだ真っ暗にはならない。
「いやー、並んでて遅くなったわ。」
みんな思い思いに買ってきたものを食べながらわいわいと話をしていた。やっぱみんなと来られてよかったな。
「おっせーよ!何買ってきたん?お。焼きそばええな。ちょっと頂戴。」
タクミとも随分仲良くなったもんだ。タクミの持っていたフライドポテトと引き換えに焼きそばをちょっと食べさせる。あー、酒も飲めたらよかったんだけどな。
みんなで話していたら、花火が上がり始めた。もうそんなに時間が経ったのか。メイン会場から離れてはいるが、ほぼ真上に花火が上がっているように感じる。こんなに花火が近かったんだな。花火が上から迫ってくる感じだ。
あぁ、最後に一緒に花火を観たのはいつだったか。誰とだったか。あれ?一体誰と花火を観たんだ?
「どうしたの?大丈夫?」
アズサはいつの間にか隣にいて声をかけてきた。
「あぁ、すまん。ちょっと考え事。」
「ふふっ。なんで花火観ながら考え事なん?」
「ははっ。そやな。花火を楽しまんとな。」
先程よぎった考えを外に押しやって、花火に集中する。花火はどんどん激しさを増し、打ち上がった後の煙でけぶって花火が見えないほどだ。花火と一緒だ。俺たちはこの一瞬をしっかり楽しんで生きていかなきゃいけない。すぐに消え去ってしまうんだから。
「すっげーな!花火がめっちゃ近いぞ!」
そう叫んでいるのはリクだ。みんなも同意している。喜んでもらえて何よりだ。そして迎えたクライマックス色とりどりの花火が咲いては消える。花火の音で周りの声はあまり聞こえない。
マサキとカオリは近づいてなにか話し合っている。過去にはそんなことは無かったはず。ここにも俺の影響が出ている。でも、リナとリクは前の通りだ。俺に近いほどに影響が大きくなっているとも考えられる。
そして、アズサも。チラッと隣を見ると、目が合った。俺はすぐに花火に視線を戻す。花火はそろそろ終わる。
「ケイタくんが好き!」
アズサは突然花火に負けない音量で俺に想いを伝えてきた。
コウキはユキに興味があるようだ。マサキとカオリはいつものセットだし、結果あぶれた俺は先導して歩く。祭りの空気、屋台の匂い、仕事や生活に追われずに穏やかな気持ちで見られなくなったのはいつからだっただろう。そういった意味でもこの時期はやはり貴重だ。
焼きそばと、たこ焼き、あとは飲み物っと。並ぶ必要があったので、それぞれ、用が終わったら花火を観る場所に戻ることにした。みんなは買いたい物が買えただろうか。たこ焼きが結構待たされたため、多分俺が一番遅くなっただろう。
帰ろうとしたその時、PHSが鳴った。鳴らしてきたのはアズサだ。遅くなったから心配させたかな。俺は電話に出る。
「おぅ。もうすぐ戻るで。」
「あ、うん、探しに出てきちゃったんやけど、どこらへん?」
「あー、いいよ。人も多いし戻ってて。」
「えっと、いや、そう、私が迷っちゃって!」
そう言われたら放っておくわけにもいかない。
「何の屋台が見える?」
「焼き鳥と焼きともろこし。」
「わかった。そこ動くなよ。」
電話を切ってその場所へ向かう。すぐ近くだ。幸い人がかなり多くなっている。自意識過剰かもしれないが、今何かややこしいことを言われることはないだろう。ほどなく、アズサと合流する。
「おぅ。じゃあみんなのとこに戻るか。」
「あ、うん。ごめんね。」
俺はアズサの前を歩いてみんなの元へ向かう。並んで歩くことはできないぐらい人が増えている。
「だいぶ人が増えてきたな。」
「そうやね。えっと、浴衣、どうかな?」
聞かれたら答えなくちゃなるまい。チラッと後ろを振り返って答える。
「うん、似合ってるよ。かわいい。」
「ありがと。なんか、慣れてる?」
「ははっ!まぁそうかもな。」
何せ2回り以上経験値が違いますからね。人も多いため会話はその程度で、人の流れに沿いながら、ようやく元の場所に戻った。それでもまだ7時だ。花火が上がり始めるまであと30分。周囲は薄暗くなりはじめているが、まだ真っ暗にはならない。
「いやー、並んでて遅くなったわ。」
みんな思い思いに買ってきたものを食べながらわいわいと話をしていた。やっぱみんなと来られてよかったな。
「おっせーよ!何買ってきたん?お。焼きそばええな。ちょっと頂戴。」
タクミとも随分仲良くなったもんだ。タクミの持っていたフライドポテトと引き換えに焼きそばをちょっと食べさせる。あー、酒も飲めたらよかったんだけどな。
みんなで話していたら、花火が上がり始めた。もうそんなに時間が経ったのか。メイン会場から離れてはいるが、ほぼ真上に花火が上がっているように感じる。こんなに花火が近かったんだな。花火が上から迫ってくる感じだ。
あぁ、最後に一緒に花火を観たのはいつだったか。誰とだったか。あれ?一体誰と花火を観たんだ?
「どうしたの?大丈夫?」
アズサはいつの間にか隣にいて声をかけてきた。
「あぁ、すまん。ちょっと考え事。」
「ふふっ。なんで花火観ながら考え事なん?」
「ははっ。そやな。花火を楽しまんとな。」
先程よぎった考えを外に押しやって、花火に集中する。花火はどんどん激しさを増し、打ち上がった後の煙でけぶって花火が見えないほどだ。花火と一緒だ。俺たちはこの一瞬をしっかり楽しんで生きていかなきゃいけない。すぐに消え去ってしまうんだから。
「すっげーな!花火がめっちゃ近いぞ!」
そう叫んでいるのはリクだ。みんなも同意している。喜んでもらえて何よりだ。そして迎えたクライマックス色とりどりの花火が咲いては消える。花火の音で周りの声はあまり聞こえない。
マサキとカオリは近づいてなにか話し合っている。過去にはそんなことは無かったはず。ここにも俺の影響が出ている。でも、リナとリクは前の通りだ。俺に近いほどに影響が大きくなっているとも考えられる。
そして、アズサも。チラッと隣を見ると、目が合った。俺はすぐに花火に視線を戻す。花火はそろそろ終わる。
「ケイタくんが好き!」
アズサは突然花火に負けない音量で俺に想いを伝えてきた。
1
お気に入りに追加
207
あなたにおすすめの小説
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる