37 / 91
穴場
しおりを挟む
花火大会の日。働きはじめてからはしばらくはゆっくり見に行く日ヒマもなく、ただ人出が多くて近隣に近寄れなくなるため、正直邪魔なイベントだと思って冷めた目で見ていた時期もあった。歳を取るに連れ、それを運営する人たち、周囲に与える経済効果などを考えるといいもんだと思うようになった。
それでも、行くと帰るのに苦労するのもよくわかっているため、あえて行こうとは思わなかった。それでも今、俺はこの高校1年では一回限りの花火大会(他の花火大会はあるが、この花火大会という意味)に行かないという選択肢はなかった。それに、実家へなら最悪歩いて帰ることができる。1時間も歩けば着くだろう。
待ち合わせは高校の前にした。メイン会場に近く、駅からも遠くないし、わかりやすい。学校は夜閉まってしまうし、自転車を置く場所がないため、結局来るときは走ってきた。歩いて1時間だが、軽く走れば30分程度だ。待ち合わせ時間は17時。花火自体は19時30分からだがこれぐらいから動き始めないと、メイン会場に近づくことが難しくなる。逆に言うと、メイン会場に近づきすぎると帰るときは大変になるのでその塩梅が難しい。
待ち合わせ時間ほぼちょうどに着くと、既に俺以外揃っていた。アズサ、ユキ、マサキ、カオリ、リナ、タクミ、ヨウスケ、コウキ、リクに俺を加えてちょうど10人だ。
「すまん、ちょっと遅くなった。」
「いや、時間通りやろ。ってかすげぇ汗やぞ!?」
答えたのはタクミ。そう、誤算だったのは今は8月初旬、30分も走ればどうなるか。汗まみれになる。当たり前のことだ。
「自転車止める場所ないと思って走ってきたら失敗したわ。」
自販機を探して飲み物を買わねば。よく見てみると、アズサ、リナは浴衣、コウキは甚平を着ていた。それっぽくていいね。
「みんな揃ってるみたいやし行くか。遅くなると動きにくくなるからな。」
「どこに行くん?メイン会場に入ったら帰るの大変やってお母さんから聞いたよ?」
そう言ったのはアズサだ。
「まぁ地元の人が使う穴場的なところや。それでも人は多いけどな。でもメイン会場に行くよりはマシやと思うぞ。ちょっと遠いっちゃ遠いけど。」
そう、実家にいた頃はそこから何回か観たことがあるが、ほぼ真上に観えるのに比較的込み具合はマシというまさに穴場だ。途中の自販機でジュースを買う。この頃の自販機のジュースは110円がスタンダードだ。100円はもうちょっと前か。一息に飲み干してしまう。河川敷に近づく前にもう一本いるな。
メイン会場から遠ざかったところで、狭い道だが、河川敷へと続く道がある。そこから堤防に登り、河川敷に降りきらずに、堤防の斜めになっているところ。ここがポイントだ。
穴場を取るには十分早い時間に出ていたと思ったが、まぁまぁ人はいた。それでも10人の団体が座れるんだ。上等だろう。さて、ここにもすぐに出入りができなくなる。
「出店とかで買うもんあったら今のうち買って来て花火の時間まで待とか。すぐにここらへんも混みだすからな。買い出しは交代で半分ずつな。」
俺は持ってきていたレジャーシートを広げて置く。
「動きづらくなるから浴衣着てる人アズサとリナは先に行ってきたほうがええかもな。他は誰が行く?」
手を上げたのはタクミとヨウスケとリクだ。
「じゃあ行ってくるね。」
アズサ達はそう言って出店に向かっていく。残ったのは、ユキ、コウキ、マサキ、カオリ、俺だ。
「まだ6時過ぎやのにめっちゃ増えてきたな!5時は早すぎるやろと思ってたけどちょうどいいぐらいやったんかもな。ケイタ、この花火結構来てんのか?」
尋ねてきたのはコウキ。
「まぁ、昔な。」
「昔って小学生とかか?」
「そ、そうそう、兄貴に連れられてな。」
しまった。ちょっと高校生から昔だと年齢的に幼くなりすぎるよな。
「私もここ教えてもらったことある。」
そう言ったのはユキだ。
「へぇ。じゃあ結構有名なんか。道知ってないと来にくいからあんま増えへんのかなぁ。」
話がちょっと変わっていったな。コウキは次にマサキとカオリに話を振る。
「相談部ってみんな大体一緒におるけどお前ら2人はその中でも更にセットって感じやな。付き合ってんの?」
ストレートに聞かれて2人はちょっと慌てたようになっている。あれ?ほんとにそうなの?とりあえず助け舟出しとくか。
「2人でチームになってもらってるからそれはそうやろな。」
「あー、チーム制やったんやな?」
「そうそう、チームやからね。」
そう答えたのはコウキだ。慌てると余計怪しいんだが、そっとしておいてやろう。そうしてなんだかんだと話していたら、第一陣が戻ってきた。やっぱりリクとリナがいい感じに見えるのは俺の偏見のせいだろうか。
それでも、行くと帰るのに苦労するのもよくわかっているため、あえて行こうとは思わなかった。それでも今、俺はこの高校1年では一回限りの花火大会(他の花火大会はあるが、この花火大会という意味)に行かないという選択肢はなかった。それに、実家へなら最悪歩いて帰ることができる。1時間も歩けば着くだろう。
待ち合わせは高校の前にした。メイン会場に近く、駅からも遠くないし、わかりやすい。学校は夜閉まってしまうし、自転車を置く場所がないため、結局来るときは走ってきた。歩いて1時間だが、軽く走れば30分程度だ。待ち合わせ時間は17時。花火自体は19時30分からだがこれぐらいから動き始めないと、メイン会場に近づくことが難しくなる。逆に言うと、メイン会場に近づきすぎると帰るときは大変になるのでその塩梅が難しい。
待ち合わせ時間ほぼちょうどに着くと、既に俺以外揃っていた。アズサ、ユキ、マサキ、カオリ、リナ、タクミ、ヨウスケ、コウキ、リクに俺を加えてちょうど10人だ。
「すまん、ちょっと遅くなった。」
「いや、時間通りやろ。ってかすげぇ汗やぞ!?」
答えたのはタクミ。そう、誤算だったのは今は8月初旬、30分も走ればどうなるか。汗まみれになる。当たり前のことだ。
「自転車止める場所ないと思って走ってきたら失敗したわ。」
自販機を探して飲み物を買わねば。よく見てみると、アズサ、リナは浴衣、コウキは甚平を着ていた。それっぽくていいね。
「みんな揃ってるみたいやし行くか。遅くなると動きにくくなるからな。」
「どこに行くん?メイン会場に入ったら帰るの大変やってお母さんから聞いたよ?」
そう言ったのはアズサだ。
「まぁ地元の人が使う穴場的なところや。それでも人は多いけどな。でもメイン会場に行くよりはマシやと思うぞ。ちょっと遠いっちゃ遠いけど。」
そう、実家にいた頃はそこから何回か観たことがあるが、ほぼ真上に観えるのに比較的込み具合はマシというまさに穴場だ。途中の自販機でジュースを買う。この頃の自販機のジュースは110円がスタンダードだ。100円はもうちょっと前か。一息に飲み干してしまう。河川敷に近づく前にもう一本いるな。
メイン会場から遠ざかったところで、狭い道だが、河川敷へと続く道がある。そこから堤防に登り、河川敷に降りきらずに、堤防の斜めになっているところ。ここがポイントだ。
穴場を取るには十分早い時間に出ていたと思ったが、まぁまぁ人はいた。それでも10人の団体が座れるんだ。上等だろう。さて、ここにもすぐに出入りができなくなる。
「出店とかで買うもんあったら今のうち買って来て花火の時間まで待とか。すぐにここらへんも混みだすからな。買い出しは交代で半分ずつな。」
俺は持ってきていたレジャーシートを広げて置く。
「動きづらくなるから浴衣着てる人アズサとリナは先に行ってきたほうがええかもな。他は誰が行く?」
手を上げたのはタクミとヨウスケとリクだ。
「じゃあ行ってくるね。」
アズサ達はそう言って出店に向かっていく。残ったのは、ユキ、コウキ、マサキ、カオリ、俺だ。
「まだ6時過ぎやのにめっちゃ増えてきたな!5時は早すぎるやろと思ってたけどちょうどいいぐらいやったんかもな。ケイタ、この花火結構来てんのか?」
尋ねてきたのはコウキ。
「まぁ、昔な。」
「昔って小学生とかか?」
「そ、そうそう、兄貴に連れられてな。」
しまった。ちょっと高校生から昔だと年齢的に幼くなりすぎるよな。
「私もここ教えてもらったことある。」
そう言ったのはユキだ。
「へぇ。じゃあ結構有名なんか。道知ってないと来にくいからあんま増えへんのかなぁ。」
話がちょっと変わっていったな。コウキは次にマサキとカオリに話を振る。
「相談部ってみんな大体一緒におるけどお前ら2人はその中でも更にセットって感じやな。付き合ってんの?」
ストレートに聞かれて2人はちょっと慌てたようになっている。あれ?ほんとにそうなの?とりあえず助け舟出しとくか。
「2人でチームになってもらってるからそれはそうやろな。」
「あー、チーム制やったんやな?」
「そうそう、チームやからね。」
そう答えたのはコウキだ。慌てると余計怪しいんだが、そっとしておいてやろう。そうしてなんだかんだと話していたら、第一陣が戻ってきた。やっぱりリクとリナがいい感じに見えるのは俺の偏見のせいだろうか。
1
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる