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顧客

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遠足も終わったし、そろそろ部活に本腰を入れたいと思う。今日は部活動の定例だ。みんなが部活のことをどう考えているのかを通じて、部活動を誰のためにやっていくのかしっかり定めておこう。ってか、もっと早くやるべきだったんだが。

「さて、みんなそろったな。今日は大きな相談もまだ来ていないし、この部活の目的は何かをみんなと考えていきたいと思う。もちろん俺が作った部やから俺なりの答えは用意してるけど、それと同じかどうかじゃないから気にせずに話してみてくれ。いいかな?」

アズサ、マサキ、カオリは頷く。ユキは反応がない。聞いてんのか?

「じゃあまず前提を揃えておくぞ。相談部は困っている人たちの後押しをしたり、場合によっては解決案を提示して、悩んでいる時間を短縮してその分、高校で生活する全ての人がもっと充実した生活を送れるようにすること。ここから話し出すと結構話がブレるからこれは前提にしといてくれ。」

企画書にもそんな感じで書いてるし、これにはみんな異論はないようだ。頷いている。ここに異論を言われても困るんだけどな。

「じゃ、まず最初のお題ね。この相談部の『顧客』って誰だかわかるか?お客さんやな。」

アズサが答える。
「それは相談に来てくれる生徒、じゃないの?」

「生徒はもちろんそうだな。他には?」

次はマサキだ。
「生徒個人だけじゃなくて、部活とか、生徒会とかそういう団体もそうだよね。」

うんうん、俺は頷いて肯定の意を示す。

「他にはなんか思いつくか?」

カオリは自信なさげに意見を述べる。

「先生も、もしかしたら顧客に入るんじゃないかな?ケイタくんは高校で生活する全ての人って言ってたし。」

「そうやね。先生たちも顧客でいいと思うぞ。他には思いつくか?」

俺はみんなを見回すが回答が出ない。さすがに難しいかと思ったが、ユキが答える。

「そもそも、高校生活というのが親がお金を出してくれているから成り立ってる。だから、高校生活を充実させるということは親も顧客。」

「そうそう、そうなんだよな。他にもわかるか?」

「あ、じゃあ学校も?」

答えたのはアズサだ。俺は頷いて肯定する。

「学校は自分の学校にいる学生が満足した高校生活を送ってもらえたら、親の満足度も上がるし評判もよくなるから、今後の生徒も集まりやすくなるってことね!」

「まぁ考えを広げると、ここは公立の学校やから学校にお金を出している自治体、自治体にお金を払っている住民まで行くんやけどな。足元のところで俺ら自身も顧客と言える。」

「そもそも僕ら自身の高校生活が充実してなきゃいけないってことやね。」

マサキが自身の理解を口にする。

「そう、それに俺たちがいないと、相談部自体が成り立たへんからな。俺らは従業員であって顧客でもあるってことな。とまぁ、何が言いたいかと言うと、結構色んな人に波及するってことをわかっといてほしかったんだよな。」

そう、組織の中に入ると忘れがちなんだが、組織が誰のために何を提供するのか、これを意識することは基本だ。ついつい、目の前の仕事に忙殺されるんだけどね。ユキがノーヒントであの考えまで至ったのには驚かされた。今日はこんなところか。今後は俺がそれぞれのメンバーの特徴を掴んで強みを生かせるようにしていきたい。

「たまにこういうディスカッションは入れて行こうな。意外と面白いやろ?」

アズサが苦笑いしながら答える。
「なんかちょっと頭がこんがらがりそう。でも、ケイタくんってどこからそんな知識持ってきてるん?なんか先生と話してるみたい。」

「あー、話してなかったか?ビジネス書を読むのが趣味やねん。」
実際にはビジネス書もあるが、社会人経験から来るものでもあるが。

マサキは驚いたように話す。
「ビジネス書!?僕らはその前に大学受験があるから参考書やろ?」

既にそれなりにできるから忘れてた。一回大学受験突破してるからな。
「…そやね。そっちもやらんとな。」

アズサが話す。
「そうやね。今は中間テストの相談が多いんやけど、どうしよっか?」

俺はそのまま聞き返す。
「どうすんのがいいと思う?」

「勉強会でもやる?」
答えたのはカオリだった。

「そうだね!そうしよっか!」
と、アズサが反応し、マサキとユキも頷く。

「いいと思うぞ。数学はマサキ、国語はカオリができたやろ。英語は俺がやるわ。じゃ、全体の企画はアズサチームで頼む。ユキもよろしくな。」

ってことで、サクッと分担を決めた。まぁ相談?といえば相談だし、こういう活動から親しみと信用を得ていくのもいいだろう。
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