異世界ダンジョンでRTA

ユウリ

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第29話 パーティーメンバー探し

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店主との交渉を済ませた翌日。

俺は昨日のタイムアタックでの勝負が忘れられず、中級ダンジョンへ赴くか迷っていた。

昨日のタイムアタックは楽しめたが、消化不良だったしな。

ただ、どうやら中級ダンジョンはパーティー参加でなければいけないらしい。

「実際パーティー限定というのが、ネックだよな……」

そうは言っても、ボスがいるかもしれない中級ダンジョンを俺がソロで踏破できるかというのもかなり微妙な話だ。
前回の中級ダンジョンもボスがルカだったからクリアできたようなもんだったからな。

どの道ソロという選択は取れないかもしれない。

ただ、この国に来たばかりという事もあって組めそうなメンバーに心当たりは無かった。

どうしても参加したい場合はギルドで探すしかないか。
しかし、ギルドか……。
どうするかな。
出入りすると、間違いなくランキング一位である事がばれてしまう。
前回は咄嗟にガタイの良いおっさんに押しつけたが、さすがに毎回そんな訳にもいくまい。

いや、しかし一位だとばれる事はさほど問題にはならないかもしれない。
押しつけられたおっさんも、ただ遠巻きに見られていただけだ。
俺の場合でも扱いは同じだろう。
さすがに世界一位にケンカを吹っかける奴はいない筈だ。
……たぶんな。

「……よし」

俺は堂々とギルドに入って仲間探しをする事に決めた。
もうすぐ国の後ろ盾もできるはず。
リスクは最小限だ。

いや、どうにもネガティブに考えすぎだ。ポジティブシンキングってやつでいこう。
何かの手違いの可能性は高いが、とにかく今は世界一の肩書を持っているんだ。
むしろ誇らしく思うべきだろう。
うん。
そう無理やり自分を納得させ、ギルドへ向かう気持ちを奮い立たせる。

行くと決めたら俺の行動は素早かった。
早々に準備を済ませ、城を飛び出す。

それにしてもパーティーか……。
なんか、ロイス達と組んだ時の事を思い出すな。
今度も良い相手に恵まれると良いんだが。

俺はそんな事を考えながら、ギルドの扉をくぐる。

例によって機械音声が流れる。

「世界ランキング1位、カイト様がギルドに入られました」

もちろん覚悟していたので、動揺をみせる事は無い。
ただ、さすがに中にいるギルド職員含め全員が、こっちに振り向く。
壮観だな。

俺はそれらの視線を意に介する事も無く、辺りを見回す。

いかにも力自慢という感じの二人組、まだ初々しいさえ感じる三人組、パーティーを組んでるのはこんなところか、さすがに来るのが早すぎた気がしないでもない。その他にはソロの冒険者が数名といったところだ。

もちろん俺には見ただけでその人物の実力がわかるような観察眼は無い。
だからできれば、誰もが見ただけですごいと感じられるような、そんな奴の出現を待ちたいところだが……。

今のところ目ぼしい人材がいないようなので先に受付に行く事にする。
中級ダンジョンの調査のためだ。

一番右の受付だけ丁度人がいなかったので、そちらに向かう。

「すまない、聞きたい事があるんだが?」
「あ、あの。今アナウンスで……」

受付の女性は俺の問いに返答せず、驚きで口をパクパクさせている。
いや……仕事しろよ。
この驚き様から言って、前回俺がおっさんに押しつけた時にはいなかった職員かもな。

「いや……聞き間違いじゃないか?」

何故か俺は無駄な抵抗を試みる。

「い、いえ! はっきりと聞こえました!」

だったら最初から確認しようとするなよ……。
俺は心の中で悪態をつくが、表情には出さない。

「そうか……それは耳が良い証拠だ。良かったな. それで……聞きたい事があるんだが?」

言葉の最後に微妙にドスをきかせる。
俺の言葉に自分が職務放棄に近い態度をとっていたことに気がついたのか。
顔を真っ赤にしながら、職務に戻る。

「……大変失礼致しました。何の御用でしょうか?」
「中級ダンジョンに関する資料が見たいんだが」
「……原則貸し出しはできませんので、ギルド内で閲覧して頂く事になりますがよろしいでしょうか?」
「ああ、もとよりそのつもりだからな」
「わかりました。では少々お待ち下さい」

そう言い残し、職員は奥に消える。

待ってる間に手持ちぶさたになり、俺はもう一度周りを見渡す。

パーティー連中は俺を見ながらヒソヒソと話をしている。
俺が彼らに視線を向けると、露骨に話すのをやめる。

無理も無いとはいえ、なんか嫌な感じだな。
単に怖がられているだけかもしれないが。

まあ有名税みたいなものだ。
ポジティブに考えるとしよう。

「お待たせしました」

ギルド職員が資料を持って戻ってくる。
俺は職員に礼を言い、資料を受け取る。
適当な場所に腰を落ち着け、早速資料のページをめくり始める。

今回はパーティーで攻略だからな……。
いつもより綿密な情報が必要だ。
俺は目を皿のようにして、自分の欲しい情報を集めて行く。

資料に夢中になって、メンバー集めなど忘れかけた時、ギルド内にアナウンスが流れる。

「エレノアランキング二十四位、バシム様がギルドに入られました」

ん?
なんか聞いた事のある名前だな。
俺は気になり、バシムという名前の男に視線を向ける。
中年の男だ、雰囲気では既にベテラン冒険者の風格だ。

しかし、その姿を見た瞬間思いだす。
あれは……。

前にランキングをアナウンスされたのに全く注目を浴びなくて入り直そうとしていた男だ。
俺はその滑稽な姿を思い出してしまい、堪えきれずニヤけてしまう。

その瞬間、間の悪い事にそのバシムと視線が合ってしまう。

「おい、おまえ! 今、俺を見て笑ってなかったか?」

バシムがすごい剣幕で俺の元へ近づいてくる。

まずい。
かなり怒ってる。悪気は無かったんだがな。

「おい! 聞いてるのか? あまりふざけた態度を取っていると我が剣の錆にしてやるぞ」
「悪いな……そんな気はなかったんだ」
「若造が……その口の訊き方はなんだ!!」

どうやら火に油を注いでしまったらしい。

ギルドの職員に止めてもらおうと視線を送るが、何故か心配そうな表情でこちらを見るだけだ。
おいおい。
ちゃんと仕事をしてくれ。
こういうもめ事を諌めるのもあんたらの役目だろう。

俺が視線で訴えかけようとするが、職員とは目が合わない。

ん。
みんなバシムの方をみているのか……。
それも憐憫の視線で。

もしかして心配されているのは、俺じゃなくてバシムだけか?
ケンカを売られているのは俺なんだがな……。

その時、俺の態度に業を煮やしたのか、バシムが近距離から剣で切り付けてくる。

俺は都合よく称号を敏捷値に特化させていたため、超反応で回避に成功する。

おいおい。洒落にならんぞ。
さすがに殺す気はなかったと思うが、仮に峰打ちでももらっていたら痛いでは済まないだろう。

まさかこんなに短期な奴だったとは……。
あぶないクスリでもやってるんじゃないだろうか?

だが、攻撃を受けた俺より、むしろバシムの方が驚いているように見える。
まさか避けられるとは、想像もしていなかったのかもしれない。

当たらなかったとはいえ、さすがに俺もこの状況で何事も無く済ましてやる気持ちは薄れていた。

ここは戦うしかないのか?
正直、対人はあまりやりたくない。
タイムアタックは別だが……。

その時再びアナウンスが鳴り響く。

「エレノアランキング十七位、サラ様がギルドに入られました」
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