もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

文字の大きさ
上 下
138 / 155

2

しおりを挟む

「ねえ、豊」

「あ?どした?」

「部屋着、貸して?あとお風呂も」

「あー...マジ?脱ぐの?浴衣」

2人のやり取りを眺めながらオレンジジュースを飲む俺と俊也。

「...そりゃ。浴衣のまま寝れないでしょ。お風呂だって入りたいし」

「目の保養になんのになあ...」

「...は?」

「あー、確かに。わからなくないかもな」

俊也も豊に同意見、の様だけど...。

「だよね、わかる。色っぽいもん、俊也」

「樹もな」

涼太の呆れた眼差しが向けられた。

「...だったら2人はそのまま浴衣着てたら?」

俺と俊也は見つめ合う。

「...まあ、ありかも」

「うん」

はあ、と涼太が溜息を洩らした。

「まあ、2人は好きにして。俺は浴衣じゃ落ち着かない」

「しゃーねーなあ。風呂溜めてくるから待ってな」

そうして豊は部屋を出て行った。

涼太から順にお風呂に浸かり、結局は豊からそれぞれ部屋着を借りた。

「浴衣じゃなくて良かったん?」

「んー、まあ」

「にしても、明日どうする?樹や俊也は行きたいとこは?」

「あー、どうだろ...俊也はわかんないよね」

「うん。俺は樹となら何処でもいいけど」

「何処でも、が困るんだよなあ、一番」

豊が頭を掻いた。

「でもその前にさ。寝るとこ、どうするの?この部屋で4人?」

豊に尋ねた。

「他、部屋はあるよ。寝るとき、そっち移動する?ここで寝てもいいけど...2人の邪魔だろうし?」

「えっ、そんな、ね?俊也」

「ああ、さすがにな」

俊也が小さく笑う。

結果、豊の部屋で4人で寝ることにした。

豊はベッド、床に布団が2つ。

「樹と俊也は一緒にな」

「えっ。豊と涼太、一緒じゃないの...?」

「んー...ちょっと、色々ね」

涼太の苦笑に首を傾げた。

「...しかし、2人の隣に涼太、てのもなあ...邪魔なんじゃ?涼太」

「え?あ、そっか。...だったら...豊と寝よっか...あ、変な意味じゃなく!」

「わかってるって」

豊が笑い、布団を捲ると豊の隣に涼太は寝転んだ。

「じゃ、電気、消すぞ」

「うん、おやすみ」

それぞれおやすみ、と口にし、豊が電気を消した。

涼太がベッドに移ったから必然と布団が2つ並んで俺は隣に移動した、んだけど。

やっぱり俊也の布団に潜り込み、胸元に蹲るように横たわったものの、なかなか寝つけない...。

「眠れそう?樹」

小声で俊也が聞いてきた。

見上げたら俊也の瞳と交錯した。

「あ...う、ううん」

「だよな」

「うん...」

「子守唄でも歌う?」

ふふ、と小さく互いに笑った。

背後のベッドの2人は若干、距離を置いて眠っていて、特に声はしない。

と思ったら。

「あ、忘れてた」

唐突に豊が起き上がった。

「どうしたの?豊」

「ああ、いや。アロマオイル忘れてたな、て」

ベッド脇のカウンターに豊はアロマをセットした。

「あ、いい香り」

「んじゃ、おやすみな」

「うん」

そうして...宿題と祭りの疲労からかいつの間にか俺は夢の中だった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

a pair of fate

みか
BL
『運命の番』そんなのおとぎ話の中にしか存在しないと思っていた。 ・オメガバース ・893若頭×高校生 ・特殊設定有

処理中です...