もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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涼太side

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食堂で食事を終えた後、樹の部屋にまた戻った。

「俊也くんも食べて。樹の為にネットで買ったんだ。樹がこのクッキーが好きで、ね?樹」

「....うん」

「俺、甘いもん苦手だから」

そう言って、一口も食べなかった。

まあ、樹の為に注文したからいいんだけど...。

「....なんか、あいつムカつくなあ」

ベッドに体を放り投げて、天井を睨み、脚をばたつかせる。
豊とは全然、タイプが違う。全然、笑わないし、愛想もないし。

「何処がいいんだろ、樹」

体を翻し、ベッドの上で頬杖をつく。

突然、ドアがノックされた。

「....めんどくさい」

仕方なく、ベッドから降り、ドアを開けると豊がいた。

「なんだ、豊か」

ふん、と再び、ベッドに身を投げる。

「ヤラせろよ、涼太」

「はあ?嫌ですー」

「嘘だっつーの。真に受けんな」

ギシ、とベッドの端に豊が座り、ちっ、と舌を鳴らした。

「用済みだろ?俺」

「わかってんじゃん。まんまと俺の下手くそな嘘に騙されちゃって、笑っちゃう!樹に謝ったんだって?」

「....ああ。謝ったよ、謝って済む問題じゃないけど...お前は?」

不意に視線を上げると、何処か醒めた感の豊の瞳を見つめた。

「謝ったよ」

「マジで?」

「うん。謝った、今日」

「意外すぎ」

謝ったといっても。
信用を取り戻したくて、頑張って嘘泣きして、豊だけ悪者にして、それで謝ったんだけど。

少しは樹の気持ちに変化はあったかな。
本当は豊に強要されてた、て嘘に、同情して、そして、少しずつ、関係を修復すればいい。

「....なに、ニヤついてんだ?気持ち悪い」

「別に?関係ないし、豊には」

「あっそ」

豊は深いため息をついた。

「お前、今日、あの金髪も交えて、三人で食堂で飯食ってたろ」

「盗み見?気持ち悪い」

「嫌でも目立つし、あの金髪...俊也だっけ」

ふん、と俺は変わらず頬杖ついたまま鼻を鳴らす。

「....なに考えてる?涼太」

「なにが?」

微かに笑顔の俺と凍てつくような豊の瞳がぶつかった。
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