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優しい気持ち
しおりを挟む豊が部屋を出ていくなり、俊也は俺の全身を隈無く見回した。
「な、なに?俊也」
「いや、あいつに何もされなかったか?」
「あいつって、豊に?何もされてないよ。話してただけ」
「本当に?」
「本当に」
一瞬、見つめ合ったが、俊也が顔を背け、はあ、と長い吐息をついた。
「心配したんだからな、マジで」
「ごめん、LINE気づかなかった...」
「今回のごめんはOK」
そう言って俊也にデコピンされた。
「つーか、腹減ったー」
ペタン、と俊也は床に座り込み、天井を仰ぐ。
「まだ食べてなかったの?もうすぐ9時だよ?」
「もう9時か。心配だから、すぐ寮戻りたかったんだけどさ、時間かかったな」
「....心配して、来てくれたの...?」
「さっきからそう言ってるだろ、アホ。コンビニ行くかー、樹も一緒、行くか?」
「うん、行く」
そうして、再び、2人でブロック塀を乗り越え、近くのコンビニまで歩いた。
「昼ね、俺も走ってみたよ、中庭」
「ほー、どう?良かった?」
「うん!気分転換になるね!」
「雨の日は最悪だけどな」
俊也が笑う。
「雨の日も走るの?」
「たまーに」
そうして、俊也はコンビニ弁当やパン、お菓子にジュース、アイスなどを籠に放り込んでいく。
「あっ、言い忘れてた」
「ん?」
「昨夜、中華料理、ご馳走になったから、今回、俺、出すよ、お金」
「へ?いいし、別に」
「でも...悪いし」
「俺がいいって言ってんの。昨夜も今日も俺が付き合わせてんだから」
....俊也には敵わないなあ、ふとそう感じた。
嫌な感じは全くないけど。
「樹は?なんか買いたいもんないの?」
「んー...」
「エロ本でもいいよ?」
「馬鹿じゃん」
言ってしまってから、しまった、と口元を抑えた。
「ほー、言えるようになったじゃん。上出来上出来」
「....怒んないの?」
「謝られまくるよりずっといい」
そう言うと、鼻歌を歌いながら商品を再び籠に放り込んだ。
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