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しおりを挟むリビングのソファで、電話を終えた穂高は、うーん、と宙を仰ぎ、唸りながらスマホを顎に当てた。
結月はキッチンで家政婦に着いて貰い、教わりながらエプロン姿で料理をしている。
後は煮込むだけとなり、結月はスリッパをパタパタと音を立てながら穂高の元へ向かった。
「料理はどうだ?」
「楽しいよ。ちなみに今日は煮込みハンバーグ」
エプロン姿で穂高の隣にちょこん、と座る。
「史哉さん、見つかった?」
穂高から史哉が行方不明、の話しを聞いていた結月が尋ねると、穂高は首を横に振った。
「拓磨にも聞いたけど、手がかりなし」
まさか、拓磨と一緒にいて、拓磨が史哉と居ることを話していないだけとは知らない穂高だ。
「あいつの事だから、気晴らしに海外でも行ってるんじゃないか?」
「だったら、拓磨さん、知ってる筈じゃない?」
「それはそうだな」
「僕が史哉さんと連絡先、交換していたらよかったかな」
突然の結月の声に穂高が驚きの眼差しを結月に向けた。
「お前と史哉がか?」
「うん」
「まあ、最近、仲良さそうだったけど....なんなら、番号教えるからLINEしてみるか?」
穂高の提案に、うん!と、結月は自分のスマホを取りに行き、穂高から伝えられる史哉の電話番号を登録し、早速、LINEの内容を考える。
「....どんな内容がいいかな」
「あいつがびっくりして、掛けてくるような内容?」
2人で結月の手にあるスマホを覗き込み、思案を練る。
結月の指が動き始めた。
内容を見ていくうちに、穂高の顔色が怪訝になっていく。
「....縁起でもない内容だな、また」
「演技だよ」
『史哉さん....僕、お腹の子供、流産しました。あんなに説得してくれたのにごめんなさい。穂高先生と別れる事になりました。今までありがとうございました。 結月』
一瞬で結月の考えた内容のLINEは史哉の元へと届く。
相変わらず、史哉はラブホテルの一室で、情事を終え、布団の上で寝転んでいた。
真っ先にソファに座っていた拓磨が史哉に届いたLINEに気づく。
「史哉、LINE、来てるぞ」
「んー、誰から」
「さあ、お前、登録してないんじゃ?自分で確認しろよ」
スマホを投げ渡された史哉は肩肘を付き、何気なく、LINEを開き....。
「なにこれ!」
思わず、飛び起き、叫んだ。
「どした?史哉」
史哉の元へ向かい、一緒にスマホを覗き込む拓磨も思わず、衝撃から口を抑えた。
「まぢかよ....嘘だろ....」
結月の考えた、史哉が掛けてくるであろう、その嘘なのだが。
「流産、て...ショックだろうな。にしても、なんでまた、穂高、別れるだなんて」
「穂高のやつ!」
流産で傷ついている結月をショックで投げ出したのかと、怒りに任せ、史哉は結月ではなく、穂高に電話を掛けた。
「....俺に来た」
なんの気なしに穂高はスマホを耳にすると、
「なに考えてんだよ!穂高の薄情者!」
「へ?」
「流産したから、て、結月を手放すとか、甘ったれるのもいい加減にしたら!」
あまりの怒声に思わず、穂高は吹き出した。
「それはどうも、心配ありがとう」
「なに、その余裕!」
穂高の隣で、結月が代わって、と声を掛け、スマホが結月に渡され、穂高から結月に交代した。
「あ、史哉さん、今何処にいるんですか?元気ですか?会いたいです」
「結月....」
てっきり、傷心からの言葉と史哉は思い込んだ。
「辛かったな、結月。僕は今、拓磨とラブホテルを転々としているよ。結月は大丈夫?」
スマホから漏れた史哉の声に穂高と結月は自然と見つめ合った。
「....拓磨のヤロー、隠してたな」
珍しく、穂高が拓磨に怒りを燃やした。
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