1人のαと2人のΩ

ミヒロ

文字の大きさ
上 下
24 / 116

23

しおりを挟む

次の日。

いずれはバレるのだろうが、念の為、医師会の父に勘づかれないよう、以前とは違う病院に結月と共に訪れた。

検査の結果から、お腹の子供に支障は無かった。

結月は安堵した。

いつしか、結月の中で母性が生まれていたのだ。

最初のうちは誰の子供かもわからない、結月を困惑させた存在。だが、次第に結月は自分のお腹の子供には罪はない、と思うようになっていた。

「しかし、なにか心配ごとでも?」

「え、あ、いえ...例えばの話しなんですが...既にΩの体にαとの子供がいて、別のαと性行為をした場合、子供への悪影響などは無いのでしょうか...」

さすがに穂高は冷静になれず、どもりながら、医師に尋ねた。

しばらく、医師は穂高を見つめていた。

「...Ωとαの妊娠は通常の妊娠とは異なります。通常の妊娠であれば染色体に問題はありません。ですが、Ωの場合、優劣な αの遺伝子を引き継いで入れ替えてしまう場合がありますね」

「...それは、つまり....?」

「まだ未成熟な胎児の場合、父親が入れ替わってしまう場合がある、ということです」

「.....父親が変わる....?」

「ええ。Ωの体もΩの子供もより優秀なαを選び、父親にすることを望みますから」

結月と穂高は言葉を失った。

「....それはいつわかるのですか....?」

「αの血液すらあればわかりますよ。子供の遺伝子を調べることは早期に可能ですから」

医師の言葉を聞き、結月と穂高は自然と目が合った。

もし、穂高の持つ遺伝子がお腹の子供のものより勝っていれば、穂高の遺伝子を継いだ子供になっている....。

「....帰ろう」

結月は穂高を促し、立ち上がった。

結月の後を追い、穂高もゆっくり歩いた。

「....もし、穂高先生の遺伝子を継いだ子供になっていたとしても、違っていても、僕はいいんだ。この子が無事に生まれてきてくれたらそれで」

並んで歩きながら、清々しい顔をした結月を穂高は眺めた。

子供が子供を成長させ、大人にさせるのかもしれないな....。

結月の手を握ると、結月もぎゅっと穂高の手を握り返した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されない皇女は生贄として、死ぬ運命でした

あーもんど
恋愛
生まれた時から、ずっと地下牢で暮らしてきた第二皇女。 家族から、使用人から、貴族から疎まれて育った彼女は“愛”を知らない。 また、感情に乏しく、誰に何をされても無反応だった。 そんな皇女が、ついに地下牢を出ることになった。 でも、それは決して良いことじゃなくて……傍から見れば、悲劇そのもの。 だって、彼女はこれから────“生贄”として、大公に嫁ぐから。 死を覚悟して、大公領へ向かった皇女は恐ろしい怪物と対面する。 そして、早速殺されるのかと思いきや、妙に優しくて……? 温かい食事、清潔な洋服、自分の居場所を与えられ、皇女は驚く。 ────何故、生贄である私を丁寧に扱ってくれるのだろう?と。 ────これは生贄として虐げられてきた少女が、自分の人生と温かい心を取り戻すまでの物語。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆序盤はかなり胸糞です。ご注意ください◆

馬鹿な彼氏を持った日には

榎本 ぬこ
BL
 αだった元彼の修也は、Ωという社会的地位の低い俺、津島 零を放って浮気した挙句、子供が生まれるので別れて欲しいと言ってきた…のが、数年前。  また再会するなんて思わなかったけど、相手は俺を好きだと言い出して…。 オメガバース設定です。 苦手な方はご注意ください。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

ありあまるほどの、幸せを

十時(如月皐)
BL
アシェルはオルシア大国に並ぶバーチェラ王国の侯爵令息で、フィアナ王妃の兄だ。しかし三男であるため爵位もなく、事故で足の自由を失った自分を社交界がすべてと言っても過言ではない貴族社会で求める者もいないだろうと、早々に退職を決意して田舎でのんびり過ごすことを夢見ていた。 しかし、そんなアシェルを凱旋した精鋭部隊の連隊長が褒美として欲しいと式典で言い出して……。 静かに諦めたアシェルと、にこやかに逃がす気の無いルイとの、静かな物語が幕を開ける。 「望んだものはただ、ひとつ」に出てきたバーチェラ王国フィアナ王妃の兄のお話です。 このお話単体でも全然読めると思います!

関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている

百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……? ※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです! ※他サイト様にも掲載

怒れるおせっかい奥様

asamurasaki
恋愛
ベレッタ・サウスカールトンは出産時に前世の記憶を思い出した。 可愛い男の子を産んだその瞬間にベレッタは前世の記憶が怒涛のことく甦った。 日本人ので三人の子持ちで孫もいた60代女性だった記憶だ。 そして今までのベレッタの人生も一緒に思い出した。 コローラル子爵家第一女として生まれたけど、実の母はベレッタが4歳の時に急な病で亡くなった。 そして母の喪が明けてすぐに父が愛人とその子を連れて帰ってきた。 それからベレッタは継母と同い年の義妹に虐げられてきた。 父も一緒になって虐げてくるクズ。 そしてベレッタは18歳でこの国の貴族なら通うことが義務付けられてるアカデミーを卒業してすぐに父の持ってきた縁談で結婚して厄介払いされた。 相手はフィンレル・サウスカールトン侯爵22歳。 子爵令嬢か侯爵と結婚なんて…恵まれているはずがない! あのクズが持ってきた縁談だ、資金援助を条件に訳あり侯爵に嫁がされた。 そのベレッタは結婚してからも侯爵家で夫には見向きもされず、使用人には冷遇されている。 白い結婚でなかったのは侯爵がどうしても後継ぎを必要としていたからだ。 良かったのか悪かったのか、初夜のたったの一度でベレッタは妊娠して子を生んだ。 前世60代だった私が転生して19歳の少女になった訳よね? ゲームの世界に転生ってやつかしら?でも私の20代後半の娘は恋愛ゲームやそういう異世界転生とかの小説が好きで私によく話していたけど、私はあまり知らないから娘が話してたことしかわからないから、当然どこの世界なのかわからないのよ。 どうして転生したのが私だったのかしら? でもそんなこと言ってる場合じゃないわ! あの私に無関心な夫とよく似ている息子とはいえ、私がお腹を痛めて生んだ愛しい我が子よ! 子供がいないなら離縁して平民になり生きていってもいいけど、子供がいるなら話は別。 私は自分の息子の為、そして私の為に離縁などしないわ! 無関心夫なんて宛にせず私が息子を立派な侯爵になるようにしてみせるわ! 前世60代女性だった孫にばぁばと言われていたベレッタが立ち上がる! 無関心夫の愛なんて求めてないけど夫にも事情があり夫にはガツンガツン言葉で責めて凹ませますが、夫へのざまあはありません。 他の人たちのざまあはアリ。 ユルユル設定です。 ご了承下さい。

α嫌いのΩ、運命の番に出会う。

むむむめ
BL
目が合ったその瞬間から何かが変わっていく。 α嫌いのΩと、一目惚れしたαの話。 ほぼ初投稿です。

処理中です...