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しおりを挟む広夢が訪れた際も、αを感じ取り、顔を強ばらせ、慌てて背中を向けて駆け出し、部屋に閉じこもり、広夢は鈴原家を訪れることは無くなった。
突如、お兄ちゃんは憔悴しきった顔と声で切り出した。
「...俺、一生、結婚できないかも」
僕も恭一さん、大貴さん、慶太さんもポカン、とし、兄を見た。
「α、怖いし...」
「無理に結婚しなくてもいいんじゃない?独身貴族って言葉もあるくらいだし」
慶太さんの言葉にもお兄ちゃんは返答はせず、項垂れている。
「そうだよ、結婚が義務な訳じゃないし、別に今、考える必要もなくない?」
「αが駄目ならΩがいるじゃん」
恭一さんのセリフに、何故か、僕に兄を除く、三人の視線が突き刺さる。
※
奏斗が優斗の教室に優斗を迎えに行き、二人が学校を後にした恭一たちの会話。
「互いに、悪い男に騙されたら、とか、悪い虫がついたら、とか、監視し合ってんの、どう考えても言い訳だよね」
「両思いなのに、気づいてないのは二人だけってか」
「奏斗、一時期、仲間かなあ、と思ったけど、やっぱりそうだよね」
「なんだかんだ、お似合いだよな。優斗に何かしようとする奴がいれば、奏斗の必殺飛び蹴りが下されるし」
「優斗が思ってる以上、案外、奏斗、しっかりしてるもんね」
三人はとっくに気がついていたが、気がついていない振りをしていただけだ。
※
肩を並べ、下校する二人。思いがけず、口数が少ない、というより、互いに無言だ。
「...お兄ちゃん、結婚したいの?」
チラリ、隣の兄の顔を伺うが、煮え切らない表情の兄がいる。
咄嗟に優斗の前に奏斗は立ち塞がり、仁王立ちした。
怒りを露わにした奏斗に優斗は面食らっている。
「お兄ちゃんは僕が誰かと付き合ったり、結婚しても平気なんだ!?」
暫し、ぱちぱちと優斗は瞬きを繰り返す。
「ふーん、そっか、わかった、僕、素敵な相手、見つけるから!」
「奏斗...」
「僕がお兄ちゃんの傍から居なくなっても、お兄ちゃんは平気なんでしょ!?僕、ずっと、お兄ちゃんに尽くしてきたつもりだったけど、これからは別の人に尽くすから!」
くるり、奏斗は踵を返し、背中を向けた。
「....平気じゃない」
ゆっくり優斗を振り返る。
そこには俯いた顔を真っ赤に染めた兄の優斗が立ち尽くしていた。
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