33 / 44
33
しおりを挟む帰宅するなり溜めたお風呂に兄の優斗が入っている間、奏斗はファスナーを開け、応急処置セットをカーペットに並べた。
不足した湿布とガーゼを入れ、後は...、と宙を仰ぎ、ポケットティッシュ、ウェットティッシュ、綿棒も加えよう、あっ、使ったタオルも後で洗濯機に入れなきゃ、と真新しいタオルを二枚、鞄に詰めた。
後は...ふと、今日の出来事から学び、予備のパンツも必要かなあ、と唸る。
帰りに母さんに買ってきて貰うよう、連絡しよう、と。
パート中の母にLINEを入れた。
とりあえずこれでいいかな、とファスナーを閉め、ポーチを掲げ、見つめる。
もうひと回り大きめなサイズに変えてもいいかも、今度、買いに行こう。
そして、奏斗は再び、鼻歌をふんふん歌った。
「奏斗。お風呂、ありがと。まだ温かいから奏斗も入りなよ」
「うん」
「あ、あの、ラベンダーの入浴剤、いいな。なんか癒された、ありがとう」
「どういたしまして。じゃ、僕も入ろっ」
バスタオルを首に掛けた、部屋着の優斗の隣を鼻歌を歌いながら通り過ぎ、その姿を優斗は笑顔で見送った。
優斗の頑張りも、本人も遂には疲れ果て、翌日の朝には箸を逆さのまま、食事をしており。
「お兄ちゃん、箸、逆だよ」
にっこり奏斗に示唆されるまで優斗は気がつかなかった。
「あっ、ホントだ。朝から恥ずかしいな」
苦笑する可愛らしい兄に、ようやく、平常が戻った、と安心しながら、奏斗は頬を綻ばせた。
休み時間、兄のやらかしたドジが恭一、大貴、慶太からそれぞれ、教えられ、奏斗の胃は痛みを忘れた。
かのように見えた。
自宅前になにやら人がいるのを一緒に下校した優斗、奏斗は互いに目を合わせ、
「誰だろ?」
優斗より背の高い、二人より少し年上のような男性は二人を目に留めると、
「久しぶり。優斗、奏斗」
にこやかな笑顔を見せた。
その笑顔に即座に気づき、反応したのは、奏斗だ。
優斗は、誰だろう?と言う顔でぼんやり相手を見つめている。
隣の奏斗は、ガルル、と今にも噛みつきそうな小型犬のような顔つきだが、相手は優斗を見下ろし、見つめているので気がついてはいなかった。
1
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました
及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。
※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
記憶の欠けたオメガがヤンデレ溺愛王子に堕ちるまで
橘 木葉
BL
ある日事故で一部記憶がかけてしまったミシェル。
婚約者はとても優しいのに体は怖がっているのは何故だろう、、
不思議に思いながらも婚約者の溺愛に溺れていく。
---
記憶喪失を機に愛が重すぎて失敗した関係を作り直そうとする婚約者フェルナンドが奮闘!
次は行き過ぎないぞ!と意気込み、ヤンデレバレを対策。
---
記憶は戻りますが、パッピーエンドです!
⚠︎固定カプです
幼馴染から離れたい。
June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。
だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。
βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。
誤字脱字あるかも。
最後らへんグダグダ。下手だ。
ちんぷんかんぷんかも。
パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・
すいません。
これがおれの運命なら
やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。
※オメガバース。Ωに厳しめの世界。
※性的表現あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる