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水を含み、透け透けだった白いワイシャツを脱ぎ、半裸の兄の姿があった。

「お、お兄ちゃん!じっとしててって言ったでしょ!」

「え?」

きょとんと僕を振り返る兄。

「あ、いや、体に張り付いて、気持ち悪かったから...」

兄は頭を拭いていた貸したタオルで上半身を拭っていた。

「誰か来たら大変でしょ!」

僕は改めて、巾着袋から兄のジャージを取り出し、差し出した。

「....わざわざ、取りに行ってくれたんだ、ありがとう、奏斗」

「いいから、早く着替えて!」

リミット、あと、40分。40分したら、僕のクラスメイト達が戻って来てしまう。

後ろを向いた兄がカチャカチャとベルトを外し、スラックスを脱いだ。

僕よりは広いけど、決して広いとは言い難い色白な兄の背中のその下。

兄のグレーのボクサーが水を含み張り付き、兄の小さくしまった尻の輪郭を浮き彫りにしていた。
それどころか割れ目もくっきり...。

「ちょ、ちょっと待ってて、僕も着替えるから、後ろ向いてて、お兄ちゃん」

「え?うん」

僕も着ていたジャージから制服に着替える作業。

スラックスを履く前にスルリ、と両脚からボクサーを脱いでからスラックスを履いた。

僕はお兄ちゃんに向き直る。

「はい!お兄ちゃん!」

ボクサーを手に差し出す僕に暫く、目を丸くしてた。

「パンツまで用意してたんだ?さすが奏斗...」

兄の言葉を遮った。

「今、脱いだ」

「...え?」

「ほら!早く!お兄ちゃん、パンツもびしょびしょでしょ!」

グイグイ、お兄ちゃんに、受け取って、と脱ぎたてのボクサーを押し付ける。

「まだそんな汚くないから。そんなびしょびしょなパンツなんか履いて帰宅してたら風邪引く!」

「の、ノーパンなのか?お前...」

「勉に気にしないし、大丈夫だから、ほら!」

「大丈夫な訳ないだろう!お兄ちゃんがノーパンでいいから履きなさい!奏斗」

「お兄ちゃんが履かないなら履かない!」

濡れた、ちょっと視線を下ろせないけれど、お尻もあんなにくっきり、輪郭を露にしていたくらいだ。前の方もきっとそうなっているだろう。

「...わかったよ」

ようやく、渋々、兄の手が僕の脱ぎたてのボクサーを受け取り、僕は背中を向けた。

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