最強魔術師、ルカの誤算~追放された元パーティーで全く合わなかった剣士職、別人と組んだら最強コンビな件~

蒼乃ロゼ

文字の大きさ
上 下
34 / 94
魔術師と剣士

第二十八話 センの森 その一

しおりを挟む
 シェーン・メレを出る際、検問では特に問題がなかった。

 だが今、別の問題に直面している。

「これは……」

 中央にある湖を囲むように森が広がるダンジョン、通称『センの森』へとやってきたのだが。
 入り口から一直線に道を駆けていると、この場所に似つかわしくないものが目に入ってきた。

わだち……、ダンジョンに馬車で来る冒険者が居るのかな? まー通り抜けるのが目的なら固定パーティーだと有り得るのか、な」

「まだ新しいのが気になるな」

 シェーン・メレ周辺のダンジョンを特別調べたことは無いが、この街に高位ランクのパーティーが来ていないのは検問の者が言っていた。

 高位ランクというのは、固定パーティーであることが多い。

 つまり、この馬車の持ち主は個人で所有していることになる。
 それほど景気の良い冒険者が居るかは知らないが、このダンジョンの主はまだ倒された報告はない。
 依頼を受けて、護衛に来た冒険者でもないはずだ。

「どうする?」

「僕たちは通り抜けるのが目的だからな。馬車すら持って来るなら、用意もきちんと出来ている冒険者だろう。気に掛ける必要もない」

「そうだねー、先を急ごうか」

 ダンジョンが攻略目的なら、ギルドへ入場を申請しているはずだ。
 僕らが気に掛けなくとも、誰かしらが把握している。

「幻惑の森とは違って、何か……。神聖? だねー」

「確かにな。何となく空気が澄んでいて、ダンジョンとは思えないな」

 しかしギルドがダンジョンと位置付けているのだから、魔物は居るだろう。
 気を引き締めて先を進む。

 風の魔道具のおかげで相変わらず体は軽やかだが、それにしたって森は広い。
 今日中に王都へ着かねばならないため、休憩も最小限に留めたかった。

「----ルカちゃん!」

「な、何だこれは……」

 王都の方角へと伸びている道なりに進み、少しひらけた場所に出た。
 そこに転がっていたのはーー。

「あのポーションか!?」

 馬車の残骸と共に、割れた小瓶が地面に数多く転がっていた。
 人は見当たらないため、魔物に襲われて逃げたのだろう。

「まさか、正規のルートだけでなくダンジョンを通って荷を運ばせていたのか? だとしたら、確信犯だな。冒険者を金で雇ったんだろう」

「次の街にルーシェント王の配下が居ると想定したのかな? 用意周到だねぇ」

「だが、魔物に襲われてはな。ハイ・ポーションでないとバレないよう、Cランク以下の冒険者を雇ったのかもしれないが……。仇となったな」

「自業自得だなー。荷も人も、大事にしてればこんなことにならないのに~」

「そうだな。……森の環境を壊す訳にもいかん。収納魔法マジック・バッグに入れておくか」

「あ!!」

「どうした?」

 声をあげるヴァルハイトを見れば、一つだけ無傷の物があったようだ。

「ふむ……、やはり青系統だな」

 やはり偽ハイ・ポーションで間違いない。
 普通のポーションなら、こんなダンジョンを突っ切って運ばず、きちんとしたルートで大事に運ぶはずだ。


「----そこに居るのは、誰です」


「「!!」」


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

未熟な最強者の逆転ゲーム

tarakomax
ファンタジー
過労死したサラリーマンが転生したのは、魔法と貴族が支配する異世界。 のんびり暮らすはずだったアーサーは、前世の知識でスローライフを満喫……するはずだった。 だが、彼が生み出した「ある商品」が、世界を揺るがすことになる。 さらに、毎日襲いかかる異様な眠気――その正体は、この世界の"禁忌"に触れる力だった!? そして彼が挑むのは、 "魔法を使ったイカサマ" に立ち向かう命がけの心理戦! ババ抜き、人狼、脱出ゲーム…… "運" すら操る者たちの「見えない嘘」を暴き、生き残れ!! スローライフ? そんなものは幻想だ!! 「勝たなきゃ、生き残れない。」 知略で運命を覆せ! これは、未熟な最強者が"逆転"に賭ける物語――!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...