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三十二 不穏①
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(うーーん)
さきほどの様子を見る限り、兄エルドナーレはとても忙しそうだった。
長い廊下をうなりながら歩く。
(今日も残業コースなのかな)
それを待つほどの時間を、施設見学で潰せるとは思えない。
怒られるの覚悟で、ひとりで帰るか。
仮に、なんらかの危険があったとしても。
それを返り討ちにする実力は、ある。
(一応、邪魔にならない程度に見学して帰ろう)
近々、また来ることになる場所だ。
最新の情報を仕入れておいても良いだろう。
魔法師団側には、魔物の研究。
魔法の研究。魔道具に地脈地域の研究。
いわゆるポーションのような魔力に関する薬の研究。
とにかく、魔力に関わることなら色々な研究をしている。
そして基本的には魔物の討伐依頼は、二階にある諜報部が請け負い、それを魔法師団と騎士団側にまわす。
窓口が別にある、実働部隊という訳だ。
まれに危険な魔物の依頼は、以前屋敷に届いたように直接届けられることもある。
まぁ、緊急なら余裕はないし、そうなる。
基本的に私や兄のような、全ての属性を備える魔法使いは稀有で、派遣される魔法使いの属性が魔物に効かない場合もある。
詠唱もしやすいこともあり、騎士団の者と共に行くのが通例だ。
……私はぜんぜん一人でいけるけど。
(さすがに依頼についてはそんなこと、ないと思うけど……)
今回の魔道具の件。
これはメーアスによれば、ライエンの命によるものだと言っていた。
それはすなわち、次期国王の命、だ。
いくらウルムの実家が保守的だからといって、国を愛するのであればいやいやながらも国王の命には従うだろう。
(まさか、第二王子派寄り……?)
ウルムが攻略キャラである以上、その家系もライエンを支えるのだと勝手に思い込んでいた。
原作でもそういう描写があるんだろうか?
(……ん?)
見学をする、と言いながらも考え込んで歩いていたため、元々入ってきた場所に戻ってきた。
そこからは大きな階段と、奥に騎士団の領域がみえる。
その階段から、ひとりの研究者が降りてくるところだ。
手には多くの資料を抱え、会議に参加していたのだろうか。
気落ちした様子で降りてくる。
「……見ろ、魔族だ」
「ちっ、この国で大きな顔できるのも今のうちだ」
……はぁ!?
私の方へやってくる研究者の背後。
私から見て正面奥にいる、巡回中らしき騎士二人。
その二人は、研究者に向けておよそ好意的とはいえない言葉を投げつける。
(な、なんだってのよ!)
衝撃だった。
要は、差別を目の当たりにしたのだ。
魔法師団としか関わらない身にとって、そんなことは今まで一度もなかった。
だいたい、違いなんてそうないでしょ!
魔法の専門家たちがその存在を認めてるのに、なんで騎士が。
は、はらたつ~!
(でも、ここでなんか言ったらこの人が……)
ただでさえ肩身が狭いであろう魔族の立場を危うくするかもしれない。
ここは、一旦我慢だ。
帰宅して、兄に事情を聞いてみよう。
そして、ユールにも。
さきほどの様子を見る限り、兄エルドナーレはとても忙しそうだった。
長い廊下をうなりながら歩く。
(今日も残業コースなのかな)
それを待つほどの時間を、施設見学で潰せるとは思えない。
怒られるの覚悟で、ひとりで帰るか。
仮に、なんらかの危険があったとしても。
それを返り討ちにする実力は、ある。
(一応、邪魔にならない程度に見学して帰ろう)
近々、また来ることになる場所だ。
最新の情報を仕入れておいても良いだろう。
魔法師団側には、魔物の研究。
魔法の研究。魔道具に地脈地域の研究。
いわゆるポーションのような魔力に関する薬の研究。
とにかく、魔力に関わることなら色々な研究をしている。
そして基本的には魔物の討伐依頼は、二階にある諜報部が請け負い、それを魔法師団と騎士団側にまわす。
窓口が別にある、実働部隊という訳だ。
まれに危険な魔物の依頼は、以前屋敷に届いたように直接届けられることもある。
まぁ、緊急なら余裕はないし、そうなる。
基本的に私や兄のような、全ての属性を備える魔法使いは稀有で、派遣される魔法使いの属性が魔物に効かない場合もある。
詠唱もしやすいこともあり、騎士団の者と共に行くのが通例だ。
……私はぜんぜん一人でいけるけど。
(さすがに依頼についてはそんなこと、ないと思うけど……)
今回の魔道具の件。
これはメーアスによれば、ライエンの命によるものだと言っていた。
それはすなわち、次期国王の命、だ。
いくらウルムの実家が保守的だからといって、国を愛するのであればいやいやながらも国王の命には従うだろう。
(まさか、第二王子派寄り……?)
ウルムが攻略キャラである以上、その家系もライエンを支えるのだと勝手に思い込んでいた。
原作でもそういう描写があるんだろうか?
(……ん?)
見学をする、と言いながらも考え込んで歩いていたため、元々入ってきた場所に戻ってきた。
そこからは大きな階段と、奥に騎士団の領域がみえる。
その階段から、ひとりの研究者が降りてくるところだ。
手には多くの資料を抱え、会議に参加していたのだろうか。
気落ちした様子で降りてくる。
「……見ろ、魔族だ」
「ちっ、この国で大きな顔できるのも今のうちだ」
……はぁ!?
私の方へやってくる研究者の背後。
私から見て正面奥にいる、巡回中らしき騎士二人。
その二人は、研究者に向けておよそ好意的とはいえない言葉を投げつける。
(な、なんだってのよ!)
衝撃だった。
要は、差別を目の当たりにしたのだ。
魔法師団としか関わらない身にとって、そんなことは今まで一度もなかった。
だいたい、違いなんてそうないでしょ!
魔法の専門家たちがその存在を認めてるのに、なんで騎士が。
は、はらたつ~!
(でも、ここでなんか言ったらこの人が……)
ただでさえ肩身が狭いであろう魔族の立場を危うくするかもしれない。
ここは、一旦我慢だ。
帰宅して、兄に事情を聞いてみよう。
そして、ユールにも。
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