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第三十五話 午後の約束
しおりを挟む「遅くなった、ウォレス。すまない」
「いいえ! 僕もちょうど今来たところです!」
……なんだか初デートの待ち合わせみたいなこと言うんだな。
午後からギルドで待ち合わせをしていた俺は、約束の時間を少し過ぎてしまった。
待合い所の椅子に座っていたウォレスは、俺を見るや否やビシッと立ち上がる。
そこまでしなくても。
「レイク様とフローリア様、……あ、俺が魔法を教えているお二人なんだが。
俺が思っている以上に優秀でな。ゼヤとルリに見解を聞いていたんだ」
「師匠が言うのでしたら、間違いなく優秀なのでしょう」
ルリとゼヤは留守番。
今日はウォレスに、『聖剣』とやらの話を聞かせる約束をしていた。
修行といってもウォレスに教えることはほとんどない。
俺は剣については素人だし、ウォレスは魔法師の条件である『創造』ができないそうだが、身体強化魔法については問題なく使えている。
精霊魔法の一種である『聖剣』を会得したいなら、『創造』は必須なんだが……。
まぁ、気長にやっていくしかない。
それはウォレスも分かっているだろう。
「どこかで昼食でも食べるか?」
「そうですね、では──」
「おい」
「「!」」
背後から男の太い声が聞こえた。
「……なんだ、貴殿は?」
わー。
たぶん、引き合わせたらいけない二人が出会ってしまった。
いきなり「おい」と。お世辞にも優しいとは言えない声のかけ方をした赤髪に対して、めちゃくちゃウォレスの視線が厳しい。
ウォレスは他人を気にするタイプの冒険者じゃないから、同じBランクでも彼のことは知らないんじゃないかな。
というか俺も名前は知らないな。
目の前には椅子から立ち上がるウォレス。
背後には赤髪剣士。
……二人の間に挟まれる、俺。
居心地がわるい。
「ジェラルド。サンロゼを拠点とするBランクだ」
「ほう?」
「お前は最近顔を見せるようになった奴だな?」
「ウォレスだ」
「! ウォレス? ……まさか」
この街を拠点にしているなら、まぁウォレスの顔までは知らなかっただろう。
けど、名前だけは知っているはずだ。
少なくても、剣士ならな。
「僕を知っているなら話は早い。不躾に失礼ではないのか?」
「はん、なるほどな。先日の件は、剣聖に近いとされる男のおこぼれだったか」
「…………あ?」
まずいいいいいいい!?
ウォレスがキレそう!?
「ウォ、ウォレス。落ち着いて……」
「オーガを討伐したとは聞いたが。
おおかた、ウォレスに強化魔法を掛けただけで自分の手柄としたんだろ」
「何を言う。僕と師匠、それぞれ一体ずつ倒した。
それに僕は彼の従魔の力も借りたんだ。むしろ彼の功績の方が大きい」
ああああああ、間違いを正すのも大事だけど、持ち上げすぎるのもヤメテェ!
徐々にギャラリーが出来始める。
周りを盗み見れば、両方の言い分どちらを信じればいいか迷っている様子だ。
「師匠?」
「僕より遥かに優れたお方をそう呼んでいるだけだが?」
やめてええええぇぇぇ!!
「ハハハ!! そりゃぁ、いい。オレも習ってみたいもんだなぁ? ええ?
モルドランさんよぉ!」
ま、まずい。
ゼヤがいないからか、煽りがいつにも増してすごい。
俺はともかく、ウォレスが──。
「──愚かだな」
「あぁ?」
「何をそんなに怯えている? この街で築き上げた己の地位が、師匠に奪われるのが怖いのか?」
「え?」
それで、いつも突っ掛かってきてたのか?
「ッ、なワケ──」
「矮小だな。強者を認めず。素直に教えを乞うこともできないとは……なんとも哀れだ」
ウォレスの煽りもすごいことに……ッ。
「て、てめぇ!!」
「表へ出ろ。師匠の弟子である僕が、その性根叩きのめしてやる」
「上等だぁオラァ!!」
な、なんで────!!??
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本作を気に入っていただき、ありがとうございます!
Kukuri様
感想ありがとうございます!
大好きと言って頂けてとっても嬉しいです(*´ω`)
とにかく色んなかわいいを詰め込んだので、その甲斐がありました(笑)
現在他サイトコンテスト用の書き貯めと並行しており、頻度が下がっておりますが引き続きお楽しみいただけるよう更新して参ります。