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第三十四話 成長

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「も、もう花が!?」
『でしーーー!?』

 翌日、なんだか久しぶりに思える授業。
 午前中いつもの時間にレイクとフローリアに会えば、やっと『帰ってきた』と実感する。

 座学を終え、いつものように庭に出てきたものの。
 手伝いを兼ねて植えた花の苗には、すでに鮮やかな紫と薄いピンクの花が咲いていた。
 あれ、バーナードは紫色の花なんて言ってたか……?

「まぁ……!」
「すごい! リアのおかげなのかな?」
「い、いいえ。そんな。レイクさまが魔法で水をあげていたからでしょう」
「けんそんしないでいいよ、リア」

 二人の周りは別世界。
 なんだか花びらが舞っているように見える。

 あぁ、癒される。

 オーガなんて可愛くもなんともない顔は二度と見なくていい。
 そう、今の俺に必要なのはこの時間なのだ。

「しかし、色が変わるなんて……精霊か?」
『でしかねぇ~』
「さぁな」

 聖獣と大精霊が分からないなら、俺に分かるはずもない。

 フローリアの魔力を気に入った精霊が、いたずらでもしたんだろうか?

「リアは、きのうお仕事どうだった?」
「はい、お父さまの代わりにりっぱに務めましたわ」
「? フローリア様、何をなさっていたのですか?」
「さいきんお父さまはご多忙でして。新たにウィンドローズ領で商いをはじめた商人たちを、わたくしが招いて茶会を開きましたの」

 6歳にしてもうそんなことやってるのか……、さすが領都を取り仕切る一家。すごいな。

「交流会みたいなものですか」
「はい。商売はもとより、つつがなく領で生活していただきたいですから」
「リアはすごいなぁ」
「レ、レイクさまこそ! ライネリオさまの留守を、よく守っていらっしゃいますわ!」
「えへへ。……そうかな?」
「もちろんですわ!」
「ヴィクターとかが優秀だからだよ」

 照れがちなレイク、やはり推せる。
 しかしフローリアのその言い方だと、夫人は表立って領の仕事をしていないのか?

「あ、モルドせんせー!」
「はい? なんでしょう」
「セイレンさん、ってごぞんじですか?」
「!?」
『ミエー!?』
「……」

 せ、セイレン!?
 なんでその名前が!?

「え、えぇ。まぁ」
「モルドせんせーの、ご友人とうかがいました」
「そ、そうですね。友人、です」

 ゼヤも友人で通しているから、そうとも言えるだろう。

「! やっぱり、そうでしたか。よかったです!」

 何がよかったんだ!?

「レイクさま、それはどなたですの?」
「水色の髪をした、きれいなお兄さん。
 モルドせんせーが留守の間、部屋を借りていたんだって」

 あぁ、そういう設定なのね……。
 というか、レイクの前に姿を現してどういうつもりなんだ?

『セイレンさま、どういうことでしか~~!?』
「ふん」

 まさか、ゼヤを羨ましがって!?

「とにかく、安心しました。てっきり怪しい人が屋敷にしんにゅうしたのかと思いました」
「あはは……」

 な、何とも言えない。

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