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第三十二話 きれいなおにいさん【レイク視点】

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「レイク様、休憩なさいますか?」
「うん、そうするよ」

 今日はフローリアがいえのしごとでおやすみ。
 モルドせんせーのじゅぎょうもおやすみ。
 なんだかたのしみがいっきになくなっちゃったな……。

 それでもおべんきょうすべきことはたくさん。
 せめてきゅうけいのじかんに、魔法のれんしゅうをしようかな!

 へやから外にでると、けいびの騎士たちがくんれんをしてる。
 いいなぁ。ぼくも、剣をならってみたいなぁ。
 もうすこし力がついたらけいこをつけてくれると父さまはおっしゃっていたけど……。いつになるんだろう。
 からだをきょうかする魔法も、剣のけいこがはじまったらいっしょにおしえてくれるって約束してたんだけどな……。いつになるんだろう。

 ……ううん、いまはとにかく水魔法! 
 せっかくてきせいが分かって、すごいまどうしのせんせーがじゅぎょうしてくれるんだ。
 こっそりれんしゅうして、せんせーをおどろかせたいな……!

「あれ」

 手から水をだすれんしゅうのために、にわの池に来たら……なにかういてる。
 なんだろう?
 しろい、……シーツ?

「風でとんできたのかな?」

 なんだかしずんでいってる気がする……!
 ど、どうしよう!

「な、なにか棒はないかな」

 まわりを見てみるけど、なんにもない。
 ぼくが手をのばしたって、ぜんぜんとどかないし……どうしよう。

「──おや、危ないですよ」
「え?」

 手をのばしてとろうとしてると、おなかのぶぶんがあったかくなった。
 うしろをみたら、──とってもきれいなおにいさん!
 みずいろのながーい髪。めずらしくって、きれい。
 でも、いえにこんな人いたかな?
 だ、だれだろう……。

「ど、どなたでしょう?」
「私ですか? ふふ、さぁ。だれでしょう」

 あ、あやしい──!?

「ヴィ、」
「モルドの友人、と言えばお許しいただけますか? レイク様」
「……え? せんせーの?」

 ほんとうかなぁ?
 あ、でも、ぼくのなまえ知ってる……。

「はい。今は彼が留守ですので、私が代わりに部屋をお借りしているんです」
「そうだったんですか? うーん」

 ヴィクターはそんなこと言ってなかったような……?
 あ、でも。ゼヤさんのことは、父さまもヴィクターもせんせーの友人だから、屋敷で好きにしていいって言ってたような。
 どうしよう。せんせーに聞けたらいちばんいいんだけど。

「……ところで、母君はお元気ですか?」
「!!」

 な、なんで!?
 せんせーにも母さまのことはいってないのに……!

「え、ええ。げんきです」
「そうですか。それはよかった」

 にっこりとおにいさんはわらう。
 あやしい……けど、ほんとうにきれいな人だなぁ。
 ていねいな人だし、ほんとうにせんせーのご友人ならいいのに。

「──レイクさまー!」
「あっ」
「おや、屋敷の方ですね」

 侍女のエレナがぼくをさがしてるみたいだ。
 家にいなかったから、外まで来てくれたのかな。

「あ、あの」
「はい、どうぞ」
「え!?」
「濡れているので、ご注意ください」

 おにいさんの手には、さっきまでとろうとがんばってたシーツ。
 びしょぬれだけど、まちがいない。
 とっくにしずんでしまったと思ったのに!

「どうやって……?」
「ふふ。内緒です」

 おにいさんが魔法をつかったようすはなかったけど……。

「そうそう、申し遅れました。セイレンと申します」
「せ、セイレンさん」
「はい」

 おだやかに笑うおにいさんは、うそをいってるかんじじゃない。
 そもそもわるい人が家にはいれるわけないし……。
 せんせーのご友人ってこと、しんじてもいいのかな?

「ぼくは、えっと。あらためまして、レイクです」
「よろしくお願い致します、レイク様」
「う、うん。その……、また、あえますか?」
「えぇ、もちろんです」

 おにいさんが笑うと、なんだかふわふわする。
 まっすぐみれないというか……。
 フローリアが笑うのとはまたちがう、なんだろう?
 うーん。

「レイクさま! お探ししましたよ」
「あ、エレナ」

 かんがえてたら、エレナがすぐそばまでやってきた。

「……? お一人で何をなさっていたのですか?」
「え?」

 エレナのほうをふりかえっただけなのに、めのまえにいたはずのセイレンさんがもういない。

「あれ?」
「あ、風で飛んだシーツを取ってくださったのですね。ありがとうございます」
「う、うん……」

 なんとなく、せんせーにきくまではセイレンさんのことはいわない方がいい気がする。

 また、あえるかな。

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