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第三十話 新たな弟子?
しおりを挟む「そ、それって……『聖剣』でしょうか!?」
「……へ?」
ウォレスがなにやら興奮気味に駆け寄ってきた。
というかしっかりオーガを倒すあたり、さすがだな。
「せいけん?」
「!? ご存知、ない!? もしや……無意識で!?」
「お、おう?」
……? ウォレスって、こんなアツいキャラだったか?
「精霊魔法の極致! 魔法剣士の憧れ! ……いや、魔法師だろうが剣士だろうが焦がれてやまない、大精霊に認められた証です!!」
「そうなのか?」
ヴァルロードはそんなこと一言も言ってなかったが……。
いや、たしかに「一番イイ!」とは言っていたな。
ゼヤは我関せずの精神で明後日の方向を見ている。
「彼らが人の元へ遣わす分身が聖獣なら、その力を人に託したのが聖剣です!
そして、それを扱うには生半可な修行では身に付かないはず……。モルド、……いえ。
────師匠と呼ばせてください!!!!」
「ええぇぇ!?」
どうしてこうなった。
『モルドー♪ ほめてでし~』
興奮するウォレスの後ろから、ルリが帰ってきた。
「ルリ。ちゃんとウォレスの言うこと聞けたか?」
『あいっ』
「いい子だな」
『~♪』
肩に乗ってきたルリを撫でてやれば、気持ちよさそうに目を細める。
あぁ、癒されるな……。
「! そうです、師匠! ルリは何者なのですか!?」
「師匠は決定事項なのか……? ええと、俺の従魔で、水うさぎで、風うさぎの特徴も併せ持つ、変わった辺境うさぎ?」
「なるほど、変異種ですか! ……どうりで素晴らしい魔法を使うわけだ」
「た、たぶん……」
言えない。
聖剣にめちゃめちゃ興奮してるウォレスに、このうえ聖獣だなんて言ったらどうなるか……。
「不肖ウォレス、さきほどの発言を撤回いたします」
「どれ?」
「『滅竜』は低俗な集団と言ってしまいましたが……。僕が愚かでした。
他の奴らはともかく、あなたこそ! 魔導師の名に相応しいお方。正真正銘、最高の魔法師です!!」
「あ、ありがとな……」
このアツさ、どこかで感じた気がするのは気のせいだろうか。
「それに、一瞬だけですがそちらの方の魔法も拝見しました。
闇魔法。それも、相手の影を利用するなんて……とても高度な魔法です。
ゼヤ殿も、やはり師匠の弟子なのですか?」
い、言えない……。
この人こそ大精霊だなんて、言えない──!!
「え、ええぇ? 弟子だなんて、そんな。魔法師繋がりの友人さ~」
なんか動揺しすぎて俺もキャラが変わってきた。
「弟子……、悪くないな」
ゼヤまでノるな!!
「そうでしたか! いえ、どちらにせよ素晴らしい魔法師の元には、やはり素晴らしい魔法師が集うのだと感服した次第です」
「そ、そう? 大げさだなぁ~」
「なんと謙虚な……!
ゼヤ殿ほどの魔法師すら今の冒険者には珍しいというのに……」
俺のやることなすこと全部美化してる気がする。
このままじゃ埒があかない。
「あ、ほら。ウォレスはさ、いろんな所巡ってるんだろ?
俺は今、デュナメリ家の家庭教師だから……。弟子はとれないかなぁ、なんて」
「ご心配なく。修行として各地に赴いているだけで、腰を据える冒険者ということになんら抵抗はありません」
「そ、そうなんだ~」
ダメだ。何を言っても弟子決定な気がする……!
「……はぁ。分かったよ。俺でよければ、教えられることは教えよう」
「!! 本当ですか!? ありがとうございます!」
あれだけクールだった美青年が、今や満開の花が咲いたような笑顔を向けてくれる。
うん。ある意味、尊い。
笑顔っていいよな。
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