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第二十八話 VSオーガ【ウォレス視点】

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「ルリ、あなたは僕の言葉が理解できると考えてよろしいですか?」
『んみみ!』
「っ、そ、そうですか。分かりました。では、僕が奴を引きつけている間──」

 このかわ……、モルドの従魔であるルリはどうやら賢い。
 水うさぎの知能がそれほど高いとは知らなかったが……、おおかた魔導師モルドに鍛えられたのだろう。

 オーガ相手に、力任せでは押し負ける。
 だが、ルリが氷魔法を使えるのであれば、僕の剣技も活かしやすいというもの。

「参る」

 剣を構え、ニタニタと笑いを浮かべながら迫りくるオーガを見据えた。

「っし!」

 先手必勝。
 足元に、身体強化のため魔力を集中。
 低く踏み込んだ先にはオーガの太い脚。

 まずは一閃。脚を狙いにいく。

『グ……?』
「! 硬いな」

 刃こぼれしそうなほどに押し返された愛剣は、申し訳なさそうに甲高い声をあげた。
 オーガには傷どころか、痛みも伝わっていないのか?

 後ろに回り、次いで守りの甘そうな脇腹を掠める。

「手ごたえあり……だが」

 脇腹を掠めた筋には、鮮血が浮かび上がった。
 それでも大きな傷は与えられない。

『グルゥアアアアアー!!』

 痛みは伴ったようで、オーガはその怒りを露わにする。
 いいぞ、その調子だ。
 もっと僕に怒り狂うといい。

「【我が剣に斬れぬものはなし】」

 呼吸を整え、内なる魔力を認識し。足元に集めていた魔力を、今度は刃へと集中させた。
 足元から胸、肩から腕、腕から手へと伝い、その延長にあると認識させる。
 顔の前に掲げた愛剣は、その輝きを増した。

「どうした、怖気づいたか?」
『!!』

 軽く挑発をしてやれば、簡単に乗ってくる。
 太い丸太を軽々と操るその腕力には恐れ入る……が。

「当たらなければ、ないにも等しい」

 僕の軌道をなぞるように、上から振り下ろし、下から振り上げ。
 横から薙ぎ払い、上からたたきつける。
 それらを難なく躱し、ある場所へと誘導する。

「────ここだ! ルリ!」
『ぷぅ~~~~!』

 村のあちこちで散乱していた水。
 飲料水、あるいは農作業用の水瓶が倒れて溢れたそれをルリが水魔法で一か所に集めていた。

『!?』

 水音が響く場所に誘導されるとオーガはようやく異変に気付く。

「もう遅い」

 僕目掛けて振り下ろした丸太は、水溜まりを割る。
 その瞬間にルリは氷魔法を発動させ、脚と丸太を地面に氷で固定させた。

「──はあぁ!」

 魔力によって硬度を増した愛剣は、いとも簡単に腕を切り裂いた。

『ガアアアァァ!!??』
「終わりだ」

 丸太から手を離し、バランスを崩したオーガの首筋に狙いを定め、

『ガッ──』
「ふん」

 刃にまとわりついた鮮血を、軽く振り払った。

『ンミーーー!!』
「っ!?」

 オーガが重い音と共に崩れ去ると、ルリが胸元に飛び込んできた。

「ぐっ……!」

 なんだ、この生物は……!!
 こんな愛らしい従魔、見たことが無い!

『ぷぅぷぅ!』
「? モルド?」

 そういえば、あちらはどうなっているだろうか。

「!! あ、あれは──っ」


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