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第二十二話 急ぎの依頼……?

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「!」
「!!」
「!!??」
「あ、あの……」

 デジャヴ。
 手紙はタイミングが合わずに通常の馬車便で出し終えて、冒険者ギルドにそのまま直行した。
 ら、また受付の三人が固まった。

「ルリちゃんだけじゃ……ない!?」
『でし!』

 元気な受付嬢は今日も思ったことをすぐ声に出す。

「あ、あー。なんだろう……ゆ、友人……?」

 大精霊とは言えない。
 かといって、冒険者登録しているわけじゃない。
 となれば、一緒に依頼を受けようとしている以上、そう言う他ない。
 依頼手伝ってくれる友人って……なんだ?

「──っ!」
「ゼヤ?」

 横に並ぶゼヤの肩がビクッと大きく揺れたので、顔を見てみると……。

 嬉しそう。
 すっっっごい嬉しそう。
 表情には出さないように必死で照れ、内側からにじみ出るような……多分、他の人じゃ気付けないだろうけど。
 なんか、耳と尻尾が見える気がする。
 全身真っ黒、大きい身体に、クーデレ。

 分かった。あれだ、ドーベルマン!?

「ご、ご友人でしたか!? それはまた、モルドさんといい、ルリちゃんといい、目を惹きますね!」
「はぁ……」

 その並びに俺は入らないと思うが。

「ふだんもう少し遅くにお見えだと思いましたが、今日はお時間があったんですか?」
「あぁ。午前の予定がなくなったんだ」
「そうでしたか! こちらとしては助かりますとも!」
「そ、そうか」

 相変わらず元気で圧が強い。

「何か急ぎの依頼はあるか? なければ依頼ボードから探すが」

 いつも午後から来ることになるため、緊急性の高い依頼は他の冒険者たちが引き受けているはずだ。
 今日は早い時間のため、念のため聞いてみることに。

「!! でしたら、ぜひ! お願いしたい案件が!」
「お、おう」

 カウンターから前のめり気味で言われると、さらに圧が増す。

『なんでしなんでしー』

 ルリも興味津々に俺の肩で立ち上がって鼻をピスピスし始めた。
 だから毎度かわいいんだって。

「その、モルドさんはご存知か分からないんですが、ウィンドローズ領内には大規模な農地がいくつかありまして」
「主な産業とは聞いている」
「はい。それで、この領は王国の北東部。エルフたちの自治領を隔てて、他の国と面する……王国の中でも重要な土地です。ですがまだまだ未開拓の地も多く、人が集まる集落も数えるほどです。そのため、魔物討伐の依頼も多い。冒険者がサンロゼに集まるのもこれが主な理由です」
「なるほどな」

 やはり、土地の満ちる魔力が豊富なことに加え、局所的な人口が少ないと守りに欠けるのか。

「大規模な農地には、管理する者たちが集まる農村が近くにあります。
 そこに魔物討伐の依頼を受けた冒険者や、領主直属の騎士たちが滞在しているのですが……」
「なにか問題が?」
「はい。その……、ある農村にゴブリンの群れが出現し、占拠されてしまったんです」
「!」
『ミエーーー!?』
「……」
「幸い、元々滞在していた冒険者と騎士たちが住民の避難を最優先したため、怪我人は最小限に留まりました」
「そうか……」

 ゴブリンが村を占拠……? 暴れまわることが目的ではない、か。
 一匹一匹の戦闘力はさほどないにしても、数が多いのは厄介だ。
 村人ではなく農地を占拠する理由……。風舞の花とまではいかなくても、この土地で育った作物は……もしかすれば魔物にとってもイイ物なのかもしれないな。

「実はこちらの討伐依頼は、既に引き受けられているんです」
「え? じゃぁ、……」

 俺に頼みたいことって……?

「はい。引き受けてくださった方はBランク。高名な方で、実力は申し分ないのですが……。ただ、その……ソロの方なんです」
「えぇ!?」
『ぴゃーー!?』
「ほう」
「あ、危なくないのか?」
「もちろん、私たちも止めましたよ! 臨時でパーティを組んだり、報酬を折半して別のパーティと一緒に受けたり。いろいろ方法は提案したんですが、「一人で問題ない」の一点張りでして……」

 それはいくらなんでも無謀な気がするが……。ギルドが渋々ながら依頼を受けさせたのは、よほどの実力者か? それとも対ゴブリンに手慣れているのか。

「ちなみに数は?」
「ゴブリンが二十体とのことです」

 二十……! けっこうな数だぞ。
 それを一人でどうにか出来るのか?

「一昨日に依頼を受けていただいて、討伐に要する期間として三日を提示されました。
 恐らくゴブリンたちを分断する作戦を立て、一気に倒す……と考えられたのかと」
「今日が三日目か」

 その村までは馬車で二時間。
 移動日に行動を起こしているなら、今日中にケリをつけるんだろう。

「どうするんだ?」
『でしっ』
「行くしかないだろう」

 順調に事が進んでいることを祈るが、万が一ということもある。
 それに依頼はともかく、荒らされた村を復興するのに人手がいるだろう。
 幸い、明日も授業は休みだ。

「俺たちが着いてケリがついていれば、報酬は要らない。
 その依頼、受けよう」
「っ! ありがとうございます!!」

 受付嬢は興奮のあまり、依頼書を手渡す際に思いっきり俺の腕をぶんぶん振った。
 い、いたい……。

「ゴブリンとはいえ、準備は怠らないようにな」
「ふん」
『ルリもがんばるでし!』
「お?」

 そういえばルリは授業中、水浴び要員。だが、一応とはいえ聖獣だもんな。
 忘れるところだった。

「ゴブリン相手なら火が有効だな。いくつか作戦を練っておくか」

 ルリには火が燃え移らないよう、消火活動してもらおうか?

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