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第0章

ジョンはまだこの世界の猫を知らない

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目が覚めると朝日が登っていた。
ギャン泣きして疲れた俺はそのまますやりと眠ってしまったらしい。
落ち着いた俺は今後の相談をする事にした。
「そういやずっとドラゴンって呼ぶわけにもいかないよね。なんて名前なの?」

「ルナティオウスだ。だが、人間は大抵畏敬の念を込めて銀龍様と呼ぶ。」

「長いね、テオでいい?」

「お前って奴は、本当に!話を、聞かんな!!!」

「ダメ?」

「ま、まぁ我はお前の保護者だからな。これから沢山名前を呼ぶ機会もあるだろう、仕方ない許してやる。」

ちょっと照れたようにテオは目を背ける。

「俺の名前はジョン、改めてよろしく。」

俺は人生で初めてドラゴンと握手した。



「ではとりあえずここから1番近い都市へと向かう。我に乗って行けば1日で着くが目立つのは良く無いだろう?だから徒歩になる。」

ドラゴンってこの世界でも街中に行けば目立つくらいには珍しいんだな。確か上位存在って言ってたし世界で何体くらいいるんだろうか。

「徒歩で行っても目立つんじゃないか?むしろ子供と一緒によちよち歩いてるドラゴンの方が人の目につくでしょ。」

「そこでだ。」

テオは何やら人間には聞き取れない言語を話しだした。

すると、当たりが突然煙に包まれる。ごほごほとむせながらも煙が晴れた先を目を凝らして見つめると、

「猫?」

そこにはロシアンブルーのような見た目の猫がちょこんと座っていた。

「我だ。」

「うわあ!猫が喋ったぁぁ。」

「ドラゴンが喋っても普通に受け入れていたのになぜ猫の時は驚くのだ。」

あっ、ドラゴンってやっぱ普通喋らないんだ。

「猫という生き物は人間に寄り添って生きる生物の中では最も高貴で、その多くは人間に崇められるだけではなく神の寵愛すらも受けているのだ。どうだ?上位存在たる我が変化するに相応しいだろう。」

腹を出しごろごろと音を立てながらテオは自慢げに猫の説明を続ける。だめだ、もふもふがごろごろにゃんにゃんで話が頭に全然入ってこないにゃん。

「また話を聞いていないのか?」

「も,もちろん聞いてるもふもふ!猫だったら確かに違和感ないよねもふもふ!」

「お前がもふもふしたいことだけはよくわかった。が、調子に乗らせるわけにもいかないから魔力検査が終わるまでお預けだ。」

「そんな殺生な!」


その後俺は何日も隙あればもふもふしようとしてテオの猫パンチを食らう、を何度も繰り返し目的地の大都市セレスに着く頃には2人とも満身創痍だった。

「なんか見た目だけだと俺歴戦の勇者って感じしない?」

「肉球の痕がつきまくっている勇者などいてたまるか!」
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