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シルバー空挺団

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 シルバー空挺団のシルバーはサラマンダーの棲みついたクリスタルパレスを目指す。
 シルバーは嫌味な男かと思いきや、11人の仲間からは絶大な信頼を得ていた。
 側近であり第一の部下である元芸人のアクタがねぎらう。

 今から5年前、アクタこと半次郎の所属していた芸人一座の地方巡業の旅の途中、野盗団に襲われた。
 アクタを残して他の団員は全員斬り殺される。
 アクタも命を諦めたところ、1人であるのにも関わらず果敢に乗り込み助太刀をした銀次の男気に惚れて以来ずっと旅を共にしている。

「お疲れさまでした、銀次さん」
「その名前は捨てた既に名前だ。今はシルバーで頼む」
「すいませんでした、シルバーさん。やはりリサとマイカの勧誘は無理でしたか?」
「素っ気なく断られたわ。実力不足と言われてな」

 実際、シルバー空挺団で実力者と呼ばれる者は一人もいない。
 チームメンバー全員、一般の冒険者と言って差支えがない。
 個々の実力はないが、シルバーを中心に固い絆で結ばれた連携力が売りである。
 連携力で各々の欠点を埋め合い、スキのない連携。
 そのおかげでバーナリアの冒険者ギルドNo.3のチームにまで上り詰めた。

「実力不足ですか? 僕らの強さの売りはシルバーさんの統率力なのに……」
「メンバー個々で見たら実力不足なのは事実だからな。俺たちに足りてない火力持ちのあの2人が俺のチームに加入してくれたらギルドNo.1のチームを目指せるのにな!」

 シルバーは眼下の広がる大地を見つめる。
 たった数年前までシルバーはあの大地の中の町の一つで無力な男として燻っていた。
 シルバーを慕う仲間たちに応援され、冒険者チームを立ち上げ、空を駆け巡る船まで手に入れた。
 そこまで信頼されているのならば、仲間の期待に応えてやろうじゃないか!
 冒険者の頂点まであと少し!
 もう、手に入る高みにまでやってきた!
 あと少し、あと少しなんだ!
 やってやるぜ!
 仲間の期待に応えるために!

「貴族階級の廃止で貴族の息子という権威を失い、腐っていた俺を慕いイーストライトかここまで着いてきてくれたお前たちに頂点という夢を見せてやるのが俺の夢さ」
「シルバーさん!」
「俺たち、絶対に着いていきます!」
「俺も!」
「私も!」

 ボロ泣きする半次郎と仲間たちだった。

 *

 飛空艇『蒼天丸』はクリスタルパレスを目指す。

「あと少しで、サラマンダーの巣に着くぞ。みんな戦闘準備を怠るなよ!」
「おう!」

 その時、警報と叫び声が……。
 航海士の菫《ビオラ》だ。
 精霊の森《スピリタス・フォレスト》に差し掛かったところで、精霊たちの手荒い歓迎が始まった。

「前方より敵弾多数! 広範囲に渡る攻撃なので回避できません!」

 シルバーが吠える!

「怯むな、お前ら! あんな癇癪玉《かんしゃくだま》なぞ、無敵の防御を誇る蒼天丸の多重結界を貫通できん!」

 多重結界とは機関士の秀忠《ハイド》の考案した結界だ。
 通常、飛空艇や飛竜などの大きな飛行物の場合、高等級の魔導士による巨大な防御結界が必要である。
 でも高等級の魔導士など簡単に見つからないし、報酬もそれなりに掛かる。
 それに代わるものとして、アイテムで張れる小さな結界を弾幕のように何層にも無数に張り巡らせることで、大結界と同じ効果を持たせたのが多重結界である。
 一発の威力の強大な攻撃には無力だが、今回の弾幕のような一発一発の威力の小さな攻撃には大結界以上の防御力を誇るのだ。

「ほら見てみろ! あんな癇癪玉は多重結界で全て相殺し――――」

 重い爆音が鳴り船体が傾いた。

「嘘だろ? 10層にも張り巡らせた結界を敵弾がすり抜けただと?」

 10層にも及ぶ多重結界の隙を敵弾抜けることは実際にはありえない確率だ。
 だが、アーキの幸運が牙を向き、シルバーに襲い掛かっていた。
 しかも最悪の事態に向けて……。

「浮遊エンジン破損です。浮遊力低下、このままでは墜落します!」
「やばいっす、シルバーさん! 浮遊エンジンが破壊されたら、この巨大な船体を飛竜が支えるのは無理です!」
「防御結界に全魔力を注げ! こう見えても俺には幸運の女神が付いているんだ! 絶対に助かる!」

 だが、幸運の女神よりも強い、神をも超えるアーキの幸運の前ではシルバーの幸運の女神なぞ赤子のようであった。
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