23 / 55
ホムの困惑
しおりを挟む
昨日夜中にホムに叩き起こされてからすっかり目が覚めてしまった僕。
騒動を解決し、ベッドに潜り込みやっと寝れたかな?と思ったら、ホムがドアを蹴破る勢いで再び飛び込んできた。
「アーキ、大変。助けて!」
この慌てように真剣な顔。
嫌な予感しかしない。
蘇生したはずの師匠がまた死んだ?
ホムに連れられてやってきたのはキッチン。
師匠の部屋ではなくてそっと胸を撫で下ろす。
「ホム、なにに困ってるの?」
「ガスも電気も止まってるの」
ガス?
電気?
「それってなに?」
ガスは火を起こす燃料油みたいなもの。
気体で管を通ってキッチンまでやってきて調理器具に火を起こす。
電気は光を起こす魔力燃料みたいなもので、目には見えないけど触ると痺れたり焦げたりする危険なものだそうだ。
電気は銅や鉄でできた線を伝わってやってくる。
そう、僕に説明したホム。
どうりで昨日と比べると照明が消えていて部屋が薄暗い。
でも、僕よりもずっと詳しいのになんで聞いてくるの?
「こんなことになったのは初めてで、ホムはどうすればいいのかわからない。一番大切な人に相談したらダメ?」
僕を一番大切な人と言って頼ってくれるのは嬉しい。
錬金術でどうにかなればしたいんだけど、ガスと電気の仕組みがよくわからないしな。
ここは一番詳しそうな師匠に聞くしかないと、師匠の部屋を訪れる。
師匠は昨日冷たくなっていたのがまるで嘘のように大いびきを掻いて熟睡していた。
ホムはベッドの横に置いてある水差しを手に取ると、師匠の顔目掛けて水を注いだ。
ほ、ホムさん、な、なにしてるの?
「あひゃ! な、なんじゃ!」
師匠もこれにはビックリ。
顔に水を注がれたので一瞬で目が覚めて飛び起きた。
まあ、普通そんなことをされたら誰だって同じ反応するよね。
師匠は結構歳を取っているので驚き過ぎてショック死しないか心配だ。
「だいじょうぶ。急ぎの時はこうして起こしてと、マーリン様がホムに言った」
そう言われてても、普通に揺り起こしたりして起こす努力をしてからにしようよ。
飛び起きた師匠は僕たちがベッドの傍に立っていたのに気が付き聞いてくる。
「な、なにが起こったんじゃ?」
「マーリン様、たいへんなの?」
「どうしたんじゃ、ホム」
「ガスも電気も止まってるの」
「なぬ? フェアリーが寝坊でもしてるのかの?」
師匠によると電気もガスも担当のフェアリーさんが作ってくれているらしい。
この屋敷の生活で必要なものを作り出してくれているフェアリーさんたちの住む離れが庭にあるとのこと。
さっそく離れへと向かう僕たち。
電気とガスの供給の再開をしてもらおうと思ったんだけど……。
「ありゃ? 屋敷がもぬけの空じゃ」
いつもは少し窮屈なぐらい多くのフェアリーさんたちが住んでるはずの屋敷から一人もいなくなっていた。
時計が時を刻む音だけが聞こえてくる。
これには師匠も目を丸くして驚いている。
「いったい、どうなっとるんじゃ? ガスと電気の担当どころか、フェアリーが一人もおらんぞ」
「これじゃ、ホムはごはんを作れない」
「ごはんなら僕が作りますよ」
「できるのか?」
「朝ごはんぐらいなら僕に任せてください」
幸いなことに錬金術道具を持っている僕。
錬金術と料理は共通点が多い。
刻んで煮て……料理の基本だ。
パンを火で炙り、バターを塗る。
ベーコンと卵をフライパンで焼く。
コーヒーをろ過器で淹《い》れる。
錬金術士風モーニングセットの出来上がりだ。
さっそく料理を口にした二人は気に入ってくれたみたい。
「ホム、これ、すき」
「わしも気に入った!」
錬金術だけじゃなく、料理も褒められると結構うれしい。
「また作りますよ」
「ホム、うれしい」
「わしもじゃ」
僕らは朝ごはんを堪能する。
*
「ところでマーリン様、朝ご飯はアーキに作ってもらって食べられたんですけど、調べてみたら、ガスも電気の他に水道も止まっていました。これから炊事仕事はどうすればいいんでしょうか?」
さすがに、コンロ代わりの炉が一つしかないので夕ご飯を錬金術セットで作るのは少し厳しいかもしれない。
「水道もか……フェアリーが皆居なくなったんじゃから当然かの……」
師匠は長く白い顎髭を撫でつけながら考え込む。
そんなとこに女の人の声が……。
「あらあら、たいへんね」
「ウィスダムじゃないか。久しぶりじゃのう」
そこにはとっても露出度の高い魔女のような服装の、とってもグラマラスなお姉さんが立っていた。
騒動を解決し、ベッドに潜り込みやっと寝れたかな?と思ったら、ホムがドアを蹴破る勢いで再び飛び込んできた。
「アーキ、大変。助けて!」
この慌てように真剣な顔。
嫌な予感しかしない。
蘇生したはずの師匠がまた死んだ?
ホムに連れられてやってきたのはキッチン。
師匠の部屋ではなくてそっと胸を撫で下ろす。
「ホム、なにに困ってるの?」
「ガスも電気も止まってるの」
ガス?
電気?
「それってなに?」
ガスは火を起こす燃料油みたいなもの。
気体で管を通ってキッチンまでやってきて調理器具に火を起こす。
電気は光を起こす魔力燃料みたいなもので、目には見えないけど触ると痺れたり焦げたりする危険なものだそうだ。
電気は銅や鉄でできた線を伝わってやってくる。
そう、僕に説明したホム。
どうりで昨日と比べると照明が消えていて部屋が薄暗い。
でも、僕よりもずっと詳しいのになんで聞いてくるの?
「こんなことになったのは初めてで、ホムはどうすればいいのかわからない。一番大切な人に相談したらダメ?」
僕を一番大切な人と言って頼ってくれるのは嬉しい。
錬金術でどうにかなればしたいんだけど、ガスと電気の仕組みがよくわからないしな。
ここは一番詳しそうな師匠に聞くしかないと、師匠の部屋を訪れる。
師匠は昨日冷たくなっていたのがまるで嘘のように大いびきを掻いて熟睡していた。
ホムはベッドの横に置いてある水差しを手に取ると、師匠の顔目掛けて水を注いだ。
ほ、ホムさん、な、なにしてるの?
「あひゃ! な、なんじゃ!」
師匠もこれにはビックリ。
顔に水を注がれたので一瞬で目が覚めて飛び起きた。
まあ、普通そんなことをされたら誰だって同じ反応するよね。
師匠は結構歳を取っているので驚き過ぎてショック死しないか心配だ。
「だいじょうぶ。急ぎの時はこうして起こしてと、マーリン様がホムに言った」
そう言われてても、普通に揺り起こしたりして起こす努力をしてからにしようよ。
飛び起きた師匠は僕たちがベッドの傍に立っていたのに気が付き聞いてくる。
「な、なにが起こったんじゃ?」
「マーリン様、たいへんなの?」
「どうしたんじゃ、ホム」
「ガスも電気も止まってるの」
「なぬ? フェアリーが寝坊でもしてるのかの?」
師匠によると電気もガスも担当のフェアリーさんが作ってくれているらしい。
この屋敷の生活で必要なものを作り出してくれているフェアリーさんたちの住む離れが庭にあるとのこと。
さっそく離れへと向かう僕たち。
電気とガスの供給の再開をしてもらおうと思ったんだけど……。
「ありゃ? 屋敷がもぬけの空じゃ」
いつもは少し窮屈なぐらい多くのフェアリーさんたちが住んでるはずの屋敷から一人もいなくなっていた。
時計が時を刻む音だけが聞こえてくる。
これには師匠も目を丸くして驚いている。
「いったい、どうなっとるんじゃ? ガスと電気の担当どころか、フェアリーが一人もおらんぞ」
「これじゃ、ホムはごはんを作れない」
「ごはんなら僕が作りますよ」
「できるのか?」
「朝ごはんぐらいなら僕に任せてください」
幸いなことに錬金術道具を持っている僕。
錬金術と料理は共通点が多い。
刻んで煮て……料理の基本だ。
パンを火で炙り、バターを塗る。
ベーコンと卵をフライパンで焼く。
コーヒーをろ過器で淹《い》れる。
錬金術士風モーニングセットの出来上がりだ。
さっそく料理を口にした二人は気に入ってくれたみたい。
「ホム、これ、すき」
「わしも気に入った!」
錬金術だけじゃなく、料理も褒められると結構うれしい。
「また作りますよ」
「ホム、うれしい」
「わしもじゃ」
僕らは朝ごはんを堪能する。
*
「ところでマーリン様、朝ご飯はアーキに作ってもらって食べられたんですけど、調べてみたら、ガスも電気の他に水道も止まっていました。これから炊事仕事はどうすればいいんでしょうか?」
さすがに、コンロ代わりの炉が一つしかないので夕ご飯を錬金術セットで作るのは少し厳しいかもしれない。
「水道もか……フェアリーが皆居なくなったんじゃから当然かの……」
師匠は長く白い顎髭を撫でつけながら考え込む。
そんなとこに女の人の声が……。
「あらあら、たいへんね」
「ウィスダムじゃないか。久しぶりじゃのう」
そこにはとっても露出度の高い魔女のような服装の、とってもグラマラスなお姉さんが立っていた。
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されても頑張るポーション製造生活 ~聖女は聖水ポーションで人々をゾンビから救います~
夜桜
恋愛
妹に婚約者を奪われ、婚約破棄を言い渡されてしまった聖女ルシアは悲しみに暮れる。しかし、そんな暇はなかった。帝国には大量のゾンビが押し寄せていた。襲われない為には聖水ポーションが必要だった。ルシアは聖女の力『聖水ポーション』製造で人々を救っていく。そうして懸命に活動していると、帝国の民や辺境伯から認められていくようになる。
※ざまぁ要素ありです
※ちょっと手直しする場合がございます
ステータス999でカンスト最強転移したけどHP10と最低ダメージ保障1の世界でスローライフが送れません!
矢立まほろ
ファンタジー
大学を卒業してサラリーマンとして働いていた田口エイタ。
彼は来る日も来る日も仕事仕事仕事と、社蓄人生真っ只中の自分に辟易していた。
そんな時、不慮の事故に巻き込まれてしまう。
目を覚ますとそこはまったく知らない異世界だった。
転生と同時に手に入れた最強のステータス。雑魚敵を圧倒的力で葬りさるその強力さに感動し、近頃流行の『異世界でスローライフ生活』を送れるものと思っていたエイタ。
しかし、そこには大きな罠が隠されていた。
ステータスは最強だが、HP上限はまさかのたった10。
それなのに、どんな攻撃を受けてもダメージの最低保証は1。
どれだけ最強でも、たった十回殴られただけで死ぬ謎のハードモードな世界であることが発覚する。おまけに、自分の命を狙ってくる少女まで現れて――。
それでも最強ステータスを活かして念願のスローライフ生活を送りたいエイタ。
果たして彼は、右も左もわからない異世界で、夢をかなえることができるのか。
可能な限りシリアスを排除した超コメディ異世界転移生活、はじまります。
命知らずの騎士様は、鼻の利く魔女を放さない。
三歩ミチ
恋愛
町の人に「魔女」と呼ばれるニーナ・エトシールは、人より少し鼻が利く。よく利く鼻で、その人の求めるものの在り処も嗅ぎつける「探し物見つけます」が彼女の仕事。
偶々森で会った騎士エルートに、うっかり探し物の在り処を告げてしまったのが全ての始まり。この騎士、ニーナを全然放してくれないようです。
「魔女なんて烏滸がましい」と謙遜するニーナが、半分流されながら、自ら歩む道を決めて進んでいくお話。
※「ノベルアップ+」「小説家になろう」様にも同時投稿しています。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
パラノイア・アルケミスト〜逃走ホムンクルスの生存戦略〜
森樹
ファンタジー
元傭兵の青年ブレッドと、禁忌の錬金術で作られたホムンクルスの少年少女・アルフとフィーネが出会った時、運命の歯車が動き出す。
アルフとフィーネを巡る陰謀に巻き込まれたブレッドは、顔見知りの魔女カミラを道連れにアルフとフィーネの面倒をみることになる。
狂気をまとった禁忌の錬金術師イゴールが率いる組織から、ブレッドとカミラは二人を守る事が出来るのか。
蒸気機関車の走る大陸で起こる、若者達が生き残る為に戦いながらも幸せを探して生活をしていく物語。
※リハビリ作品です。長期連載停止中の『宰相夫人の異世界転移』も近々復活したいです。
帝国の魔女
G.G
ファンタジー
冥界に漂っているあたしに向けられている、もの凄い敵意と憎悪に気づいた。冥界では意識も記憶もないはずなのに?どうやら、そいつはあたしと相打ちになった魔王らしい。そして冥界の外に引っ張られようとしている時、そいつはあたしに纏わり付こうとした。気持ち悪い!あたしは全力でそいつを拒否した。同時にあたしの前世、それも複数の記憶が蘇った。最も古い記憶、それは魔女アクシャナ。
そう、あたしは生まれ変わった。
最強の魔人、カーサイレ母様の娘として。あたしは母様の溺愛の元、すくすくと育つ。
でも、魔王の魔の手は密かに延びていた。
あたしは前世のアクシャナやその他の記憶、スキルを利用して立ち向かう。
アクシャナの強力な空間魔法、そして八百年前のホムンクルス。
帝国の秘密、そして流動する各国の思惑。
否応なく巻き込まれていく訳だけど、カーサイレ母様だけは絶対守るんだから!
【サクリファイス英雄記】~いびきを治したくて奇跡の薬草を探していたら、たまたま捕らえた女盗賊と同棲することになりました~【完結】
みけとが夜々
ファンタジー
毎晩、村中に響き渡る大男のいびき。
たまたま捕らえた盗賊と同じく、この大男もまた薬草を求めていた。
その薬草はどんな傷も病も治すという。
探しても見つからないのなら、咲かせてしまえばいい。
しかし二人が行き着いた秘められた薬草の真実とは。
ひょんな出逢いから、薬草を巡って交差されていく二人の運命の行く末やいかに……!
(C)みけとが夜々 2024 All Rights Reserved
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる