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ホムの誘い
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僕がホムの誘いを受けてベッドに近づくと、ホムはもう一度確認してきた。
「アーキはホムの上と下、どっちになりたいの? ホムが上でいい?」
マイカ姉ちゃんみたいなお姉さんに手解《てほど》きを受けるのならば僕が下になるのもアリと思うけど、同い年相手ならば男である僕がすべきなのは上に決まっている。
僕はハッキリと告げた。
「もちろん上さ」
「そう。戦いは避けられないのね」
「戦い?」
僕がなんの話なのか理解出来ないでいると、厳しい目つきをしたホムは蹴りを放つ。
いきなり飛んできた蹴りを僕が避けられるわけもなく、つま先がどてっ腹に食い込み、吹っ飛ばされた。
「グホッ!」
内臓がひっくり返りそうになり、息が出来なくなるほどの痛み。
意識が飛びそうになるのをギリギリのところで保つ。
なんでホムからエッチを誘ってきたのに、いきなり蹴りが飛んでくるんだ?
わけがわからない。
「運よく急所は外したようね。でも次で終わり」
僕がうずくまっているとホムはとどめを刺しに飛び蹴りを放ってくる。
なんでこんなことになっているのかわからない。
僕はとっさに避け床に敷いてあったラグを引っ張ると、ちょうど着地したタイミングのホムがバランスを失いコケて頭を打った。
僕は動きを止めたホムに馬乗りになる。
さすがに女の子のホムは僕の体重を跳ね除ける力はないみたいで、なんどかもがいた後に諦めて抵抗を止めた。
僕はホムにいきなり襲ってきたことを問い詰める。
「なんでいきなり襲ってくるんだよ!」
「マーリン様はホムの一番大切な人。アーキがホムよりも上のマーリン様の一番になるつもりならば私は一番を譲る気はない」
ホムはそういい、目から涙を流した。
「でもホムはアーキに負けた。この身体は勝ったアーキのもの、好きにしていい」
ホムは僕から視線をそらし、唇を嚙み締めた。
どうやら上とか下とか言っていたのはエッチのことじゃなくて、師匠に対する僕とホムの上下関係だったらしい。
言葉足らず過ぎだろ……。
まあ、でも、師匠以外と話したことがないのならば仕方ないことかもしれない。
僕はホムが落ち着かせるように、ゆっくりと語りかける。
「僕はホムに乱暴をするつもりはないし、あくまでも師匠の弟子であって、師匠を慕う人がいたらそれを押し退けて一番になる気もない」
僕の思っていることを聞いたホムは理解してくれたみたいで、表情が明るくなった。
「ほんとう?」
「ああ、約束する」
「ありがとう。アーキとは友だちになれる気がする」
まあ、父さんから教えて貰えなかったことを師匠から教えて貰えたらとは思っているけど、僕自身はまだホムのように師匠を慕うほど師匠のことを知らない。
そのうち師匠を慕う日が来るかもしれないが、それは相当先の日のことと思う。
ホムが遠慮がちに僕に言う。
「あの……どいてくれない?」
ふあっ!
僕は下着姿の女の子の上に跨《またが》ったままだったのに気が付き慌てて飛び退く。
「ごめん、ホム」
「あやまらなくていい。ホムとアーキはもう友だちなんだから」
どうやら、ホムと仲良くなれたようだ。
「夕食の時間になったら、呼びに来る」
ホムは服を着ると部屋を出て行った。
*
しばらくすると、ホムは僕を呼びに来た。
「ご飯の時間。今日はアーキがマーリン様の弟子になったのを祝って歓迎会をする」
この師匠との歓迎会が師匠との最初で最後の食事になるとは僕は思いもしなかった。
「アーキはホムの上と下、どっちになりたいの? ホムが上でいい?」
マイカ姉ちゃんみたいなお姉さんに手解《てほど》きを受けるのならば僕が下になるのもアリと思うけど、同い年相手ならば男である僕がすべきなのは上に決まっている。
僕はハッキリと告げた。
「もちろん上さ」
「そう。戦いは避けられないのね」
「戦い?」
僕がなんの話なのか理解出来ないでいると、厳しい目つきをしたホムは蹴りを放つ。
いきなり飛んできた蹴りを僕が避けられるわけもなく、つま先がどてっ腹に食い込み、吹っ飛ばされた。
「グホッ!」
内臓がひっくり返りそうになり、息が出来なくなるほどの痛み。
意識が飛びそうになるのをギリギリのところで保つ。
なんでホムからエッチを誘ってきたのに、いきなり蹴りが飛んでくるんだ?
わけがわからない。
「運よく急所は外したようね。でも次で終わり」
僕がうずくまっているとホムはとどめを刺しに飛び蹴りを放ってくる。
なんでこんなことになっているのかわからない。
僕はとっさに避け床に敷いてあったラグを引っ張ると、ちょうど着地したタイミングのホムがバランスを失いコケて頭を打った。
僕は動きを止めたホムに馬乗りになる。
さすがに女の子のホムは僕の体重を跳ね除ける力はないみたいで、なんどかもがいた後に諦めて抵抗を止めた。
僕はホムにいきなり襲ってきたことを問い詰める。
「なんでいきなり襲ってくるんだよ!」
「マーリン様はホムの一番大切な人。アーキがホムよりも上のマーリン様の一番になるつもりならば私は一番を譲る気はない」
ホムはそういい、目から涙を流した。
「でもホムはアーキに負けた。この身体は勝ったアーキのもの、好きにしていい」
ホムは僕から視線をそらし、唇を嚙み締めた。
どうやら上とか下とか言っていたのはエッチのことじゃなくて、師匠に対する僕とホムの上下関係だったらしい。
言葉足らず過ぎだろ……。
まあ、でも、師匠以外と話したことがないのならば仕方ないことかもしれない。
僕はホムが落ち着かせるように、ゆっくりと語りかける。
「僕はホムに乱暴をするつもりはないし、あくまでも師匠の弟子であって、師匠を慕う人がいたらそれを押し退けて一番になる気もない」
僕の思っていることを聞いたホムは理解してくれたみたいで、表情が明るくなった。
「ほんとう?」
「ああ、約束する」
「ありがとう。アーキとは友だちになれる気がする」
まあ、父さんから教えて貰えなかったことを師匠から教えて貰えたらとは思っているけど、僕自身はまだホムのように師匠を慕うほど師匠のことを知らない。
そのうち師匠を慕う日が来るかもしれないが、それは相当先の日のことと思う。
ホムが遠慮がちに僕に言う。
「あの……どいてくれない?」
ふあっ!
僕は下着姿の女の子の上に跨《またが》ったままだったのに気が付き慌てて飛び退く。
「ごめん、ホム」
「あやまらなくていい。ホムとアーキはもう友だちなんだから」
どうやら、ホムと仲良くなれたようだ。
「夕食の時間になったら、呼びに来る」
ホムは服を着ると部屋を出て行った。
*
しばらくすると、ホムは僕を呼びに来た。
「ご飯の時間。今日はアーキがマーリン様の弟子になったのを祝って歓迎会をする」
この師匠との歓迎会が師匠との最初で最後の食事になるとは僕は思いもしなかった。
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