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ハイポーション作り再び

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 チームハウスにやってくるとリサさんが待ち構えていた。
 今日もマイカ姉ちゃんと一緒に冒険に出てなくて、冒険者ギルドで依頼を受けてないんだけどいいんだろうか?
 職務放棄でクビとかにならなければいいんだけど。

 心の底から心配になる僕だった。
 そんな僕の心配を笑い飛ばすリサさん。

「目の前に儲けの種が転がってるのに、みすみす逃すのは商売人じゃないわ」

 リサさんの中では冒険者はきれいサッパリ忘れられていて既に商人でしかなさそう。
 あきれ顔の僕にリサさんはビシッと指を突き示した。

「アーキ君はそろそろ次のステップに進むべきね」
「次のステップ?」
「そう、新レシピよ。ハイポーションを作りましょう」

 え?
 ハイポーションなら、いつも作ってない?
 確か在庫は300本を越えていたはず。

「いまさらハイポーション作りなんですか?」
「ちっちっちっ、甘いぞアーキ君。今作ってるハイポーションはポーションを作るときに偶然に出来たもの。いわば副産物」

 今まで当たり前のようにハイポーションを量産していたけど、確かにそういわれるとそうだった。
 もっとも、最近はポーションよりもハイポーションの方が出来る量が多いんだけどね。

「そうじゃなくて、ハイポーションのレシピでハイポーションを作るの」

 たぶん、リサさんが狙っているのはハイポーションのレシピで作ったハイクオリティー品。
 ハイポーションと言えば体力回復系の最上位の薬品。
 そのハイクオリティー品でなにが出来るのか想像も出来ない。
 早速、アンナ婆さんの所にレシピを教えて貰いに向かう。

「ハイポーションを作りたいのかい? まあ、大変だけど、アーキなら出来るはずじゃの」

 作り方はポーションと殆ど同じみたいだ。
 ただ、素材の量が違う。
 
 ・薬草×12
 ・魔石小×12 もしくは 魔石中×1
 ・水

 魔石代が12倍の12万ゴルダか。
 錬金を失敗したら泣くだけじゃ済まないな。
 魔力注入の工程も魔力が6倍ほど必要で大変らしい。
 これは真剣にやらないと。

 僕は身を引き締めて、アンナ婆さんの動きのひとつひとつを瞳に刻み込む。
 腰の悪いアンナ婆さんは沢山の材料を煮詰める錬金鍋をおおきなしゃもじでかき混ぜるのが辛いらしく、僕が慌てて手伝う。
 僕でも大きな錬金鍋をかき混ぜるのにはかなりの力が必要。
 若い僕でも苦労したので、身体の弱ったアンナ婆さん一人でかき混ぜるのは辛いよな。
 僕はは汗の浮かんだ額を拭《ぬぐ》いつつ鍋をかき混ぜ続けた。
 鍋をかき回していると、アンナ婆さんは痛む腰を押さえながら昔の思い出を話してくれた。

「ハイポーションを作り始めたころは錬金を失敗したときの魔石代が惜しくてね。魔物を自分で狩って自給自足でハイポーションを作っていたんじゃよ。狩りの途中、ホワイトウルフに体当たりされて大木に腰を打ち付けて動けなくなってうずくまっていたことがあってのう、助けてくれたのが私の旦那になるシェーマス爺さんなんじゃ。ああ見えても優しいとこのある男なんじゃよ」

 シェーマス爺さんに視線を振ると、アンナ婆さんに褒められたのが恥ずかしくて、明後日の方向を向きながら頬をポリポリ掻いて照れていた。

「今は歩くのにも苦労するけど、昔は爺さんと野山を駆け巡って楽しかったのう」

 アンナ婆さんは昔を思い出したのか懐かしさで目を涙で滲ませていた。
 僕が鍋をかき混ぜ終えると……アンナ婆さんが魔力注入。
 そして出来上がったんだけど……。

「うーん、ギリギリハイポーションにならなかったか。劣化ハイポーションじゃの。私の錬金術士の腕もこの辺りが限界かのう。若い時にもっと精進しとくべきじゃった」

 ガックリと肩を落とすアンナ婆さん。

「僕がかき混ぜたせいですよ。あんまり気落ちしないで」

 気を取り直して、今度は僕の錬金の番だ。
 目に焼き付けたハイポーションの作り方を思い出しながら、ハイポーションを錬金する。
 特にかき混ぜは焦がさないように慎重に行った。
 12万円の素材を使った錬金なので手に汗が滲《にじ》む。
 魔力を注入し、どうにか完成だ。
 出来上がったハイポーションの品質をアンナ婆さんが調べてくれた。

「間違いなくハイポーションじゃな」
「やった!」

 そっと胸を撫でおろす僕。
 僕の初めての高額素材による錬金は成功を収めたのであった。
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