君が僕を見つけるまで。

いちの瀬

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6話

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後日。

高嶺に指定されていた場所は、俺が働いている本屋さんのすぐ近くのレストランだった。

日にちも、俺の仕事のない日でいい。なんて聞かされて、一瞬は?と思った。高嶺はこんなに気の使える人間だったか。答えはもちろんいいえ。だ。

前の高嶺だったら、『俺は仕事が忙しいから、すまないが俺の仕事場の近くのホテルのレストランでもいいか?』だった。

高嶺は気づいてなかったかもしれないけど、いいか?って疑問形で相手に選択肢を与えてるみたいだけど、正しくはいいか?じゃなくて絶対だからな。なんだよね。

もちろん指定したホテルはいつも高級ホテルで、ドレスコードがあるような店。なのに今回はそんなもん存在しない、よく俺と嶺が一緒にいくお馴染みの地元の小さな店だ。

俺がああいういかにも高級感出してる店が嫌いって気づいたのかな?

高嶺も学習したってことか?

いやいやいや、そんなことあるわけないだろ。多分、高嶺はそういう店しか行ったことなかったから、気になっただけだよなぁ。

自分の思考回路の中で、勝手に浮いて勝手に沈んでを繰り返す。

そんな事を延々と考えていると、不意にトントンと肩を叩かれた。

「志乃さん?」

後ろを振り向くと、そこにイケメンの顔が…。

そうだ。今仕事中だった。
仕事に集中しなきゃ。

俺は嶺が生まれてから近くの本屋さんで働くことになった。
すごく良い職場で、人間関係も結構うまく行ってる。さっき肩を叩いてくれたイケメンくんは、伊介隼人くん22歳。今は大学生で、本とかCDが好きで、16歳の頃からこの本屋さんで働いてるらしい。

隼人君は、この職場の中でも一番仲良くしてくれて、たまに嶺と俺と隼人君の3人で美味しいもの巡りをする。嶺も隼人君に懐いていて、たまに保育園に迎えに行ってもらうこともある。

最初は保育園の先生にも怪しまれたけど、今じゃ隼人君=嶺ちゃんの保護者だ。

その位置には高嶺が居たはずなのにな。と、たまに。たまぁぁぁに思う。

「志乃さん?どこか具合悪いんですか?俺、休憩早めに切り上げるんで、志乃さん早めに休憩に入っちゃって良いですよ。」

「あ、ごめんね。心配かけちゃって。じゃあお言葉に甘えて早めに休憩しちゃおっかな。ありがとう。」

なんて優しい子なんだ!

あっ。そういえば、この前恋愛映画のチケット当たったんだよなぁ。俺はあんまりこういうのは好きじゃないからあげちゃおう。

「隼人君!」

「はい?」

「あのさ、隼人君って恋愛映画見る?」

「れん…あい……映画?見……ます!」

「ほんと?良かったぁ!この前当たっちゃってさぁ。俺はこういうのあんまり見ないから隼人君にあげる!」

「え?志乃さんは行かないんですか?」

「えぇ?行かないよー!こんなおっさんが恋愛映画見ても需要と供給がマッチしてないって!この前駅前で女の子といたでしょ?彼女でしょ?その子と行ってきなよー!」

「……。」

え、なんか無言。

「俺、彼女居ませんよ。」

「あ、そうなんだ。へぇ。」

「だから2人で行きましょ?」

「あ、うん。まぁいいけど。」

そう返すと、隼人君がよしっ!って呟きながら小さくガッツポーズしてた。

???

やっぱりジェネレーションギャップ感じるわぁ……。



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