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マルセに着くと、いつもは確実に空いてるマルセの全席が埋まっていた。

うちの学校、こんなに庶民いたっけ?

不思議に思って悠汰と顔を見合わせた後に前方に目を向けると、僕の弟に似た男の子がたくさんの女の子と男の子に囲まれて笑っている。彼らはまだ僕たちが入ってきたことに気づいていないようだった。

「雪、あれおと「弟だよね。たぶん。」

食い気味に答えると、悠汰が変な顔で僕を見つめてきた。

「なんで悠汰変顔してんの?すんごい不細工だけど。」

「おいひでーな。どうする?家帰るか?あ、久しぶりにピ○ーラかドミ○ピザで出前取ろうぜ。」

あーあ、どうしてくれんだよ弟よ。
月五千円のお小遣いの悠汰の財布これで空っぽだぞ。
マルセだったら控えめに言って財布の中身半分は残ったのに。
あーあ、かわいそうに。

かわいそうと思いながらも悠汰の考えを否定する気はない。
悠汰、すまぬ。
お前の財布の中身はよく頑張ったよ。これは仕方ないことなんだ。こんどオレンジジュース奢ってやるからな。

悠汰の肩に手を置いて迷いなく首を縦に振った。

「まじかよ。少しは迷うと思ったのに即答かよ。」

「悠汰、こればっかりは僕にはなにもできない。幸村コーポレーション次男を恨んでくれ。なんなら自宅に嫌がらせファックスを送ってくれても構わない。」

「なんで自ら犯罪者にならなきゃいけねーんだよ。取り敢えず帰ろうぜ。なんか寒いし。」

四月の夜は、昼があったかいせいでマフラーを持ってきていない僕たちにはかなり寒かった。

家に着くと、すかさずリビングのエアコンとホットカーペットをつけて、固定電話を悠汰に渡す。
僕は恥ずかしがり屋さんだからあんまりピザ屋さんとかに電話するのはちょっと…////

そして悠汰のすぐそばで出前用のメニュー表を開き、食べたいものをさっと指差す。
これが僕と悠汰のファインプレーってやつか。

悠汰が注文し終わると、二人してソファーで寝っ転がった。

僕が下。悠汰が僕の上。

重い。

僕より全然身長が高くて筋肉もある悠汰が僕の上に乗っている。
普通逆じゃない?

重いよぉぉぉ、

「ぐぬぬ…ぐぅ…」

呻き声をあげると、仕方ねーなーと言って悠汰が僕をソファの上から下ろし、一人で占領し始めた。

仕方ねーなーじゃないよ!!!
ソファの上を独り占めすんな!!!
くそぅ…

悔しくって寛いでいる悠汰の上に勢いをつけてどすんっと乗っかると下から「ぐぇっ」とカエルの鳴き声のような声が聞こえた。

くふふ。とにやにやしながらほくそ笑む。

「おい雪ぃ~、」

あ、やべ。と思ったところで

ピーンポーン

早いけどピザが来たみたいだった。

「雪行ってきて。俺今肋骨折れたから。」

けろっとした顔で悠汰が肋骨が折れたなどと抜かした。本当に折ってやろうかこのやろう。

インターホンのカメラを確認すると、ピザの配達員がいるはずのところに、制服を着た生徒が立っていた。
あれ?弟?っぽいな。

物音を立てないように悠汰の元へ戻り、しーっと人差し指を口の前に持ってきた。

「え?なになに」

「弟くんが、なんか外いるんですけど。」

「まじ???え、お前嫌われてるんじゃねぇの?」

「取り敢えず僕隠れるから悠汰出ろよ!!」

「はぁ?まぁいいけど」

そのまま僕はソファの裏に隠れて聞き耳を立て、悠汰は玄関へ向かった。

「はーい」

ガチャッとドアを開ける音と、悠汰の声がはっきりと聞こえた。

「あの、僕幸村裕一っていいます。斎藤悠汰さん、ですか?」

「あ、そうですけど。」

どうやら弟くんは僕に用があったんじゃなくて悠汰に用があったみたいだ。
もー、驚かせんなよ。

「お母さんから聞いたんです。僕の兄と仲良しだって。でも、なんか雰囲気的に詳しくは聞けなくて…なにか知っていませんか?僕、僕に兄がいるってこの前知って…お兄ちゃんに会いたいんです。名前もわからないなんて、あんまりです。」

え。結局僕?
まじかよー。
まぁ僕の決意は揺るがないがな!!!

お前の兄はここにはいない!さっさと巣へ帰るんだ!!!

頼む。これから僕と悠汰の楽しい楽しいピザパーティーが始まるんだ…さっさと帰ってくれ!これじゃ配達員さん来られないでしょ!

ソファの裏でひっそりと願った。
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