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5 鬼畜魔導師は子猫を拾いました
しおりを挟む私は変わった拾い物をした。
白くてふわふわした猫のような赤子をだ。
私の性格をよく知るものなら、赤子を拾ったといえば、実験に使うのか?調理して食べるのか?などと言うであろう。
ウンディーネは別としてだぞ。私は幼児愛好者でもなんでもないからな。
私は周囲からそう思われるほどには残虐な性格をしている。
そんな私が赤子を拾った。いまだに自分でも拾った明確な理由は分からない。
魔力数値が高いからか…?興味本位…?気まぐれ…?いや、どれも当てはまっているようで当てはまってはいない。
普段直感に頼る私ではないが、その時ばかりは赤子に底知れぬ何かを感じたのだ。
赤子は、ミーツェと名付けた。小さな顔に大きな猫目が印象的であったからだ。
本人はウンディーネに意味を聞いて、不服そうにしていたが文句も言わずにいた辺り、それなりに気に入ったのではなかろうか?
ミーツェはすくすくと成長していった。
もともと子供らしくない所はあるが、生意気な態度は子供そのもので、その姿を好ましく眺める自分がいるものだから救いようが無い。
日頃懐かぬ子猫は、魔力を教えてやれば目をキラキラとさせ、私を師と仰ぎ、憧れの目を向けた。
そんな視線に少しもどかしさを感じながらも、ミーツェが小さな手で魔法を再現しようと必死になっている様子は見てて飽きなかった。
普段小憎らしい態度をとる分、素直な態度は正直可愛らしく、私の中の何かをくすぐったのだ。
何度も撫でくりまわしたい衝動に駆られたが、本心を隠す私にはハードルが高く、余計なプライドが邪魔をしていつもウンディーネがミーツェを撫でまわす姿を遠目で見つめるだけで終わっていた。
そうすれば誰に懐くかは明確で、ミーツェは何かあるたびウンディーネ、ウンディーネと、使い魔の名を呼んではニコニコと楽しげな顔を向けていた。
私にはその笑顔を向けないくせにだ。その原因が自分にあることが分かっていながらも、反省せず大人気ない物言いを何度かしたのは本当に情けない。
今までになかった感情に振り回されるのは悪い気分はしなかったが胸のあたりがもやもやとする事もあり不快に感じる事もあった。
この感情を知る前の私ならば今の私を見てどう思うだろうか?信じられない事だと一笑するのでは無いだろうか。気味の悪い感情だと思うかもしれない。
しかし今の私はこの感情を失うなんてことは考えられないだろう。それはミーツェを失うことと同義であるのだから。
平和なある日、私にとっての不幸は突然訪れた。
原因はミーツェの魔力回路が安定してきた為、魔力数値と適性を測ってやった事にある。
ミーツェの魔法適性を見て血の気が引いた。この魔法がまたこの世界に出現したのかと。五十年前の大事件を引き起こした。私が最も嫌いとする魔法。危険で恐ろしい魔法だ。狡猾な人間に利用され、心も体もズタズタにされるような。
私は後悔した。魔法など教えてやるべきではなかったと。だが、まだ手はあった。それを隠したのだ軽く封印の魔法もかけてやった。
昔を思い出し、焦り苛立つ私はミーツェをかまってやる暇も無く、思わず嫌いだとあたってしまった。
するとどうだ、ミーツェは大泣きした。今まで一切涙を流したことのなかったミーツェが大粒の涙をポタポタと床に落としたのだ。
私は大いに戸惑った。こんなに焦ったのはいつぶりだろうと慌てた。反面、少し嬉しくも思った。ミーツェが大泣きした理由は自分が嫌いと言ったからだと。こんなに可愛らしい理由は他にあるだろうか。そして私を父のように見てたなど。ここまで言われてどうして愛おしく思わずにいられようか。
私は抱擁せざる終えなかった。自分にミーツェを落ち着かせる為だと言い聞かせ、その小さな身体をそっと抱きしめた。自分を好いているのかと聞けば、無言で返され軽くショックを受けたが、今までの仕打ちを思い出せば嫌われていなかったことさえ奇跡だろう。
そして私は自分の事を半分無理矢理「パパ」と呼ばせた。人生において一番恥ずかしかった事だと断言できる。あまりに余裕のなかった私の行動は情けないものだったが後悔はしていない。
ミーツェは私の庇護のもと私の娘として生きていく。
ミーツェを魔法から、人間から、神から守ろう。剣となり盾となり、あらゆる障害が立ち塞がるとしても。
まぁ、色々言いたいことはあるが、
私の子猫は少しポンコツで生意気な所はあるがしかし間違いなく可愛い。
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