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第1章
8話、絶望と改心(ネヴィル視点)
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僕は仮婚約が決まってから、今こそチャンスなのだと、拒絶される覚悟で彼女、シルフィのいる侯爵邸に赴いた。
しかしどうした事か、先触れを出したにも関わらずメイド達に足を止められた。
そこでふと目の端に入ったのは、昔、僕つきだった侍女コレッタである。
どう言うことだと目配せをするが、やれやれと言ったように彼女は首を振って手を払う仕草を見せた。
(今日は帰れってか!?こいつ元主人に対して態度デカくないか!??)
久し振りすぎて忘れていたが、確かにコレッタは昔から僕を軽視する傾向にあった。
しかしこんなところで彼女に会うのを、諦めるわけにはいかないのだ。僕にだって意地はある。
僕は帰ることなくそこに踏みとどまり、シルフィを出せとメイド達と揉めあい、てんやわんやとなった。
その時である。
天使が地上に舞い降りて来たのかと思った。
そんな訳ないと目をよく凝らし、じーっと人影を見た。銀髪に緋色の瞳。間違いない、シルフィだ。
「おやめ下さい!!何事ですか!!」
少し震えた声が鈴のようで、ますます人間味を帯びない。
彼女は会わないうちに天使へと成り果てていたのか…。
真っ直ぐ僕を見つめる彼女の、人間離れした美しい容貌に目も心も奪われた。
気を抜けば倒れてしまいそうなほど衝撃的で、身体が一つも動かない。硬直が解けないまま、呆然としていると、コツコツと彼女が近寄って来た。
(これではいかん、彼女が近くにいて理性を保てる訳がない!!下手をすればまた暴言を吐いてしまいそうだ!!)
「門の方にゴテゴテの装飾品がついた趣味の悪い馬車が止まってると思えば、やはりお前か!何の了見があってここに足を踏み入れた、早々にお引き取り願おう!」
助かった…。
シルフィの兄、ヴィンセントである。いつもならタイミングが悪いと愚痴るところだが、今日ばかりは助かった。
昔は彼と目が合えば竦んだものだが、今では多少の事では動じなくなったのだ。
彼はその鋭い目で僕をきつく睨みつける。
(いや、動じないと言ったが、少し怖いぞ!目がヤバイ!)
「ヴィンセントお兄様!!」
「シルフィ!?何故部屋から出て来てるんだい!?」
シルフィの声に反応して彼は僕からすぐに目を外し彼女に駆け寄って行く。
「シル、いいかい?今見た事は忘れるんだ。辛い思いが蘇るだろ?さぁ、部屋に戻ろう。」
それでは困る。彼女には話したい事が山ほどあるのだ。
それに心配していた拒絶も無かった。これは少し期待してもいいのだろうか。
「辛い思い?ですか?」
「シル、もしかしてあいつが誰か分からない?」
「私がわかるお方なのですか?」
嘘だろ…?シルフィは僕が分からない??頭や胸を鋭いもので貫かれるような衝撃が走った。さらに頭はしびれ、胸は焼けるように痛く目の前の現実すら受け入れられないでいる。ここまで大きなショックを受けたのは久し振りだ。
これでは拒絶より酷いではないか…。
しかしどうした事か、先触れを出したにも関わらずメイド達に足を止められた。
そこでふと目の端に入ったのは、昔、僕つきだった侍女コレッタである。
どう言うことだと目配せをするが、やれやれと言ったように彼女は首を振って手を払う仕草を見せた。
(今日は帰れってか!?こいつ元主人に対して態度デカくないか!??)
久し振りすぎて忘れていたが、確かにコレッタは昔から僕を軽視する傾向にあった。
しかしこんなところで彼女に会うのを、諦めるわけにはいかないのだ。僕にだって意地はある。
僕は帰ることなくそこに踏みとどまり、シルフィを出せとメイド達と揉めあい、てんやわんやとなった。
その時である。
天使が地上に舞い降りて来たのかと思った。
そんな訳ないと目をよく凝らし、じーっと人影を見た。銀髪に緋色の瞳。間違いない、シルフィだ。
「おやめ下さい!!何事ですか!!」
少し震えた声が鈴のようで、ますます人間味を帯びない。
彼女は会わないうちに天使へと成り果てていたのか…。
真っ直ぐ僕を見つめる彼女の、人間離れした美しい容貌に目も心も奪われた。
気を抜けば倒れてしまいそうなほど衝撃的で、身体が一つも動かない。硬直が解けないまま、呆然としていると、コツコツと彼女が近寄って来た。
(これではいかん、彼女が近くにいて理性を保てる訳がない!!下手をすればまた暴言を吐いてしまいそうだ!!)
「門の方にゴテゴテの装飾品がついた趣味の悪い馬車が止まってると思えば、やはりお前か!何の了見があってここに足を踏み入れた、早々にお引き取り願おう!」
助かった…。
シルフィの兄、ヴィンセントである。いつもならタイミングが悪いと愚痴るところだが、今日ばかりは助かった。
昔は彼と目が合えば竦んだものだが、今では多少の事では動じなくなったのだ。
彼はその鋭い目で僕をきつく睨みつける。
(いや、動じないと言ったが、少し怖いぞ!目がヤバイ!)
「ヴィンセントお兄様!!」
「シルフィ!?何故部屋から出て来てるんだい!?」
シルフィの声に反応して彼は僕からすぐに目を外し彼女に駆け寄って行く。
「シル、いいかい?今見た事は忘れるんだ。辛い思いが蘇るだろ?さぁ、部屋に戻ろう。」
それでは困る。彼女には話したい事が山ほどあるのだ。
それに心配していた拒絶も無かった。これは少し期待してもいいのだろうか。
「辛い思い?ですか?」
「シル、もしかしてあいつが誰か分からない?」
「私がわかるお方なのですか?」
嘘だろ…?シルフィは僕が分からない??頭や胸を鋭いもので貫かれるような衝撃が走った。さらに頭はしびれ、胸は焼けるように痛く目の前の現実すら受け入れられないでいる。ここまで大きなショックを受けたのは久し振りだ。
これでは拒絶より酷いではないか…。
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