上 下
99 / 101
健全黒字経営目指します!

洋書なんだ…

しおりを挟む

第99話 洋書なんだ…



「じゃ、片付けはメシ食ったらな。」

 そう言ってレオさんは俺を横抱きにしました…。

 自然すぎて止められなかったぁ!


 そのまま客間に抱っこ連行され、体調をおもんぱった軽めの昼食を美味しく頂き、食後の優しい香りのお茶でまったり優雅な寛ぎのひと時…、なんて、おわー! めっちゃ絵に描いたようなオモテナシの休日すぎるぅ!! を堪能した後、昼寝へと寝かしつけられそうになったが、そこはキッパリお断りしてまた屋根裏へ戻った。一応腹ごなしと言う理由をつけて、2階までは自力(歩行介助付き)で。屋根裏までは…、うん、運ばれました。アーッ。

 屋根裏でちょっと残ってた仕事、本棚に本を入れる為コンソールで本を作成するがすご~く困った事になった。

「…これはマズイわ。」
「…なんの本なんだ、これは。」

 出来上がった本は英語で書かれてた。所謂洋書である。

「…レオさん、これ読める?」

「読めん。字も見た事がない形だ。」

「デスヨネー! これ俺の世界の本なんだけど、本棚に並べたら…?」

「あまり良くはねえな…。」

「デスヨネ…。」

 ちなみに洋書はゲームの歴史(The history of the game)と言う本だった。内容は…、英語力高校生レベルの俺には全く読めないシロモノだったぜ…。マジ海外ゲーだよ、箱庭!
  地球産の本が完全再現されてしまい、ボクは、ワタシは状態である。

「…もしかして、ならイケるか?」

 コンソールに指を走らせ、さっきとはレア度が格段に上がった特殊素材をポチポチ合成する。
 箱庭に本は2種類存在する。普通の本と…、

「…いやアカン、これはアカン。」
「コウ、これは本なのか…?」

 魔法アイテムを作る為の素材のひとつ、魔法書だ。尚、魔法と言ってもコッチみたいに魔法使いが魔力でオリャ~みたいな魔法じゃなくて、アイテムで物に属性や状態異常、もしくは異常回復の不思議ステータスをつける事を魔法扱いしている。その媒介となるのがこの魔法書だ。例とすれば火属性の魔法書と矢の合成で火矢。矢が当たると火がでる魔法の矢となる。
 で、その媒介である魔法書なんだが…、

「微妙に光ってるけど一応、本ダヨ。魔法書なんだ。中は…、俺の世界の言葉。」

「ダメだろ。」

 デスヨネ…。まさかボンヤリ発光する洋書とは、…いや魔法付与台に乗ってた魔法書光ってたわ。知ってたな、遠い記憶で。

「はあ、そんないかにもな魔法書なんて普通は魔法士団が管理するような門外不出のお宝だからな? 一応その辺の木箱に本なんかが入ってた気がするから、それを詰めよう。棚全部は埋まらんが物置の本棚ならスカスカでもおかしくはない。」

 だからソイツはしまってくれ、とレオさんに諭された。はい、勿論です。ヤバ本はストックにナイナイしました。
 そこからレオさんは木箱を漁って本を引っ張り出してきてくれた。昔流行った娯楽小説や子供向けの本などで、ご家族も読まないから置いていったそう。
 最初は全部レオさんがやると言って俺に触らせない気満々だったが、横で椅子に座り本を読むフリしながら本棚に入れる手伝いをこっそりしてやった。途中までバレなかったぜ 笑。
 ちなみにお子様向けのドラゴン討伐の本がページ数少ない割に面白くラノベ感覚で一気読みしたのはヒミツだ!
 邪悪なドラゴンが棲みついてしまった遺跡で、チート気味な王子と近くの村の少女が手を取り合い討伐し最後は幸せな結婚する、まさに王道の冒険記。だが途中の謎解きがなかなか凝ってて、オチまでワクワクした。まさか、ドラゴンの弱点に…、おっと、閑話休題。

 2台ある本棚のダミー側は半分くらい、もう片方は三分の一くらいに埋めて、いい感じに物置感を出してみた。

「うん、バッチリ。ありがとうね、レオさん。」

「コレくらいお安いご用さ。…それにしても懐かしい本ばかりだな。俺がガキの頃の本もある。」

 レオさんは懐かしさか本の背表紙をそっと撫でていた。

「レオさんはどんな本が好きだった? 俺、この中だと『ドラゴニア物語』って話が面白かった。」

「ああ、それな。俺もガキの頃好きだったな。ハルトナ王子は強いんだが謎解きが滅法苦手で全然ドラゴンまで辿り着けないんだが、頭がいいアイシャがカバーするんだよな。最後は2人の知恵と勇気でドラゴンを倒す。当時この本はすごく流行ってな。本以外にも庶民向けに語り芝居なんかもされて、その当時のガキはみんな好きだったと思うぞ。」

 そう言ってドラゴニア物語の背表紙まで指を滑らせトントンと叩いた。記憶の中のストーリーを思い浮かべているのかほんのり口角が上がっている。

「へえ、そんな流行ったんだ。でも確かに面白いもんね。」

 ほあ~! なんと書籍以外に舞台(?)化も! これは俗に言うメディアミックスってヤツだな!

 ドラゴニア物語、コッチの超ベストセラーラノベなのかもしれない。もし地球だったら絶対アニメ化してたよ。見たかった。惜しい。

「何処かの国であった話を元にしてるらしいから、余計人気が出たみたいだ。」

「えっ、実話? これ実話なの?」

「まあな。こんな子供が簡単に倒せるドラゴンはいねえと思うが。」

「ドラゴンいるんだ…。」

 剣と魔法の世界だもんな。やっぱドラゴンもテンプレ通りいるんだなぁ。

「ん? …ああ、そうか、ひょっとしてコウの世界にはドラゴンいないってヤツか?」

「お察しのとおり。あっちじゃドラゴンは空想上の生き物。」

「なるほどね。コッチは話みたいに遺跡にいる邪悪なドラゴンなんてそうはいねえが、人が近寄れねえ秘境にはドラゴンってデカいトカゲみたいなのがいるんだ。」

 挿絵のドラゴンは恐竜型ドラゴンだったが、やはりトカゲ扱いなんだな、ドラゴン。

「コイツら普段は姿見せねえんだが、突然ひょっこりやってき大暴れするヤツはいるな。龍人らの話によると、はた迷惑な事に腕試しで降りてくるらしいぞ。龍人がうまく説得して帰ってくれりゃいいが、ダメな時は軍やマーシナリーで討伐だ。」

 …腕試し。コッチのドラゴン、一体何者…。

「…ドラゴンって魔獣の一種じゃないの?」

「うーむ、難しいとこだな。ドラゴンは賢くて種族的には龍人の仲間っちゃ仲間だが、龍人以外の人型じゃ話は通じねえし、野生の生き物とおんなじように野で暮らしてっからなぁ…。」

「えっと、普段は人は襲わない?」

「どうだろう…。だいたい遭遇する時は腕試しの最中らしいから、武装してればすぐ襲ってくるしかわからねえ…。ぶっ殺されたヤツはいるが食われたヤツはいねえから、餌ではないのは確かだと思うが。」

 おうふ、コッチのドラゴン戦闘民族かな…。

「へ、へえ、そっか。餌じゃないってわかっても遭遇したくないね…。」

「そうだな。まあこの国でドラゴンが出たなんてとんと聞かないから、ここいらで会うことはないだろう。安心しな。」

 なら良いけど!

 本棚が完成したのでコンソールなどの片付けをし、屋根裏を後にした。
 夜までは大分時間が余っているので、客間で箱庭内のリオガ探索やらリオガマップを作ったり、昨日買った荷物の整理をしたりした。

「…ねえ、レオさん。今更なんだけど、…俺さ、寝間着じゃなく、こっち着ればよかったんじゃない?」

 ペロンと荷物からお出かけ用に買った服が出てきたワケだが。

「…あー、ソレすっかり忘れてたな。うん、すっぱり忘れてた。ソイツは明日着ればいいさ。あ、そうそう! 例の魔法錠頼んでくるから、ちょっとアルフのとこに行ってくるな? あの石を貸してくれ。かたどりに必要なんだ。」

「あ、うん。おんなじのいっぱいあるから、コレそのまま使って貰ってもいいよ。」

 レオさんはダイヤを受け取ると、苦笑いでそそくさと客間を出て行った。

 なんだかはぐらかされた気がするが、半日以上このヒラヒラネグリジェで過ごしちゃったから今更脱いでも洗濯なのは変わらんもんな…。脱いで、また新しいネグリジェ出てきても困るし!

 荷物整理ついでにライターの魔道具やマントを弄ったり、明日の移動用の水を準備したりしたが、とうとうやる事が無くなりソファーに突っ伏した。
 手持ち無沙汰にスマフォを見ると充電がかなり減っていて弄るのは戸惑われた。もしやタブレットもと思ってタブレットを見ると、スマフォよりは充電が残っているものの、明日を考えるとやはりこれ以上は弄れない感じだ。

「…あー、やる事ない。どうしよう。」

 ソファーでゴロゴロしながらぼんやり暇つぶしの方法を探る。
 漫画も小説もほぼ電子書籍にしてるから、現代日本人、隙間時間にデジタル機器ないと意外に困るでござるの巻だ。

「箱庭の本は洋書で読めないし…。モバイルバッテリー充電しとけばよかったなー。」

 一泊旅行のつもりだったから、モバイルバッテリーまで気が回らなかったよ。次は準備しよ…。

 なんて考えてたら、いつの間かスコンと寝落ちしてしまった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。

無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~

白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。 そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!? 前世は嫌われもの。今世は愛されもの。 自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!! **************** というようなものを書こうと思っています。 初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。 暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。 なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。 この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。 R15は保険です。

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

処理中です...