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健全黒字経営目指します!
秘密の屋根裏
しおりを挟む第98話 秘密の屋根裏
「なるほど~! セキュリティ面に配慮ね! それじゃ、外側はプロにお願いしようかな。かかった料金は払うので後で領収書付きで請求して。」
勿論経費でね!
ダンジョンに関わるネタだから落ちる気はするが、自腹はあんまりしたくないっすわ。落ちてくれ下さいイケオジ様経理様サマ~(経理課あるかわからんけど…)
心の中でかしわ手をパンパン打って祈りを捧げた。
現地産の魔法錠(偽)を設置できそうとなると中々いい感じに纏まりそうだ。やはり箱庭産のオブジェクトはコッチの世界のモノとは微妙にティストがズレてるから、木を隠す森になりきれないような気がする。広葉樹の森かと思ったらジャングルみたいな、おい森が目立ちすぎてんじゃん! のティストずれ。…なんとか自然な広葉樹に寄せてくぞ。
さあ、ここからは仕掛けの詳細設計だ。
違和感ない屋根裏に仕立ててつつ、しっかり隠し部屋。頭の中の図面を落とし込む。と、その前に…、
「レオさん、レオさん。」
「なんだ?」
「これから1時間…、1タトくらい部屋の改造するから、もしやる事あるならソッチ優先してね。俺、箱庭に集中しちゃうと周りに配慮できないからさ。」
さすがに1時間もお構いできないのは悪いと思いまして…。周りが見えないタイプ(箱庭限定)なのでね…。
「あー…、確かこの前もそんな感じだったな。そうだな、俺もこっちに仕事持ってくるか。」
「是非そうして。あ、机と椅子はワタクシがご準備いたします~。」
「ははは、サービスいいな。」
じゃあ、書類とってくるとレオさんは屋根裏から出て行った。
では始めますか。
改造しない側にレオさん用の机と椅子を出し、俺用に作業台を設置する。コンソールで地図(小)を作り、部屋に割られたマス目数を確認する。ふむふむ、壁面用家具は本棚2台とタンス2棹くらいが違和感ないな。物置だからあんまり隙間なくぴっちりは不自然…あ、少し隙間が空きすぎか…。元からある木箱を挟んでかな。
ダミーの仕掛けは部屋に入ってすぐ目が行く対角線上側ではなく、わざと真横側奥。何かあると思わせぶりが大事。ここは本棚2台並べてしまおう。一番端がダミー魔法錠付きで隣は普通のね。念の為力技で本棚が動かされた時用に、ダミーの後ろに空の小部屋を作っておく。はっはっはー、超思わせぶり部屋だ。ガッカリしてね!
さて、ダミーはこんなもんで次は本命だ。対角線上の角に空のキャスター付きタンス。多分、ダミーに引っかかってるヤツなら魔法錠がなければタンスの戸を開けて中身を見る程度で終わると予想。
なので敢えてその入口には小賢しい仕掛けは作らない。シンプルに空のタンスの後ろにドアだ。もし上手い事それに気づいてタンスの仕掛けを抜けるとポータルの部屋になるが、ここでひと罠。
ポータルはドアと同じ壁につける。ポイントはドアの戸板。閉めて振り向かないと見えないように押し戸の死角を利用する。これは単純な仕組みだが、急いでいる者にはよくキく。
それっ、キーボードカタカタッターンッ! ならぬ、コンソールシュパパパパーンッだ!!
「フハハハ! さすが箱庭人気配信者の俺ちゃん、天才的ナイス隠し部屋!」
「ははは、楽しそうで何より。」
「はひっ?!」
レオさんがニコニコと机で頬杖をつきながら、俺のコンソールシュパパパパーンッを見守っていた…。熱中しすぎて存在忘れてた…。
「…忘れて、全て忘れて。」
自称人気配信者天才俺ちゃんは記憶から消してくれい…。この歳で黒歴史ページ更新はしんどい…。
「無理だな。コウのそう言うトコ、俺は気に入ってるからな。で、今だいたい1タトくらいだが、隠し部屋は出来たのか?」
…うっ、どんなお気にだよ、ソレぇ。ちょっとレオさんのお気にのツボわかりませんけど?!
「…ぐぬぅ。…ええと、配置はこんなモンで。後は現物確認して、調整するかどうかかな。」
「そうか。じゃあ、その渾身の仕掛け見に行くか。ホラ、掴まれ。」
ずいっとレオさんが手を差し出して、多分抱っこの構えだ。
「…いや、この椅子押してくれればいいから。」
抱っこ拒否です!
ふふふ、何故ならこのコンソールについてる椅子はゲーミングチェア…、即ちキャスター付きだ!
つまり車椅子ですね(ニッコリ)
「…(チッ)」
…今ちっさく舌打ちしたぞ、この人。
「あ、無理に押さなくても大丈夫。これ、めっちゃ軽く進むからね。っえい!」
軽く床を蹴ってチェアでススーッと進む。俺、結構この椅子移動好きなんだよな。会社でよくやってた 笑。
「…なんだ、そのおもしろ椅子。椅子のクセに車みたいに移動できるのか。コウの世界の物はよくわからない方向に進化してるな。」
追いついたレオさんは微妙な顔で、チェアの背もたれを持ってゆっくり押してくれた。
…うん、そうだね。俺も地球の椅子の進化の方向、ちょっとおかしい方向だと思うわ。
「ははは、ホントにね。んじゃあ、まずダミーのほうから見よっか。あっちの棚側に移動お願いしまーす。」
「ん、わかった。」
カラカラとチェアを本棚側に押してもらう。
「これがダミー。今は本が入ってないけど、こちらの定番隠し扉に則り本棚。後で適当な本をいれます。で、こっちの壁に魔法錠をつける予定ね。えーと、ここはダミーなので動かす仕掛けじゃないが前提だけど…、」
ポチりとタブレットで本棚を動かす。
「念の為、騙し用に裏に何もない小部屋をご用意致しました~。」
本棚の裏はドア無しでバーンと小部屋です。いかにもここがお宝部屋ですよって言う俺のイメージで。
「…全然ダミーじゃねえ。」
ぼそっとレオさんが呆れた顔で呟いた。
「なんなら宝箱くらい置いてみる?」
空の宝箱とかね。開けた瞬間ガッカリ間違いない 笑。
「コウ、わざわざそんなの置いて何の意味があるんだ…。」
「意味は、…ないなあ。コホン。えーと、気を取り直して次行ってみよー!」
本棚を戻して、今度はアチラとタンスにチェアを押してもらう。
「ここが本命か?」
「うん、そう。コッチは空のタンスと木箱で使ってない感を出してみました。で、レオさん、そこのタンスを前に引っ張りだして。下に車輪が付いてるから、そんな力いれなくていいよ。」
「わかった。…ん? 確かに見た目より軽く動くな。これは普通にあっても便利じゃないか。おっ、なるほど後ろにドアか!」
さっきよりワクワクしながらレオさんがタンスの戸を持って引っ張り出すと、裏から上手い具合にタンスと同じ高さのドアが現れた。うんうん、箱庭の表示どおり。まさにシンデレラサイズってヤツだネ。
「たまたまタンスの後ろにドアがありましたみたいな方がいいかなって。…よっこいせ。じゃあ、このドア開けてみてよ。」
レオさんにドアを開けさせる。
開けるとさっきより広めの何もない小部屋が見えた。
「…あのグニャグニャは?」
よし! 思惑どーり!
「んっふっふっふっ、ドアの横~。」
ドヤ顔であっちあっちと死角側を指差す。
レオさんはドアから死角側を覗いた。
「おおっ、そう言う事か! 死角を利用とは…。凄いな、コウ。」
コチラに向き直ったレオさんはいい笑顔でサムズアップしてくれた。
「単純だけどいいでしょ? 下手に弄るよりはシンプルな方が目立たないと思って。自信作です(ニッコリ)」
レオさんを小部屋の中に促して、俺も内覧会だ。
うんうん、ドアの所しっかり死角が働いてる。簡単にはアストラポータルは見えない。配信してもいいレベルに仕上がってる。
「この部屋には何か置くのか?」
レオさんがポータルしかない小部屋を見まわし聞いてきた。
「敢えて何も置かないかな。俺視点の話だけど、ザッと見て何もないって思わせる方が中に侵入されるリスクが減るかなって思った。」
「なるほど。確かにそうかも知れない。下手に荷物があると、それを漁りに行こうとするアホが沸くかもしれんな…。コウは本当に凄いんだな。神に呼ばれるだけある。」
「いやぁ、そんな褒めないで~。褒めても水晶玉しか出ないからね~?」
「…それは出さなくていい。しかし、これだけの仕掛けをものの1タトで考えて作るとは…。帝都の設計士も裸足で逃げ出すな。」
レオさんがめっちゃ褒めてくるぅ!
ヤバい、デレちゃうぞ俺ぇ 笑。
「ははは、マジ? 俺、帝都の設計士になれちゃう? って言って、コレくらいしか俺に自慢出来る事ないからね。あとだいたいは神様パワーで何とかしてるから、本物の設計士さんには敵わないよ。」
悔しいが俺はただの箱庭職人だから、きちんと図面ひいてちゃんとした建物は作れない。もし本職の設計士さんに勝てるなら…、思いつきだけだなぁ。面白おかしくするタイプの。
「コウは本当に控えめだな。そう言う謙虚な所もいい。」
ポンポンと頭を撫でられる。
…ほんと、ポンポンするの好きだな! もう!
「…謙虚さは日本人の気質ですから。」
「ははは、コウの国はみんなそうなのか。なかなか平和そうだ。さて、そろそろ昼メシの時間だ。特にやる事ないなら下に降りよう。」
「あ、もうそんな時間なの。特にここでやる事はないからオッケー。」
「じゃ、片付けはメシ食ったらな。」
そう言ってレオさんは俺を横抱きにしました…。
自然すぎて止められなかったぁ!
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